インド亜大陸旅行記 -61ページ目

インド3日目 デリー→ジャイプル

『俺の生活がかかってるんだ』



今日から3泊4日で行く、ジャイプル&アグラーの始まりである。
騙されたツアーに参加するのは気分悪いが、ヘコんだままでは払ったお金がもったいないので、無理矢理楽しむことにする。

10時にメインバザールへ迎えに来てもらい、さぁ出発だと独りテンションを上げるも、なぜか車は悪徳トラベルエージェントオフィスへと向かう。
運転手のオッサンに「なぜ、目的地のジャイプルに向かわないんだ?」と尋ねると、「ボスがお前をお呼びだ。」というではないか。やはり、このツアーは他の客も乗せて進行するのか…

不機嫌な顔でオフィスへと乗り込み、「プライベートタクシーという条件で契約したはずなんだけど?」と怒った口調で聞いてみると、「どうぞ、ひとりで行ってらっしゃい。」と、ボス。
話を聞くと、ツアーの事ではなく、インド一周チケットの手配についてだった。
ツアーへ行く前に契約してくれないと困るというのだ。
しかし、頼むつもりもなかったし、ニセ政府観光局とわかった以上、契約する方がバカなので、これ以上の交渉は無意味である。

やや困惑気味の顔で「契約する気無し。」というと、ボスはウソツキだのなんだのと騒ぎ始めた。
今まで日本語で話しかけてきたのに、英語やヒンディー語でまくし立ててくる。
これは困った。
しばらく考え、「じゃぁ…ツアーから帰ってきてからでいいでしょ?」と切り出す。
我ながら思うが、悪いクセだ。問題の先送りである。
そういう訳で、こちらも「帰ってきてからじゃないと契約しない」の一点張りで、無理矢理ボスを納得させることに。
何とかピンチを乗り切り(決して、乗り切ってはいないが…)ツアーに出かけるのであった。

車に乗り込み、いざジャイプルへ出発。
一息ついてから、これから4日間を共にする運転手とお互い自己紹介する。
彼の名はハリス。32歳の既婚者で陽気なインディアンである。
ヒンディー語しか話せなかったらものすごく困ったところであったが、彼は何の支障もなく英語を話せてしまうのであった。
さすが語学の天才インド人である。
デリーからジャイプルまでは300Km、5時間ほどで着くそうで、その間にハリスからヒンディー語を学ぶことにした。
彼が一番最初に教えてくれたヒンディー語は『ジキジキ』という単語であるが、意味はあえて書かないことにする。(インドへ行った人なら必ず何度も耳にする言葉ですので…)
ただひとつ言えることは、“下ネタ”は世界共通の話題だということだ。

ヒンディー語学習はそっちのけで、お互いの国の性事情に関して深い交流を済ませ、午後6時、ジャイプル市街へ到着。
観光するには時間が無いのでホテルでゆっくりするつもりでいたが、ハリスはしきりに「買い物へ行くぞ」という。
しかし、買い物をする気が無いので断わる。
ところがハリスは「買わずに見るだけでいいのだ」と、怪しいことを言い始め、なんとか買い物に連れて行こうとする。
それでも行かないと不満な顔をして断わっていると、「行ってくれないと俺が困るんだよ…トホホ」なんてことを悲しい顔で言ってくるのである。
俺の給料はどれだけで、家族がいて、旅行者を買い物に連れて行けばコミッションが貰えて、生活費の足しになる訳で…ということを悲しい顔をしながら語り出す。
家族の事を言われると何となく断りづらくなるのが人情であり、例にも漏れず、情で動かされ、買い物ツアーを了承するのでした。(こうして日本人旅行者はどんどん騙されていくのか…?)

1軒目のお店は小さな宝石店。
店内に入ると入り口のドアを施錠され、いきなり軟禁状態に。
「うわぁ…絶対にやばい…」とドキドキしながら店の奥にある薄暗い個室へ通される。
そこでしばらく待っていると、怪しい二人(売り手と買い手)が入ってきて、テーブルの上に宝石を並べて何やら交渉を始める。
俺を半ば無視しながら、売り手は「Very cheapナノネ~!!」を連発し、買い手も「Oh,very cheapナノネ~!!」と連発する。
しばらくすると、交渉(の演技)が終了したらしく、満足げな顔をしながら買い手が宝石を抱えて部屋を出て行く。
二人のやり取りは、どう考えても怪しい度100%である。
笑いをこらえていると、「どうだ?安いの分かっただろ?お前もお土産に買うといい。」と売り手のオッサンが怪しい日本語で購入を勧めてくる。
しかし、下手な演技を見せられては、まったく買う気も起きない訳で、出されたチャイをさっさと飲み干し、店を出た。

2軒目の彫刻のお店、3軒目のカーペットのお店も冷やかしながら店内を一周しただけで終了。
日も暮れた頃、ようやくお買い物ツアーも終了し、ホテルへと向かった。

今晩宿泊する『Hotel Garden View』に着き、チェックインする。
髭オーナーは怒った顔で俺を凝視し、怒った口調で質問してくる。
「うわぁ…おっかないホテルだ。」とドキドキしていたが、なぜが聞いてくることがチェックインの手続きとは関係の無い、女性話か下ネタばかりなので、そのギャップにだんだん笑えてきた。
いったい、このオッサンは何なんだ?

そんな髭オーナーの怖い顔攻撃で小一時間ほど笑わされた後、夕食を食べることにした。
レストラン内からテーブルとイスを外へ出してもらい、野外で食べることに。
独りで食べるのも寂しいので、ドライバーであるハリスと、そのドライバー仲間と一緒に食事をすることにした。(ここは、ボッタクリエージェント御用達のホテルだった。)
今日はワイワイと楽しく食事したかったので、ビールを注文する。
味は全く期待していなかったが、『キングフィッシャー』というインドビール、なかなか美味しいのである。
日本のビールほど辛口ではなく、のどごしがスッキリしていた。これはハマリそうである。
チキンカレーも、昨日食べたターリーとは全然違い、最高に美味しく、「こんなに美味しいカレーが食えるなら毎日カレーでも生きていけるな…」なんて思ってしまった。
インドに来て初めて「インド最高!」と思った瞬間である。

この夕食の席でもやっぱり話題は下ネタで、みんなでワイワイ爆笑した。
インドではメディア(テレビ、雑誌)による性描写は禁止らしいので、相当欲求が抑圧されているのだろうか?ここぞとばかりに日本の性に関して質問してきたり、自分の凄さ(謎)を自慢したりと大騒ぎであった。

賑やかな食事も終え、部屋へと戻る。
独りになると急に疲れがどっと出てくる。
慣れない環境の中、誰を信用していいのか分からないうえに、ちょっと込み入った話になると英単語が出てこないので会話にならなかったりと、ストレスが溜まるようなことばかりである。
やっぱり英語を勉強してから来るべきだったのか?とへこみながらガイドブックを開き、翌日行く場所の予習をする。

『旅のトラブル集』というページを読んでいると、聞いたことがある話が載っていたので、よく読んでみると、自分とよく似た騙され方をした話が載っていた。
さらによく読んで見ると、今回契約した『ITB』という悪徳エージェントの話だった。
ちゃんと『地球の歩き方』を読んでいたら騙されなかったかも?と思うと、かなり悔しい。

「インドで一番悪い旅行会社」とガイドブックに書かれていたエージェント。
そんなエージェントと契約したツアーは始まったばかりである。
「これから一体どんな騙され方をするのだろう…」とドキドキしながら眠るのであった。