インド亜大陸旅行記 -3ページ目

61日目 マンドゥ→インドール

『バスでの出来事』



激しい雨音で目が覚めた。インドに来て初めての本格的な雨だ。しかも、雷鳴も聞こえる。「今日は一日部屋でゆっくり過ごすかな…」と雨戸を開けてみると、太陽の光が射しており、明るかった。狐の嫁入りとでも言うべきか、まったくもって不思議な天気である。


明るいが雨は降っており、外には出られないので音楽を聴きながら荷物を整理していると、1時間ほどで雨は止んだ。地面はぬかるんでいるが、観光には出かけられそうなので、自転車を借りて行動することに。マンドゥは中央インドで最も美しい場所として有名なだけあって、森林と遺跡が調和した情景がどこまでも広がっている。雨上がりで少し霧がかっており美しい風景がいっそう幻想的に見えた。まるで宮崎アニメに出てきそうな世界である。


すれちがう人みんなに挨拶をしながら、船の宮殿“Jahaz Mahal”へ。受付で入場料を払い、マンドゥにある遺跡のガイドブックを買おうとしたら「マンドゥ以外のガイドブックならあるよ。マンドゥのガイドブックが欲しいなら1ヶ月待って欲しいんだけど?」と言われた。当然無理なのでガイドブックは諦める。遺跡公園内に入ると、そこにいたのは掃除のオッサンと遊んでいる子ども達だけで、観光客は俺一人だった。オフシーズンの観光地とはこんなものなのか…おかげで、遊んでいる子ども達にボールペンをくれとしつこくせがまれた以外は、ゆっくりと自然に溶け込んだ遺跡を見学することができた。


ひととおり見て、また自転車に乗り、今度は村の南へ行ってみることに。マンドゥに住んでいる人はとても愛想がよく気軽に声をかけてくれるので楽しい。観光地なのだが、観光客慣れしていないというか、よそ者が来てもあくまで自分達のペースで生活しているようで、とても好感が持てる。


水たまりを避けながら自転車を南へと走らせていると、道端から何か叫んでいるインド人集団に遭遇した。「何してるの?」と聞いてみると、ジェスチャーで何か説明し始めた。山の谷などで起こる声や音の反響、“やまびこ”を楽しんでいるようである。何を言ってるのか分からないが皆絶叫し、返ってくる言葉に耳を済まして大笑いしていた。無邪気な彼らを見ていると自分の少年時代を思い出し、単純だけど面白かった。


南の遺跡もいくつか見学し、村の外れにある“Tourist Cottage”で昼食。オフシーズンのため、村で一番人気の高いこの宿も誰も泊まってないそうで閑散としていた。ジャガイモとグリンピースのカレー“アールー・マタル”を食べながら、管理人のオッサンにマディヤ・プラデーシュ州についての情報収集をした。


食事を終え、再び村の中心部へ戻る。昨日、小学生の集団に囲まれた“Jami Masjid”もガランとしており、何人かの村人が昼寝をしていた。村の散策も終わったので昼寝でもしようかと思ったが、明日の移動がハードになるので今日のうちに急遽インドールまで戻ることにした。急いで荷物をまとめ、お世話になった駄菓子屋のヨギさんに「今度は暖かい時期に来るね」と言ってお別れし、バスに乗った。


1時間半でダールに到着。「乗り換えしなければいけないな」と思っていると、そのままインドールまで行くそうなので降りず。しかし、それがマズかった。トイレに行きそびれたため、地獄の2時間が始まった。プライベートバスなので少しでも稼ごうと客をつめるだけ乗せ、いろんな場所で停まるのでちっとも進まない。「あぁ、ダールでトイレに行っておけばよかった…」と嘆いても遅し。訳の分からない場所で下車することもできず、油汗をかきながら揺られる。


トラブルの時ほどトラブルは重なる。隣に乗ってきたオッサンが近くにいた女性のお尻を移動する時に触ったらしく、女性達と口論しはじめたのである。当事者同士でただでさえエキサイトしているのに、まわりの野次馬達も論争に参加してきて収拾つかず。トイレを我慢している俺も腹立ってきたのでドサクサに紛れて「うるせーバカ!」とか罵詈雑言をオッサンに向かって浴びせたが、相手にされず。騒ぎは被害にあった女性が泣き出し、オッサンが逃げるようにバスから降りることで沈静化した。


何とか気合でバススタンドまで持ちこたえ、急いでトイレへ。これから移動するときはトイレへ行ってからにしようと肝に銘じた。


リクシャーに乗り、“Surya Hotel”へ。マネージャーを呼んでもらい、2日前に泊まった時と同じ300Rsで泊めてくれないかとお願いすると、快く了承してくれた。いい人で良かった。