『まんが日本昔ばなし劇場』
お陰様で、全公演終演することができました。応援してくださったみなさま、関わってくださったすべての方々のおかげです。駆け抜けた!という気持ちではありますが、生涯残る思い出になるだろうなとも思うのでした。
お話をいただいた時、とにかくなにがなんでもやりたい!とお返事したのがついこの前のように思い出されます。1400本の中から数本を選ぶということになって、それはそれは悩みました。なにせ、そのすべてが日本の各地方で大昔から語り継がれてきたものたち。どれを見ても面白く魅力的で、舞台化したときのことを想像するだけで心が踊ってしまう。悩みすぎた結果、最終的には、「どれを選んでも正解だよね」と腹を決めて、今回は4編を選んだのでした。うまくいけば続編も続けられるだろうから、とりあえず、一旦の4本。残りはまた今度、なんて自分を焚き付けたりしながら。
それにしても夢のような公演でした。稽古から打ち合わせから、すべての毎日が本当に幸せで楽しみで仕方がなかったのでした。
僕は、「物語」は、物語るほうにも、物語られる方にも大切な日常があって初めて意味のあるものになると考えています。実際、僕らには僕らで、物語を準備するというとても大切な物語があったのでした。そして本番日。あの空間に何百人が集まって共に笑って踊って歌ったというあの時間もまた、僕らにとって大切な物語。さらには、劇場をでた後に、あなたが、ぼくたちがどんな毎日に帰っていくかというのも、大切な物語に違いないのです。
僕はかねてから、物語は世界を変えると信じて活動しています。「世界」というものは人間の集合体のことであり、では人間の本質はというと、肉体や経歴なんかではなく、「心」だと思っています。僕らは、心でできている。そしてその心を構成するものは、生きていくうえで触れてきた多くの物語だと思うのです。
同じ物語を信じ愛した者同士は憎み合えるわけがない、とも僕は思うのです。おそらく古代日本、いや、日本に限らずですが、僕ら人類は、火を囲んだりしながら物語を共有しあい、村や国を作ってきた。このSNS時代、僕らは改めて「物語り」をする場所を創って、つながっていくべきなんじゃないかと思います。そういう意味で、僕は演劇という媒体に命をかけて生きてきたし、これからもそのつもりです。だって、劇場内に渦巻くあの時間ほどに豊かな時間を、僕は知らないから。
どの物語も、作者不明。だけれど、ずっと語られ続けてきた物語。僕はそれぞれの物語が生まれた瞬間のことを想像します。ある日、ある晩にたまたま語られたその話がまた別の場所で、別の人の口から語られる、それを繰り返していくうちに、すこしずつ変化し、そして、今に至る。それを受け取り、また新たに自分たちが語り部として次のひとたちにつなぐ役割をさせていただけたことの光栄さに、大きな感動を抱いています。
この世界の殆どのものは、残そうとわざわざ努力しない限り、消えてしまうものばかり。とくに、物語なんて本来はとてつもなく脆弱なものです。だけれど、残り続けてきた。それは、そうであるべきだったからなのでしょう。これからも、残し続けていきたいと思うのです。
すべての昔話は、哀しみや苦しみを乗り越えるため、そして、喜びを忘れないために生まれたように思います。この、御守りというか、祈りは、繰り返し語られることでより強い力を持つようになり、世界をすこしずつ美しいものにしていくのだと思っています。
ほんとうにたくさんの方々の愛情と熱意で成功した公演でした。製作委員会、主催者の方々、スポンサーのみなさま、クリエイティヴに共に遊び続けてくれた多くのスタッフ。感謝がつきません。
そしてキャストたち。村方乃々佳ちゃん、坂本澪香さん、おぼんろのメンバー、オーディションで選ばれた8人の子役たち。全員の信念と感性が奇跡的に絡まりあって作品が完成しました。
(この状態で一緒にすんでたら暖房代やばいよね、とはなしたやつ)
藤原紀香さん、お仕事をするのは初めてでしたが、作品についてたくさん話し合い、この公演の魂を一緒に掘り当てることができたと思っています。現場を愛で包み、光のエネルギーを無尽蔵に注ぎ続けてくださった。太陽みたいな紀香さんに雪女をやっていただくとどうなるのかと思ってワクワクしていましたが、哀しみと、その裏側にある優しい愛の両方を見事に表現してくださり、素晴らしい演目になりました。劇団員たちともう意気投合してくださり、舞台裏で本番中一緒にケラケラ笑えたのは幸せな時間でした。こんなにあったかい雪女は、なかなか出会えない。
そして村方乃々佳ちゃん。初対面での会話は「私は、頭を坊主にしなくちゃいけないの?」という不安そうな質問でしたが、あの日はもう懐かしく。いまでは、大切な演劇仲間としてこれからずっと付き合っていきたい思いです。僕らはのんちゃんという奇跡を目撃しながら、いろいろなことに気付いた。千穐楽が終わったあと、抱きついてきたと思ったら「離れない!絶対に離れないんだから!」と言いながら大泣きし始めた、のんちゃん。つられて泣き出す座組一同。のんちゃんもまた、この公演の重大な原動力だったのでした。再会を約束して別れたけれど、ほんとうに、早く再会したい。
坂本澪香との出会いもありがたかった。作品のためならなんでもやるという意思をずっと持っていてくれて、最後の方は劇団員と同じ扱いでした。一緒に創作をするうえで重要なパートナーでしたし、素晴らしい才能だと思ったのでした。そして8人の子役オーディションメンバー。井上花恋 金井 晶 小紫すず華 柴田華怜、高橋杏奈、中井理人、深谷柊太、松井茉里亞。さまざまなバランスや役との兼ね合いでの決定でしたが、全員が、「この子がいなかったら、作品がこうはならなかった」と思える重要なひとりでした。ほんとうに、長く友人でい続けたい。
そして手前味噌ですが、おぼんろメンバー。もう、ずっと、ずっと一緒にやってきた仲間です。でも案外に、こうやって外部で共に創作をできることは初めてで。僕は、仲間の魅力を世に知ってもらいたいという思いと、そのことへの緊張をどちらも持ちながらの現場入りでしたが、我が仲間たちは瞬く間に現場の方々の心を掴み、そして、十分すぎるほどに作品に貢献してくれたのでした。仲間を誇らしく思えるほど幸せな瞬間というのはありません。舞台袖で仲間たちとアイコンタクトをしながらなぜか涙ぐみ、「ああ、この幸せな時間を自分は走馬灯でみるのだろう」なんて思ったりもしたのでした。どうか、以後お見知りおき痛だたければ幸いです。
そして観客の皆さん。「演劇創りの最後のピースは観客だ」というのは僕らの常套句ではありますが、今回はまさにそれ。笑いや悲鳴、歌声、そして共に踊ったりというあの時間は、何にも代えがたい尊いものでした。
僕らは、こういった時間をこれからも続けていきたいなと心から思いますし、どうか、その場にみなさんもどうか参加し続けてくださればこんなにうれしいことはありません。『漫画日本昔ばなし劇場』が、これから、多くの人の集える場所へと育っていきますようにと祈ります。
ああ、だめです。。。。「公演ありがとうございました!」とだけ書きたかったつもりが、いくらでもとりとめない言葉が出てきてしまいます。
またお会いできますように。
本当に、ありがとうございました!


































