私が学生の頃の映画入場料は1,000~1,200円ぐらいだったと記憶する。私の小遣いで映画館へ行けるのは3~4か月に一度。配信もレンタルビデオも無い時代に映画好きの貧乏学生はどうしていたかというと、テレビの洋画劇場で放映されるのを待つか(吹き替えの上にカット&再編集されている場合が多いが)、今回紹介するような名画座(いわゆる二番館、三番館)に通っていた。
(写真はGoggle Mapより、現在の元町商店街)
元町映劇は、神戸の元町商店街にあった名画座。高校生の頃に親友の映画ファンに教えてもらって通うようになったのだが、ロードショーより半年から1年遅れの映画が3本立てで400円、前売りで300円で上映されていた。丁度レンタルビデオに払うのと同じような値ごろ感だったので、休みの日に友人を誘い合ってここへ通ったものだった。
しかしこの映画館はあまり大きくないスクリーンに縦に細長い座席配置。満員の時は立ち見が出るという、あまり環境が良い場所ではなかったが、格安で洋画が見られるのはやっぱり貴重だった。映画のチョイスが良い上に、本格的なフィルム上映なので(当時は当たり前か)、ビデオで見るのとはやはり別物だったと考えて良いだろう。
■元町映劇で初めて見た3本立て
何をどんな組み合わせで見たかは、実はほとんど覚えていないのだが、ここで初めて見た映画はやっぱり印象が強かったのかしっかりと覚えている。以下の3本立てだった。
「恐怖に襲われた街(1975)」
アンヌ・ヴェルヌイユ監督のフランスの刑事もので、主演のジャン・ポール・ベルモンドの体を張ったアクションが見物。劇場で(字幕で)初めて見たフランス映画で、フランス語の空気感が雰囲気たっぷりだったなあ。
「ローラーボール(1975)」
ノーマン・ジュイスン監督、ジェームズ・カーン主演の未来SFスポーツ映画。選手が死ぬことも想定された未来のスポーツをめぐる陰謀もので、ローラースケートとバイクが爆走するアクションは大迫力。バッハのトッカータとフーガがテーマ曲なのは映画にぴったり。後に再映画化もされている。
「ロンゲストヤード(1974)」
ロバート・アルドリッチ監督、バート・レイノルズ主演の刑務所を舞台にしたアメフト映画。レイノルズお得意のおバカ映画のたぐいかと思いきや、中盤からシリアスになり熱く盛り上がるラストまで非の打ち所がない名作。こちらも再映画化されている。
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こうして見ると3本とも、主演俳優が物故者ってのが時代を感じるなあ。1日に3本映画を見るってのはやはり体力勝負で、朝から映画館入りして夕方暗くなってから映画館を出るというイメージ。昼食どうしてたんだろうか? 最初に元映行った日には、親に黙ってどこほっつき歩いてたんだって怒られた気がする。
■社会派映画3本立て
「大統領の陰謀(1976)」
アラン・J・パクラ監督、ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマン出演。ウォーターゲート事件を暴いた新聞記者の活動を淡々と描く。
「コンドル(1975)」
シドニー・ポラック監督。ロバート・レッドフォード主演。突然何者かに命を狙われることになったCIA局員を描いたアクション映画。マシンガンの乱射シーンが頭に残る。
「狼たちの午後(1975)」
シドニー・ルメット監督、アル・パチーノ主演。逃げ場を失って立てこもった銀行強盗が主人公の社会派映画。犯人に踊らされる大衆がコミカルに描かれる。
この3本は何とも渋いチョイス。こうして見るとやっぱこの映画館は映画好きな方が運営してたのかなあと思わされます。
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■長い映画には短い映画を組み合わせる?
「ゴッドファーザー Part2 (1974)」
「チャップリンの~」
「???」
実は「ゴッドファーザー」シリーズを初めて見たのは元町映劇。3時間半もある長大作なのだが、なんと1をすっとばしてパート2から見てしまったというのは今となれば暴挙である。友人が「~2」から見ても面白いらしいという、まことしやかな情報を持ってきたのを信じてしまったのがいけなかったのだが、この映画の時間軸ではパート1の前日談と後日談を交互に描く構成となっている。当然、真ん中を見てなければストーリーが追えるわけがなく、3時間半の苦行となってしまった。
これに組み合わせる2本目は何かというと、なんとチャップリンの短編映画。どの作品かは忘れたが、足して映画2本分の尺となる。そして3本目は何だったかというのは、完全に忘れてしまった。
後日、パート1を見直したあとのパート2はえらく面白かったことは書き添えておこう。
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■3本立てはデートには不向き?
ある日いつものように友人たちと3本立てを見ていたら、1本目の中盤から一組のカップルが入って来た。人気のある映画だったせいか、客席は満席。空いてても二人で座れる場所はなさそうだ。どうするんだろうと思ってたら、一番後ろで立ち見を始めた。しかしデートでずっと立ってるわけにもいかず、1時間も経たないうちに退場して行った。
たぶん元町商店街を歩いていて、人気映画の看板に衝動的に入って来たんだろうけど、二人ともよっぽどの映画好きでもない限りカップルで3本も見るのは大変だろうなと思った。映画にこだわりあるなら逆に途中から入場することもないと思うが。
■いつの間にか閉館...
大学生になって生活の場が半分京都に移り、元町映劇で映画を見ることもなくなった。「元映、閉館したよ」と友達から聞いたのは何年か後だったと思う。丁度、レンタルビデオが登場して、最初はレンタルLPが中心だったがそのうちビデオレンタルも登場して、新作映画が半年遅れでビデオで見られるようになった頃だった。
小さな映画館で、音響もイマイチだったかもしれないけど、やっぱフィルムで見られるのは貴重で本物の映画体験だったと思う。テレビがどんどん大型化しているけど、自宅で見るのはスクリーンが一番とプロジェクターにこだわってしまうのは、こんなところに原点があるのかもしれないなぁと思うのである。