『国内大手住宅建設会社の社員だった長男(当時35歳)が自殺したのは上司のパワーハラスメントが原因だとして、遺族が同社に慰謝料など約9,280万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁でありました。訴状などによると、長男は2010年8月以降、県内の事務所で客からの苦情対応などを担当。上司から、部下の指導が不十分との理由で「死んでしまえ」、「クビにするぞ」などと日常的に罵倒されるようになった。2011年9月に行方不明となり数日後、市内で溺死しているのが見つかった。労働基準監督署は、心理的負荷で適応障害を発症したことが自殺につながったと認定。両親は2013年に提訴し、同社側は「叱責はあったが、罵倒はしていなかった」などとして請求棄却を求めていた。同社は「円満に解決するために和解したが(和解金6,000万円)、コメントは控えたい」としている。』(2015.4.2付 読売新聞)
最近、国内で増加しているパワハラ訴訟で共通しているのが“叱責”という言葉です。被害者側が“罵倒”という言葉を使うのに対して、加害者側は“叱責”という言葉を使います。仕事でミスをすれば上司が部下を叱るという行為がパワハラかどうかの境界線が難しい。勿論暴言は論外ですが、部下の教育として叱るという行為は職場ではある意味で必要なこと。ただ、上司と部下の間に信頼関係があって成り立つものですので、上司は叱った後に「部下に心理的負荷」があるかないかを判断する必要性が求められます。逆に部下は「上司は自分の将来を憂いて叱ってくれている」という信頼に努めることが重要です。お互いにその基盤が確立されたうえでなければ“叱責=パワハラ”という構図になってしまいがち。不景気でどこの業界も熾烈な競争を強いられる中、数字を求めたり結果を求める傾向にあるのはどこの会社も同じです。ハラスメントという言葉自体新しいですが、人材を雇用して育成する手法も新たな時代に来たのかもしれません。労働基準法は労働者保護のための法律である以上企業側が労働者に歩み寄るしかないのが現状です。“口は悪いけど、悪い人じゃないんだ”はもう通用しない時代です。本稿をお読みの管理職の方は「アメとムチ」の使いどころを今一度考え直して、このような悲しい事件が起きないように努めていただきたいと思います。
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