『定年後の再雇用契約を巡り、賃金の75%カットを提示され退職した元従業員の女性が、勤めていた食品会社に損害賠償を求めた訴訟で、定年後の極端な労働条件悪化は、65歳までの継続雇用を義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨に反するとして、会社に慰謝料100万円を支払うよう命じた。再雇用後の賃金引き下げを不法行為とする判決が確定するのは初めてとみられる。食品会社で正社員として働いていた女性で、60歳で定年を迎えた際、パート勤務で定年前の賃金の約25%とする労働条件を提示された。フルタイム勤務を希望したため再雇用契約は合意に至らず、退職を余儀なくされた。収入が75%も減る労働条件の提示は「継続雇用制度の導入の趣旨に反し、違法性がある」と判断した。一方、従業員としての地位確認については、1、2審とも「再雇用に至っていないので契約上の権利を有していない」として退けた。高年齢者雇用安定法は労働条件の取り決めに具体的な決まりがない。不当に賃金を引き下げれば訴訟で負けるという例となり社会的影響は少なくない。』(2018.3.30 毎日新聞)
先日ニュースでこんな記事を見つけました。興味のない人にとっては気にもならないことかもしれないが、雇用・労働関係者には興味深い記事でした。雇用環境整備士資格者(特に第Ⅲ種:エイジレス雇用の専門知識者)なら再雇用制度については十分知っていることと思います。よって上記のようなことについても既に十分把握されていることと思います。
高年齢者を活用するにあたって、会社も労働者も“気持ちよく一緒に働く”ためにはというテーマは重要です。基本的には65歳以上の方は年金支給がありますので、そんなに高額な給料を得る必要はないのです(年金が減額されるだけなので意味がない)。かつ、統計によれば高年齢者が働く理由として「最低限の生活費保護」・「社会との接点」の2つが圧倒的上位を占めます。日本人の性かもしれませんが、労働意欲は年齢が高まろうと衰えることはないようです。つまり、年金が減額されない程度に会社側は支給すれば賃金面は納得できるのに、何故このような事件が起きたのか?おそらくこの会社には雇用環境整備士が設置されていなかったと思われます。設置されていれば両者の妥協点を見いだせたはずだからです。再雇用に際しては給料が減るのは当然と思っていますが、さすがに75%減額はやりすぎたのかなという感じがします。65歳以上なら問題なかったかもしれませんが、65歳未満だったため減額率が取沙汰されてしまったと思います。ただ、パートでの条件提示のようですので、会社側はこの労働者の再雇用を決して歓迎していたとは到底思えません(パート採用が条件なら時給900円はある意味妥当な気もしないでもないが…)。再雇用するかどうかは会社の意思ですから、会社が「あなたを再雇用したくない」と言えば労働者には「自分を雇え!」という権利はないのです。この辺も雇用環境整備士の方なら当然ご存知のところですが、この訴えられた会社さんは雇用の有無も明確さに欠き中途半端な感じに取れます。再雇用しないなら「雇わない!」とハッキリ言うべきだったし、雇うなら雇うで恨みつらみのない妥当な賃金計算ができたのではないかと思います。この記事を読んでいて、雇用環境整備士さえ置いていれば・・・とか、九州の会社さんらしいけど福岡でも整備士養成講習を開催したのにどうして総務人事担当の従業員を受けさせなかったのか・・・など読んでいて色々思ってしまいました。
この事件でもう1点心配なのは、高年齢者が会社を訴えたことで、今後定年後の人が雇ってもらえるのかどうかだと思います。高年齢者雇用安定法の趣旨はわかりますが、現実リアルの世界は法律通りの綺麗ごとでは行きません。再雇用してもらう立場の高年齢者が、会社に文句を言うということが会社の意識を悪い方に向けさせた可能性もあります。ましてや給料減額したら会社側が敗訴するなどという前例を作ってしまった以上、再雇用促進に歯止めを掛ける事態もありえます。この会社さんもパートでなら雇ってもいいという事なので、大方長年の恩情を利かせたのでしょうが、本音は出ていてもらいたかったのではないでしょうか、そんな風に思います。会社の可能な限りの温情が労働者の心に届かずだったことは残念なことです。しかし、高年齢者は再雇用してくれればありがたいという感謝の気持ちを忘れずに、再雇用してくれた会社に対して条件がどうのこうのと文句を言うのは時期尚早な気がします。今の日本企業はまだまだ高年齢者にそれほど理解があるわけではないからです。減給したら敗訴確定?定年後も現職時給与同額?こんなことであれば企業が高齢者を再雇用なんて絶対にするわけがない。そういう意味でこの事件に注視したわけです。
他にも先日、国会議員の先生が「採用した直後に妊娠で産休に入るなんてけしからん」といった趣旨の発言をして物議を醸していますが、これなんかも経営者であるなら雇用環境整備士(特に第Ⅰ種:育児者雇用の専門知識者)を会社内に設置しておけばこんな発言起きなかったのにと思いました。整備士の方なら「入社直後に妊娠発覚で産休」なんて事態の対処法は当然知っていますからね。法と現実は確かに違いますが、でも経営者の立場にしてみれば欠員補充で折角採用した人がすぐ産休なんてムカッとくる気持ちはまぁわかりますけどね。労働者本人も知らずに入社後に妊娠発覚なら仕方ないと思いますが、妊娠を自覚していながらそれを隠して(守秘が認められて)入社できて産休育休・補助金取得が計画的にできてしまうというのは、確かに妊婦に都合が良すぎて会社側が可哀そうな気もしますのでこの点は法律改正してもいいのではないかなと思いますが…(採用試験の段階で妊娠発覚している場合は会社側にその情報を知らせるようにするとか、単に妊婦だけを保護すればみんなが幸せになれるというわけでもないので、何か会社側も保護する必要は多少設けてあげるべきだとは思います)。
しかし、こうしてみると世の中、育児・障害・エイジレス(高齢者)の雇用についての専門知識者はそれだけ少ないのだなと最近のニュースを見ていて感じました。雇用環境整備士の持つ社会的な重要性が少しわかったような気がします。
※なお、オフィスタには雇用環境整備士は第Ⅰ種から第Ⅲ種まですべての資格者が設置されています。
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