革新的衛星技術実証3号機/イプシロンロケット6号機フライトシーケンスCG

 

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2022年10月12日9時50分43秒(日本標準時)に、内之浦宇宙空間観測所から革新的衛星技術実証3号機、QPS-SAR-3、QPS-SAR-4を搭載したイプシロンロケット6号機を打ち上げましたが、2/3段分離可否判断の時点で目標姿勢からずれ、地球を周回する軌道に投入できないと判断し、9時57分11秒にロケットに指令破壊信号を送出し、打上げに失敗しました。

 


 

尚、記者会見で2段目の運動エネルギーを持ったまま破壊されたので3軸姿勢制御の不具合かスピン制御不良がが考えられる。記者会見の感じから1段目と2段目の燃焼までは正常だったように感じる。

 

ではイプシロンの1段目2段目及び分離までの姿勢制御は?

第 1 段および第 2 段のロケットモータの制御アクチュエータは,可動ノズル推力変更装置(MNTVC:Mobile Nozzle Thrust Vector Control)によるピッチ/ヨー制御(比例制御)とサイドジェット装置によるロール制御(燃焼終了後は3 軸制御に切り換え/いずれも On-Off 制御)の組み合わせである.可動ノズルはいずれも電動モータであるが,パワーソースについては,第 1 段は熱電池,第 2 段はリチウム電池を用いている.一方,サイドジェットについては,第 1 段ステージ用エンジンは固体燃料を用いた方式(SMSJ: Solid Motor Side Jet),第 2 段はヒドラジンを燃料とする液体エンジン(RCS: Reaction Control System)である.

 

★第1段ロケットモータとTVC

 

モータ:NⅡロケットのSRB-Aを流用し電動アクチュエータの速度向上品。

推進薬:ポリブタジエン系コンポジット

姿勢制御:TVC ( 舵角 5° )+SMSJ

全備重量:約 75 t

 

★第2段ロケットモータとTVC

 

モータ:M-35

推進薬:ポリブタジエン系コンポジット

姿勢制御:TVC( M34Cの場合 舵角1° M-35は舵角が広がっている可能性あり)+RCS

全備重量:約 17t

 

★固体モータサイドジェット(SMSJ)

 

SMSJは小さな固体モータで、第1段ロケットの後部の外壁上の対称位置に2基ついていて発射10秒前に点火された後、1段分離まで燃焼し続けます。

SMSJの役目は、ロケットの飛翔時に、燃焼ガスを吹き出しながら、機体中心軸回りの回転方向の姿勢制御を行い1段目が燃焼終了した後も機体の三軸姿勢制御(横揺れ、縦揺れ、軸回りの回転の3つ)を行ないます。噴射時間は171秒有る為第一段が切り離されるまで充分な制御が可能です。

 

★ガスジェット装置(RCS)

ガスジェット装置は2段機体に搭載されており、装置のタンクに充填されているヒドラジンを燃焼・噴出させることで、2段飛行中(1段分離後から2段分離まで)のロケットの姿勢を制御します。
RCSは、3段目モータがスピン制御の為2段燃焼後からスピン開始までの間液精密に方向制御を行う重要な装置です。

 

★スピンモータ(SPM)

イプシロンは,高性能(打ち上げ能力)と低コストの両立を図るために第 3 段ステージをスピン安定方式としたが,これが軌道誤差の拡大につながることには注意が必要である.

 

このため,イプシロンでは液体燃料エンジンを搭載した PBS をオプション装備し,軌道投入誤差を吸収する仕組みを構築している.(以上イプシロンロケットの誘導制御より抜粋)

 

★誘導制御系

誘導制御系機器は、OBC(誘導制御計算機)、HIU2(第2段ハードウェァインタフェース装置)から成る誘導制御計算機能及びデータ処理機能を担う機器群と、機体の加速度、角速度を検出する機能を担うIMU(慣性センサユニット)、LAMU(横加速度計測装置)、RG−PKG(レートジャイロパッケージ)といったセンサ機器群に大別される。

制御系ブロック図


ブロック図によると2/3段切り離しまでの制御は2段目搭載のHIU2が行っている。

 

 IMUは、リングレーザジャイロ方式を採用した高精度の航法センサであり、HⅡ- Aで開発された既存機器をベースに、イプシロン固有のスピン安定飛行に対応するための角速度計測範囲の変更等を行っている。

 LAMUとPG-PKGもHⅡ- Aで開発された既存機器に対し,加速度計測範囲と熱計測制度の変更等を行っている。(但しこの装置は1段目に搭載されているため今回の故障には関係ないと思われる。)

 

 

【考察】

1. 1段目は、正常に動作している。

2. 2段目も、正常に動作したがスピン前の方向(RCSによる制御)が狂っていた可能性がある。
  あるいはスピン(SPM)が正常に掛からなかった可能性が高い。

3. RCSは、異常信号を出していないので正常に終了していると思われるが、RCSが使用しているセンサ
  が狂っていた場合は別である。

4. スピン(SPM)不良については、点火信号だけなのでHIU2のI/Oが破壊され信号が来なかったか?
  疑似断線していた為地上でのチェックはすりヌケ打ち上げ振動で断線した可能性がある。

5. まさかとは思うが、HⅡ- A流用機器をイプシロン用に修正していなかった?

6. 後はポカでしょうか? 2重チェックしているだろうし・・・・。 

7. 強化型最終品なので電子部品の劣化?(ユニットは1回ごとに作っているとは思えないので?)

 

10/19追記

原因は、RCSで制御系かアクチュエータ系か解らないようです。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日、姿勢の制御に用いるガスジェット装置が機能しなかったことが原因だったとの事。

 JAXAの説明資料によると、イプシロンが備える3段のエンジンのうち、2段目で飛行している際の姿勢を制御する装置が正常に作動しなかった。機体は失われたままで詳しく調べることができていない。このため、装置が作動しなかった原因は特定されていないが「配管が詰まった」「弁が正常に開かなかった」などが考えられるとしている。

 

調べられないとか? どうなんでしょう?

計画では、この時間帯高度も慣性速度も変化しない領域です。

分離直前で異常が解ったと言っていますので機体制御はTVCで概ねできていたと思われます。

もう少し姿勢制御を試しチャレンジして駄目ならノズルを1つづつ開いて故障原因を究明してから爆破してもよかったのでは?

ハヤブサのしぶとさとは同じ組織なのに随分違います。 パニクッタのでしょうか? 

 

以上です。

 

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