パソコンができる人を社員に欲しいなと思った時、「PCが出来る人を募集」なんてキャッチコピーで求人広告を出す企業さんも多いことでしょう。エクセルができる人が欲しいとか、パワーポイントができる人が欲しいとか、スキルが目に見えやすいピンポイントなスキルならいいのですが、漠然とPCが出来る人が欲しいという募集だとミスマッチが起きやすい傾向にあります。
企業側と求職者で「PCできる」の観点が微妙に違うということがあり、私どもも日々悩ましいもので、これを言葉で表現するのも難しいところです。よくある例だと、PCできる人を募集して、PCに自信があるという求職者が応募してきたとします。企業で毎日のように長年エクセル・ワード・パワーポイントを駆使し、MOS資格まで取得している人材です。面接で「あなたはPCに自信がありますか?」と面接官の質問に、「10年以上職場で毎日PCにて作業していましたし資格も取得していますので自信があります」と求職者は答えました。なら大丈夫だろうという事で内定になって実際に業務に就いた初日に、「今日からこのPCを使ってください」と渡されたPCの初期設定(PC本体の認識設定やパスワード設定、メールの設定など)で丸1日かかってしまうなんていう例が多いです。この時点で既に企業側からすれば「パスワード設定もできないの?」、「PC買ったことないの?」という疑問符がついてしまいます。労働者にしてみれば「エクセルやワードは使えるが、パスワードの設定はいつも総務の人がやってくれて設定済のPCを渡されていた」、「こういう初期設定とかネット回線、ソフトのインストールは主人にやってもらっていた」と言い分はあります。
微妙に「PCができる」のニュアンスが異なっていると思いませんか。企業は「エクセルはできますか?」と尋ねたわけではなく「PCは自信がありますか?」と聞いています。求職者も「エクセルなら自信があります」ではなく「PCは日々使っていたので自信があります」と答えました。つまりPC(パソコン)スキルとはエクセルやワードなど単体のソフト群を指すのではなく、PCに関する一般人にはなんだかよくわからない幅広い範囲を包括して知識があることを言うのかもしれません。
日頃自宅でPCを日常的に使っている方にとっては簡単な作業でも、日頃PCを使用していない方には難解に思える作業もあります。毎日PCを必ず立ち上げて、PCを使って何かしらしている方なら情報も多いはずです。PCがなくては生きていけないとお感じの方は日頃PCをそれなりに使っていると推察します。スマホがあればPCは要らないという方はPC興味が低く使用頻度も少ないはずです。会社で日常的に使うPCと、プライベートで使うPCは別物です。前者は強制的に使わざるを得ない状況だから使っているだけですが、後者は使わなくても良い状況下なのに敢えて使っている、つまり趣味的な潜在要素があり性格的にPC好きが多く好奇心から吸収した独自知識は時にムダ知識であり、時にそれこそが心強い知識だと評価する企業も多いということです。
メールの初期設定などは確かにそうそう経験する機会はないでしょう。PCを買い替えたりしない限り縁がない作業の気もします。それでも、PCが好きな人は得てしてしょっちゅうPCも買い替えるだろうし、色々なメーラーを試したり、設定時にこうすると良くなるなどという噂情報を聞けば試してみたくなるだろうしと通常の人より数倍の経験値が発生するでしょう。その都度ネットで調べたり、苦戦苦闘したり、噂情報で破損したりするうちに、「あー、メール設定のときにアレよくやらかすんだよね…」、「あー、それ自分もよくある」など通好みのPCあるあるを沢山お持ちなわけで、メール設定に限らず回線周りやインストールやはたまたPC新機種の知識だったり、はてはどこの量販店でPC買うのがお得だとか、その知識網は自然とウンチク含めて幅広く拡張されていくものです(要するにオタク)。こういう何を聞いても返ってくる人が企業は欲しいという事もあるのです。一番よくあるのはPCに疎い社員が、「ネットが急に繋がらなくなったんだけど何で?」と聞けば、よくわからない方法でPCガチャガチャいじって直してしまったり、回線ケーブルの異常を発見したり、「これよくあるんですよね」とサラッと解決してしまうような人物、まさに企業にしたら「PCに自信あります」な人間とはこういう人なのです。MOSを持っているとかエクセルが得意とか言う人とは次元が違う感覚を言っているように思いませんか。これが「PCできる?」の曖昧さ、表現の仕方が難しい背景です。
PCあるあるネタをどれだけ言えるかが測定する目安だと私は思っています。要するに昔で言う(今も言うのかもしれないが)、PCオタク・PCマニアといった知識者が企業の指す「PCに自信がある人」に該当するケースも多いという事です。求職者が「求めているレベルはどんなものですか?」と尋ねても企業側が明確に回答できないから難しい問題ですよね。
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