娼婦と荷風と中国と
中共の理論誌「求是」傘下の雑誌「小康」が6月から7月にかけて、ネットで3376人を対象に実施した「中国人の信用度」調査の結果がちょっとした騒ぎを呼んでいる。「性工作者」が信用度ランキングでなんと3位(8・9%)に入ったからだ。
ちなみに「信用できる人」の1位は農民(17・3%)、2位は宗教職業者(9・7%)。「性工作者」は4位の軍人、5位の学生を抑えての堂々3位に入賞した。06年から08年までの同じ調査では、農民、軍人、労働者、科学者、農民工が順位を入れ替えながらトップ5を独占していた。
この調査は、中国社会で起きている大きな変化を象徴していると思う。それは売春の普遍化だ。売春街である「紅灯区」は今やありとあらゆる中国の都市に遍在しているが、調査で「性工作者」が上位に入るということは、老百姓が彼女(彼?)らと接する機会がいかに増えているかを反映している。
中国(だけではないだろうが)の「性工作者」は下層社会である農村出身者が多く、それゆえもともとの人間的気質は素朴かつ純朴な人が多かろう、と想像できる。かつて永井荷風は戦前の娼婦に人間の美しさと人生の真実を見出したが、中国においてもそれは変わらないということなのだろう。BBC中文網によれば、チャイナ・デイリーは「驚くべき、そして厄介な結果」と社説で書いているらしいが、別に驚くことも厄介に思う必要もない。
ただ今回の調査には注意すべき点もある。前年のデータに比べて数字が不自然に激減している項目が多いのだ。政府に対する信用は08年の62・2%から0・7%に、ランキングトップの農民の信用度も58・4%から17・3%へと減っている。06年から08年はそれほどデータが動いていないので、こんなに不自然に数字が減ると、調査そのものの信用性が疑われる。
それはそうと、日本でいま同じ調査をしたら「風俗嬢」はいったい何位に入るだろう?
ちなみに「信用できる人」の1位は農民(17・3%)、2位は宗教職業者(9・7%)。「性工作者」は4位の軍人、5位の学生を抑えての堂々3位に入賞した。06年から08年までの同じ調査では、農民、軍人、労働者、科学者、農民工が順位を入れ替えながらトップ5を独占していた。
この調査は、中国社会で起きている大きな変化を象徴していると思う。それは売春の普遍化だ。売春街である「紅灯区」は今やありとあらゆる中国の都市に遍在しているが、調査で「性工作者」が上位に入るということは、老百姓が彼女(彼?)らと接する機会がいかに増えているかを反映している。
中国(だけではないだろうが)の「性工作者」は下層社会である農村出身者が多く、それゆえもともとの人間的気質は素朴かつ純朴な人が多かろう、と想像できる。かつて永井荷風は戦前の娼婦に人間の美しさと人生の真実を見出したが、中国においてもそれは変わらないということなのだろう。BBC中文網によれば、チャイナ・デイリーは「驚くべき、そして厄介な結果」と社説で書いているらしいが、別に驚くことも厄介に思う必要もない。
ただ今回の調査には注意すべき点もある。前年のデータに比べて数字が不自然に激減している項目が多いのだ。政府に対する信用は08年の62・2%から0・7%に、ランキングトップの農民の信用度も58・4%から17・3%へと減っている。06年から08年はそれほどデータが動いていないので、こんなに不自然に数字が減ると、調査そのものの信用性が疑われる。
それはそうと、日本でいま同じ調査をしたら「風俗嬢」はいったい何位に入るだろう?
国慶節パレードよ、さらば
北京の8月というと、最高気温が40度に達する灼熱地獄というイメージがあるが、実はそれほど暑くはない。平均の最高気温はおおむね30度前後で、東京とそう変わらない。
その北京で学生の皆さんが連日、10月1日の国慶節パレードの練習に励んでいる。博訊網は小学生の練習の様子を動画で紹介。「サウナ日」の炎天下、厳しい行進訓練に参加する10歳前後のわが子を見て親たちが心を痛めている――と伝えている。
日ごろ甘やかされ放題の一人っ子たちが、少しぐらい世の中のキビシサを学ぶのは決して悪くないと思う。夏休みを返上させられて、旅行や帰省、アルバイトの計画が丸つぶれになった大学生にはやや同情するが。
今年の建国60周年パレードは、中国がかつて体験したことのない豊かさ中で行われる。今年の3月、中国の1人当たりGDPは3000ドルを突破した。10年前の建国50周年のときには865ドル、さらにその10年間前の40周年は403ドルだったから、この20年で中国人のフトコロは2次曲線を描いて豊かになってきた。
ロシアは昨年、独ソ戦勝利記念日の5月9日に17年ぶりとなる軍事パレードを実施したし、フランスも毎年7月14日のパリ祭にシャンゼリゼ通りで軍事パレードを行っている(ついでながら、軍事パレードに「パリ祭」という日本語訳はいかがなものかと思う)。ただ、民間人を動員してド派手なマスゲームやパレードをやるのはいまや中国と北朝鮮ぐらいだろう。
しかし、まったく娯楽のない北朝鮮人民と、ネトゲに忙殺されている中国人大学生ではパレード参加へのモチベーションはおのずと異なる。北京の小学生だって今や習い事で忙しい。海外メディアに文句たらたらな記事が載るのは、北京市民の間で確実に不満が高まっている証拠だ。
周辺国を威圧する軍事パレードはやめるべきだ、という意見が今年の春ごろ中国国外の学者から出ていたが、軍事力の透明化という意味でむしろ「最新装備の陳列」はすべきである。ここでしか得られない情報も多く、海外の軍事諜報機関は鵜の目鷹の目のはずだ。
ただ、民間人を動員したマスゲームが2019年でも可能かと聞かれれば、疑問符をつけざるを得ない。家庭レベルの資本の蓄積が進んで権利意識がさらに高まれば、それこそあの手この手でサボる人間が続出するだろうし、無理すれば共産党の権威が失墜する。そもそも、なぜ北京市民だけがかかる不都合を甘受しなければならないのかという合理的な説明はだれにもできない。
今回のパレードは、中国で建国以来続いてきた「国家≧個人」という力関係が、「国家<個人」へと移行するメルクマールなのかもしれない。
その北京で学生の皆さんが連日、10月1日の国慶節パレードの練習に励んでいる。博訊網は小学生の練習の様子を動画で紹介。「サウナ日」の炎天下、厳しい行進訓練に参加する10歳前後のわが子を見て親たちが心を痛めている――と伝えている。
日ごろ甘やかされ放題の一人っ子たちが、少しぐらい世の中のキビシサを学ぶのは決して悪くないと思う。夏休みを返上させられて、旅行や帰省、アルバイトの計画が丸つぶれになった大学生にはやや同情するが。
今年の建国60周年パレードは、中国がかつて体験したことのない豊かさ中で行われる。今年の3月、中国の1人当たりGDPは3000ドルを突破した。10年前の建国50周年のときには865ドル、さらにその10年間前の40周年は403ドルだったから、この20年で中国人のフトコロは2次曲線を描いて豊かになってきた。
ロシアは昨年、独ソ戦勝利記念日の5月9日に17年ぶりとなる軍事パレードを実施したし、フランスも毎年7月14日のパリ祭にシャンゼリゼ通りで軍事パレードを行っている(ついでながら、軍事パレードに「パリ祭」という日本語訳はいかがなものかと思う)。ただ、民間人を動員してド派手なマスゲームやパレードをやるのはいまや中国と北朝鮮ぐらいだろう。
しかし、まったく娯楽のない北朝鮮人民と、ネトゲに忙殺されている中国人大学生ではパレード参加へのモチベーションはおのずと異なる。北京の小学生だって今や習い事で忙しい。海外メディアに文句たらたらな記事が載るのは、北京市民の間で確実に不満が高まっている証拠だ。
周辺国を威圧する軍事パレードはやめるべきだ、という意見が今年の春ごろ中国国外の学者から出ていたが、軍事力の透明化という意味でむしろ「最新装備の陳列」はすべきである。ここでしか得られない情報も多く、海外の軍事諜報機関は鵜の目鷹の目のはずだ。
ただ、民間人を動員したマスゲームが2019年でも可能かと聞かれれば、疑問符をつけざるを得ない。家庭レベルの資本の蓄積が進んで権利意識がさらに高まれば、それこそあの手この手でサボる人間が続出するだろうし、無理すれば共産党の権威が失墜する。そもそも、なぜ北京市民だけがかかる不都合を甘受しなければならないのかという合理的な説明はだれにもできない。
今回のパレードは、中国で建国以来続いてきた「国家≧個人」という力関係が、「国家<個人」へと移行するメルクマールなのかもしれない。
ウイグル騒乱:王楽泉更迭情報の真偽
博訊網が7月31日、新彊ウイグル自治区党書記である王楽泉の失脚情報を流した。記事によると、「1週間前の中共のハイレベル会議で王楽泉が強く批判された」のだという。その根拠は「7月5日の事件のさなか、現地の武警と公安に対する命令が遅れたため、現場でウイグル人が漢族を殺害するのを目撃しながら(武警と公安が)何もできなかった」「その後の(漢族の)報復活動の過程で、新彊の武警と公安は漢族がウイグル人を殺す活動をそそのかし、またその一部に参加した」という武警・国家安全部情報(なんだそりゃ)。この秘密裏に報告された情報に対して中央は激怒し、王楽泉が事件拡大の責任を負うべきとの認識にいたったということらしい。
また記事は、「3日前に王楽泉のあらゆる講話の回収と、街角の壁に書かれた『語録』を消すことを命じる文書が新彊のトップレベルから発せられた」とも伝えている。
さて、その真偽やいかに。新華網の王楽泉活動報告ページを確認してみると、確かに今回の騒乱関係の記事が圧倒的に減っている。ただ、完全に削除されたというわけではなく、あの事件直後のテレビ講話はまだ残っている。この微妙な状態をどう評価すべきか。
最近、中文ネットニュース界では飛ぶ鳥を落とす勢いの博訊網だが、その情報の確度というのはあまり厳密に精査されていないのではないか、とも思う。確かに、現場からのタレ込みに基づくとみられる暴動・デモ情報は速くて正確だが、それを中共トップ人事に当てはめることは必ずしもできないはずだ。賀国強系統にニュースソースをもつとササヤかれ、時折新聞でも引用される多維網とは、特に中共トップ情報に関してまだ差があるように感じられるのだが、どうだろう。
選挙の事前予測と同じで、中共の人事情報もコトが決まるまではあれこれ話題になるのだが、いったん決まってしまうとみんなその予想記事のことは忘れてしまう。だから、記者側もついつい「書き得」とばかりに十分精査しないまま記事にしてしまう。もちろん「火のないところには何とやら」だが、過去の中南海情報を鑑みて、王楽泉が失脚して得する側が流した世論形成目的のダミー情報の可能性もあると思う。
とりあえず、記事から3日経ったが動きはないようだ。もちろん、人事がある可能性が高いのは9月の4中全会である。あと1カ月強、まだ綱引きがある気がする。
また記事は、「3日前に王楽泉のあらゆる講話の回収と、街角の壁に書かれた『語録』を消すことを命じる文書が新彊のトップレベルから発せられた」とも伝えている。
さて、その真偽やいかに。新華網の王楽泉活動報告ページを確認してみると、確かに今回の騒乱関係の記事が圧倒的に減っている。ただ、完全に削除されたというわけではなく、あの事件直後のテレビ講話はまだ残っている。この微妙な状態をどう評価すべきか。
最近、中文ネットニュース界では飛ぶ鳥を落とす勢いの博訊網だが、その情報の確度というのはあまり厳密に精査されていないのではないか、とも思う。確かに、現場からのタレ込みに基づくとみられる暴動・デモ情報は速くて正確だが、それを中共トップ人事に当てはめることは必ずしもできないはずだ。賀国強系統にニュースソースをもつとササヤかれ、時折新聞でも引用される多維網とは、特に中共トップ情報に関してまだ差があるように感じられるのだが、どうだろう。
選挙の事前予測と同じで、中共の人事情報もコトが決まるまではあれこれ話題になるのだが、いったん決まってしまうとみんなその予想記事のことは忘れてしまう。だから、記者側もついつい「書き得」とばかりに十分精査しないまま記事にしてしまう。もちろん「火のないところには何とやら」だが、過去の中南海情報を鑑みて、王楽泉が失脚して得する側が流した世論形成目的のダミー情報の可能性もあると思う。
とりあえず、記事から3日経ったが動きはないようだ。もちろん、人事がある可能性が高いのは9月の4中全会である。あと1カ月強、まだ綱引きがある気がする。