【第6話】厳しい中に本当の学びがある

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◆セミナー開催まであと25日!!◆

【 本当に生き抜くチカラ - 第5話 - 】

週に一度のレッスンの日。
今日の講師はナレーターの大御所オオハタ先生だ。

テレビの番組やＣＭなどでひっぱりダコのナレーターで
このレッスンも２回も延期になってようやく実現した。

その語り口調は柔らかく、人柄もとても温厚である。
でも、次の瞬間そのイメージは脆くも崩れ去った。

『キミは今日、何時に起きて何時にここに入ったのかな？』

「はい、11時半に起床して、20分前にここに入りました？」

『みんなもそうなのかなぁ？キミより早かったのは誰だ？』

「私が４番目くらいで…先に来てたのはキタムラさんです…」

オオハタ先生の顔色が見る見る変わっていくのがわかった。

キタムラさんにも同じ質問をしていた。
彼女の家は養成所の近所なので、もっとギリギリに起床したらしい。

それを聞き、ひとつ大きなため息をついた後、こう切り出した。

『キミたち、プロになりたいんだよね？やる気のない奴は今から帰っていいぞ！
今13時だ！10時起きたヤツ？』

・・・・・誰も手を挙げない。

『9時より前に起きたヤツ？』

皆が顔を見合わせる中、ひとりだけマサノリが手をあげた…

『お前ひとりか？』

マサノリはアルバイトをしてから養成所に来るから朝が早かった。

『何だバイトしてたのか？このクラスはやる気ないね。
発声練習をしてから参加するようなヤツはいないのか？』

と半ばあきれ顔だった。

そんなことを言われても養成所に入るのはみんなギリギリだ。
発声練習もいつもは最初の15分程度を使ってやるようになっている。

『少なくともレッスンに参加するなら3時間前に起きて
1時間くらい発声練習してくるだろ？そんこと言われないとわからない？』

『まだ声が眠ったような状態で何を学ぶつもりなんだよ？』

そんなことは今まで誰も言わなかった。

『俺は別にプロになってくれなんてあなたたちにはいわないよ！
わざわざお金払ってまで何を習得しにくるんだ？ここは学校じゃないんだ！
プロになりたくないなら今から帰れ！』

部屋の中の空気が一気に緊張した。
今までいろいろな先生に教わってきたが、こんな先生は初めてだった。

大人になってから叱られることも滅多になかったので驚愕した。

その後もオオハタ節はとどまることがなかった。

『アクセントおかしいな！外いって100回練習してこい』
『ここ来週までに読めなかったら、次回からこなくていいぞ！』
『お客様じゃないんだぞ！やるの？やらないの？』

異様な空気のままレッスンは終了した。

オオハタ先生は、またひとつ大きく息を吐いた後、こう切り出した。

それはいつもテレビで聞くあの優しいトーンだった。

『あのさ、2時間のレッスンなんてあっという間だろ？
やっと声が出てくるようになったころにはおしまいだよ。
それじゃ大して成長できないだろ？』

『声が出る状態でスタートすれば、その分多くの教材ができるんだ

そうは思わないか？一歩でも先に進みたくないのか？』

確かに先生言うことはもっともだった。

静まり返った養成所内に、ただ、オオハタの声だけだ響いていた。

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養成所に通えばプロになれる。こう勘違いしている人が実に多い。

先生は、手品師ではない。
０のものをいきなり１００にはできないのだ。

幼いころより、学校では先生が教えてくれるもの
こいう考えが染みついている。

だから自発的な何か始める人は少ない。

確かにこの先生が言うように、早めに養成所に入ってストレッチをしてから、
外郎売などの発声練習をするような生徒はほとんど見かけない。

何かひとつでも多く学びとってやろうという姿勢は乏しい。

私はかつて、同じことである講師と口論したことがある。
『そんなに厳しいことを言っても、相手は女の子ばかりよ？
みんなついてこなくなったらどうするの？』

ついてこれなければそこまで！
この仕事はお洒落でやるような商売ではない。

そういう考えを教えないとわかならいようではこの先無理でしょ？

私も若かったので勢いに任せてこう言ってしまったが
今でもこの考えが間違っていたとは思わない。

こんな風にハッキリ言ってくれる先生がいることは幸せだ。

"養成所も商売だから"と本音を隠し甘い言葉ばかりかけていても双方成長できない。

本音で話してくれる人に、本気でぶつかることは重要である。

それがわかならなければ、本当に生き抜くことはできない。

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【第5話】無責任の大罪

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【 本当に生き抜くチカラ - 第5話 - 】

あれから２週間。
先日のお礼も兼ねてユミコからランチに誘われた。

『急な誘いでゴメンネ』

「いいの、いいの！平日に時間がとれるなんて私ぐらいでしょ？」

自虐的ではあったけどこれも自由業の特権だ。
自分がユミコのように家庭に入る姿はまだ想像もつかない。

『でも、マイコがタレントさん目指していたなんて
全然知らなかった。お父さんって厳しい人なんでしょ？』

「うん、父は銀行員だから、私には堅実な仕事について欲しいって
ずっと言われてきたよ。今でも思っているんじゃないかな？」

『でも、許しくれたんだ？』

「最近は特に何も言わなくなった。頑張れよ！ってだけ、たまに…」

『私たちの時代は本当に就職難だったから、就職できるなら
何でも良かったって正直思っていたよ。だからマイコが羨ましい』

「そんなにラクな商売ではございませんことよ！ユミコお嬢様。」(笑)

『マイコの声ってホントかわいいよね。よくアニメ声って言ってたよね。
やっぱりまわりにいる人ってみんなそんな声の人ばっかりなの？』

「そんなことないけど…」

『なかなか大変なんでしょ？』

「うん、この前は皆の前だから調子のいいこと言っちゃったから
なんだけど、仕事を獲るのは結構大変だよね」

『そうなんだ～。私には頑張ってとしか言えないけど』

「この仕事をするのが夢だったから頑張れる気がする」

『ところで、そのかわいい声を維持する方法って何か秘訣があるの？
私は学生の頃から声が低かったから教えて欲しいなぁ』

「特にこれといってやってないけどね」

『そうなの？』

「これでも一応プロですから」（笑）

やはり友人とは話が弾む。

私からすれば、結婚が決まったユミコの方が羨ましいけど
そんな彼女が私の声を羨ましいと思ってくれることは嬉しい。

日頃、しっかり発声練習もしているし、
いつまでもかわいい声でいられるのはちょっと自慢だ。

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よく耳にする『アニメ声』は、何を基準に評価しているのか？

"かわいい声だから声優になれる"というのは大きな間違いである。

まわりの無責任なススメで、簡単に声優になれると思う人が多い。

実際は厳しい日々の鍛錬が必要で、かわいい声だけではなく、
役柄に合わせて演じ分けができなければ到底つとまる職業ではない。

夢とか希望だけだはやってはいけないのだ。

また、プロだから何もしないでもいい声を維持できる
これも間違った考え方である。

プロだからこそ微妙な声の変化に敏感なのである。

声は確実に老化します。

例えば、しばらく運動をしなかった人が、急にスポーツをすると
翌日、酷い筋肉痛に悩まされるでしょう。

"昔はもっと動けたのに"と思う方も多いハズ。

これは普段、筋肉を使わなかったため老化してしまったのです。

声も同じ！

普段からきちんと鍛練していなければ、喉の筋肉も老化するのです。

ある日、突然、声が出なくなった時に自分の過信に気がついても遅いです。

プロだからこそ、日々の鍛錬が重要となる

そのことに気がついていなければ、本当に生き残ることはできない！

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【第4話】平均点で競争に勝てるのか？

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【 本当に生き抜くチカラ - 第4話 - 】

『あんまり元気ないみたいね？』

コウジは私の気持ちを察しているかのように声をかけてきた。

「顔に出てるかな？」

『かなり!!悲壮感が出てまっせアネさん』(笑)

「そうかな…ふふっふ』（笑）

マイコはここ数日の出来事をコウジに打ち明けた。
自分を見失っていることはわかっていた。

これといった解決方法が出てくるとも思っていない。
何か優しい言葉でもかけて欲しいのか自分でもよくわからなかった。

『まぁ、俺も来年養成所に残れるかまぁ心配なわけだ
7月の自主公演で70～80点のデキであればラインは超えると思うんだけど…』

「コウジは楽観的だよね」

『そらそうさ、まぁ例年10人は上のクラスに進級しているんだから
真ん中より上にいれば、まぁ安全ラインだろ？違うか？
まぁリョウスケよりはデキると思っているけどね』

コウジの言うことは間違ってはいないと思う。
私も３つの養成所を渡り歩いてきたが、いつでも平均点はどこか探していた。

とりあえず真ん中より上に位置していれば、
上級クラスへは進級はできると思っていた。

その先のいざ、所属となるとちょっとハードルが高いだけ。

去年の自分よりは実力はついてると思う。

でも、正直、今は自分がどうしたらいいのかわからなくなっている。

『ちょっちょっと、俺よりデキると言っちゃってんの誰かな？』（笑）

「ちょうどコウジが噂してたところよ!!」(笑）

『いいのかなぁ～俺、今度、ワンピークに出演決まったんだぜ！』

「うっそ～～～！あの人気アニメの？」

『この前、ガヤで参加した時、監督から"お前、元気あっていいな"
来週もおいで！役名のあるキャラで良いのがあるからだってさ』

「なんか自慢されてるみたい」

『コウジくんは、ワンピークに出るのが夢だったんだよね？
お先に失礼みたいな！』

「コウジ、さっきからムッとしてない？」

『まぁそれはあるな。俺より点数の良くないリョウスケが
アニメに出演できるとは、監督もまぁ見る目がないというか…』

「ワタシはそういう経験ないから羨ましい」

身近な友人の仕事が先に決まるのはやっぱり複雑だ。

ただ、羨ましがっていっても自分に役が来ることはない
それもわかっている。

やっぱりどこかで素直に喜べない自分がいる。

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"平均点は超えれば、上級クラスに進級できる"
養成所の生徒の間には、この間違った考えに支配されいる。

誰がこんなことを言い出したのか？

しかし、いつの時代にもこの考えがなくなることはない。

なぜ、圧倒的な差を付けて、その他の大勢から抜け出そうとはしないのか？

養成所を何箇所渡り歩こうとも、何年、キャリアがあろが

所詮、養成所のレベルでしかないのである。

プロの世界に平均点など存在しない。

100点以上のデキでなければ次の仕事には呼ばれないのだ。

誰かより実力は上だ！そういう物差しを作るべきではない。

そして誰かの仕事を羨ましく思っているうちは
自分にそのチャンスはまわってくることはない。

彼が持っていて自分がもっていないものは何か？を考えるべきだ。

プロの世界も既に飽和状態にある。

一流と呼ばれるポジションを予備軍が死に物狂いで狙っているのだ。

待っているだけで、いつか自分にそのポジションが
回ってくるほど甘い世界ではない。

必要なのは圧倒的に抜け出したチカラである。

この考えなくして、本当に生き残ることはできるのか。

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【第3話】何を思って伝えるのか？

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【 本当に生き抜くチカラ - 第3話 - 】

『マイコさん5分前なのでそろそろスタンバイお願い！』

「はい、今、行きま～す」

今日は事務所から振られたイベントの仕事に来ている。
さすがに養成所の研究生という肩書きでは大きな仕事はまわってこない。

こういった地道なアルバイトも必要なのだ。
今日の仕事は大型家電量販店の店頭でのイベント。

さすがに土曜日とあってお客さんの数はすごい。
これもプロになる為の修行のひとつと思えば辛くなくない。

『では、マイコさんお願いしますっ!!』

「はい、本日はご来店頂き誠に有難うございます。
カジワラ電子のセキュリティーソフト2010は、ここがスゴイんです!!」

「では、どこがスゴイのかこちらの画面にご注目下さい!!」

『こちらでアンケートにお答えのお客様に無料体験版プレゼント中です!!』

あぁ～何か人がしゃべってる時にあんなことされたら気が散るんだけど…

まぁ、私の話なんか誰も聞いていないみたいだし、適当にやればいいかなぁ

みんなが欲しいのは無料のＵＳＢ。
あと４回ステージをこなせばこの時間から解放されるし…

原稿見ながらしゃべっていれば良いんだから。
ふぅ～今回もなんとか無事終了ね。

『あれ？マイコさんじゃないの！』

「あっ!電風広告社のフジカワさん!!先日はお世話になりました』

『今日は何のお仕事？』

「あっ…あの…カジワラ電子さんの…」

『あぁ…OK!OK!、大きな声じゃ言いづらいよね』

「フジカワさんは？またウラシマさんですか？」

『そうそう！4階のパソコンコーナーでね。カジワラさん競合だからね。
こっちも負けないように頑張らないとね。そっちも頑張ってね』

「ありがとうございます。また何かお仕事あったらお願いします!!」

そんな短いやり取りして二人は別れた。

ウラシマさん、今週もイベントあるなら声掛けてくれれば良かったのに…
あっちの仕事の方が休憩時間も多くて楽なのになぁ～。

あんなに褒めてくれて『またお仕事お願いします』って言ってたよ。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

「お疲れ様でした。ツバサ電子さんのお仕事楽しかったです。
ぜひ、またお仕事ある時はお願いします」

『ぜひ、ぜひ、マイコさんみたいなカワイイ子が来てくれと助かるよ!!
機会があったらお仕事しようね!!今日は、ありがとう。」

今日もなんとか仕事も終わった。
コウジとの待ち合わせまで少し時間もあしお茶でもしようかな。

んん？携帯？あっ事務所からだわ。

「お疲れ様です」

『マイコちゃん？今日の現場でなんかあった？』

「いえ、今、無事終わって店を出てきたところですけど何か？」

『いや、来週も同じイベントでスケジュール抑えていたんだけど
先方さんが別の人にお願いできないかって今、電話は言ったんだよね』

「ええ!!特にアタシ失敗とかしてないですよ！マネージャー!!」

『そんなんだよね。理由は向こうも言ってくれなくて
マイコくんは褒めてたけど、別の人も見てみたいってことでさ』

担当者もあんなに『また仕事をしましょうね」と言っていたのに…
何か大きな失敗をした覚えもない、可もなく不可もなく頑張ったつもりだ。

電風広告社のフジカワさんもそうだ！

私の何がいけなかったんだろうか…

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彼女は何を思って仕事をしているのか？

"どうせ誰も聞いてくれない"と思えば、彼女の声は誰にも届かない。

与えられた原稿をただ失敗しないで読めば
ＭＣとして合格点がもらえるなんて大間違いである。

キレイな声でしゃべれば、誰かが足を止めてくれるなんてこともない。

イベントは生モノだ。

状況の変化を判断し、的確に行動できる者こそが現場で求められる人材だ。
それもわからずに彼女は仕事をしてきたのだろうか。

【また、お仕事しようね。よろしく!!】などは単なる挨拶にすぎない。

先方の次の一手を急いでいる。
ライバル会社に勝てる人材を常に探しているのだ。

何を思って仕事をしいるのか？

何を思って人にメッセージを伝えているのか？

それがわからなければ、生き残ることはできない。

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【第2話】充実感って何だ？

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【 本当に生き抜くチカラ - 第2話 - 】

今日は、週に一度のワークショップの日だ。
気の置けない仲間たちと過ごす唯一の楽しい時間である。

7月の自主公演に備え、シンイチ先生が稽古をつけにきてくれた。

シンイチ先生はいくつもの舞台を手掛けてきた若手実力派の演出家でもある。
"彼に認められれば、ひょっとして…"と思っている者も少なくないだろう。

それに7月の公演は、うちの養成所の親会社でもある
事務所のマネージャーたちが大挙して見に来る予定だ。

みんな気合いが入っている。

「見て！この青い空と白い砂浜」

チラリとシンイチ先生に目をやると
台本に目を落としながら、何やらペンを走らせている。

"どうよ！どうなの？あたしの演技…"

『マイコくん、今のくだりをもう一度やってくれないか？』

「見て！この青～い空と白～い砂浜…」"今度はどうかしら？"

シンイチ先生は大きく息をついた後、私に一言放った。

『今のところにそのニュアンスって必要あるのかな？』

一瞬、私は何を言われたのか理解できなかった。
ニュアンスはいらないって？どいうこと。

「私はこのどこまでも続く空の青さと、
足跡ひとつない白い砂浜を伝えかったんですけど…」

シンイチ先生は『そうか』とだけ答えて次のシーンへ移った。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

「シンイチ先生、お疲れ様です！」私は事務室を覗き込んで声を掛けた。

稽古中は終始厳しい顔だったシンイチ先生も
ようやくいつもの柔和な顔に戻っていた。

『マイコくんさぁ、何でこの仕事選んだの？』

いきなりの質問に面を食らってしまった。
だって仕事って言われても、何と答えて良いものやら…

頭の中で何か良い答えは無いものか？と少し間を置いて

「私は、みんなとこうしている瞬間が、
一番自分らしく輝いていられると思ったから・・・ですかね？」

『自分らしくって、どんなこと？』

「う～ん、上手く言葉にはできませんけど、終わった後の充実感かと…
やっぱこの瞬間でなければ感じることができないと思うんです」

『そっかぁ・・・』とまた一言だけ答えて会話はまた途切れた。

何か釈然としない気分だった。

『マイコ！リョウスケたちと飯食いに行くんだけどオマエどうする？』
すでに着替えを済ませたコウジが大きな声で呼んでいる。

「了解！ちょっと待ってて！シンイチ先生、今日は有難うございました」

『オイッ！お疲れさん!!』シンイチ先生は何もなかったかのように笑顔で返した。

私は、慌てて荷物をまとめて養成所を飛び出した。

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集団で取り組む作品は自分だけのモノではない。

彼女はまだこの世界に身を置くことを"仕事"として自覚していない。
何かふわふわとした時間をいたずらに過ごしているのだ。

自分らしく輝いていられる？

では、他の仕事では自分らしく輝くことはできないのか？
彼女がこの仕事を選んだのは、そんな漠然としたことなのか？

「充実感が違う!!」

見る側の人間は、誰も彼女の充実感など求めていない。
面白いか、面白くないか、それだけである。

そんな感情で何かをすり替えてしまっている。

芸能の世界の仕事は、オシャレでもファッションでもない！

与えられた課題に対してどう応えることができるか？である。

その引き出しをどれだけ多く持ち合わせているか？である。

これもセンスだ。

残念ながら"本人の気持ちがいいか？悪いか？"なんて
誰も求めてはいないのである。

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