企業に履歴書をいくら送っても年齢で落とされてしまう・・・こんな悩みを年齢が上の方からよく聞きます。特に50代~70代の方からよく聞く悩みです。働く気力もあり、やる気もあり、真面目に頑張りたい、そんな高齢の人の気持ちを企業側は汲み取っていないのだと嘆きますが、はたして本当にそうでしょうか。
企業だって戦力になるのであれば年齢は問わないはずです。ただ単に年齢が上というだけで落とされることはないはずです。あるとすれば戦力にならないと初めから先入観で思われている、やる気がないと思われている、または労働者自身に問題があるかのいずれかではないでしょうか。
先日、「年齢は本当に問いません」という宣言のもとで事務のお仕事で求人募集を出しました。年齢不問など建前なことはみなさん誰でもわかっていることですから、「本当に」年齢は問いませんと大々的に嘘ではないことを宣言したわけです。スキルがあれば50歳でも60歳でも70歳でも80歳でも90歳でも採用します(派遣先企業からそのように依頼を受けていましたので本当の意味で嘘偽りない年齢不問です)。当然ながら高齢の方には大反響でした。応募者総数では1週間で高齢者からだけでも70~80名はあったと記憶しています。さて、ここからどうやって選考したのか本邦初公開で公にしてみます。
(1)まず、登録時に指示通りに履歴書を提出しているかどうか。
(2)履歴書を提出後に担当者と電話で面接をしているかどうか。
この2点は登録時にお願いしていることですから、なされていない方はこの時点で無条件で落選というわけです。これで大体半数に絞られるわけです。次に書類選考でスキルチェックや条件照合により約30名に絞られました。
(3)この30名に次のようなメールを送りました。
・長期で勤務してほしいので過去に早期退社経歴がなく、親の介護や体調不良がないこと
・求人募集の通りの勤務時間で働けること
・すぐに勤務開始が出来ること
・エクセルワードは普通に使えること
・明日から3日間のうち、どこかで面接に来社して欲しいこと
求人募集に書いてある諸条件なので当然ご存知のはずですが、これらにご対応いただけた方に内定を出す予定でいましたが、結果はどうだったでしょうか。
結論から言うと、この30名全員みごとに辞退でした。いつものことなので想像はしていましたが、高齢者雇用はこういう難しさがあるのです。何を思って応募しているのかがそもそもわかりません。履歴書をいくら送っても年齢で落とされてしまう・・・そんなふうに企業に責任転嫁するのはとんでもない間違いだと思います。企業はこういう嫌な経験も散々してきているので高齢者雇用が嫌いになってしまったのです(多くの企業が高齢者は信用できないと思っている部分が大きいです)。要するに無意味な労力がかかるだけなので面倒なのです。上記(1)~(3)など仕事探しの段階なら応募している以上できて当たり前のことで、結果的に今回若い人が内定になったわけですが、決して年齢で合否を決めたわけではなく、能力と条件を満たす該当者が必然的に若い人しかいないということだっただけです。80名ものうち半数は書類不備(指示に従ってくれない)、残りの内10名はスキル不足、最後まで残った30名は全員辞退、これが現在の高齢者雇用の現実だと思います。本当に年齢不問で採用しますという機会を提供しているのですが、結局のところ応募者が100名だろうと200名だろうと内定者はたぶんゼロでしょう。
育児者・障害者・高齢者・学生・外国人のいわゆる就業弱者といわれる人たちの中で、高齢者雇用が最も難しいと言われる所以が今回の例からもわかっていただけたかと思います。信用しても期待は平気で裏切られる、それが高齢者雇用なのです。オフィスタでは育児者雇用がコンセプトなので高齢者雇用は専門外なのですが、スキルがありやる気があれば年齢は関係ないという想いを持っていたので何とか高齢者も支援したかったのですが、さすがにこれでは高齢者雇用はもう無理かな・・・とウンザリした今回の一件でした。
キャリアウーマンで生きてきた方や日雇い・清掃などスキル不問の業種ならともかく、現在の高齢者の意識では国内雇用はまず進まないと断言できます。その原因の一端は高齢労働者自身にも多分にあると思われます。高齢者が働くためには、雇用されるためには、高齢労働者自身が知っておくべきことを日本人材派遣協会の大滝先生が最近論説していますので、高齢求職者の方には是非お読みいただきたく思います。
(参考)『高齢労働者が就業するためにすべきこと・高齢者採用で担当者が知っておくべきこと』(発行:一般社団法人日本雇用環境整備機構、解説:大滝岳光氏)
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