塗り潰される明日 | 珈琲にハチミツ

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「もう新日本の幻影を追うのはゴメンだ!」
試合後苦しい胸の内を吐露した橋本。旗揚げ3周年。記念興行のメインを飾るどころかお粗末な試合の穴埋めをするかのような講釈じみたマイクが続く。

…ハッスル1でリング復帰を果たした橋本は再びWJとの対抗戦へ身を投じた。長州の負傷によってうやむやになっていた因縁の対決を実現させるべくである。と同時に実しやかに選手の離脱の相次ぐWJがすでに活動休止しているのでは?との噂が囁かれていた。(事実長州はWJでなくリキプロ所属としてゼロワンへ参戦している。)
実はこの時点でゼロワンの息の根も止まっていた。

「…突然のことですよ。国税の人間がゼロワンの事務所にやってきて、差し押さえの紙をバンバン貼っていったんですよ。源泉税とか払ってなくて5000万円くらいあったのかなあ。」
中村カントク・談

これは結果論になってしまうが、橋本、長州、武藤の離脱によってもたらされた新日本帝国の分裂は、結果的にプロレス再興どころか混乱の時代の延長であった。同時期に視聴率不振にあえぐ新日本のワールドプロレスリングは放送時間の短縮が発表され、もはや地盤沈下は誰にも止めることができなかった。

そして迎えた2.29。ゼロワンはもはや記念興行どころではない状態なのだが。そこへハッスルである。前回の両国に続きこの日のマッチメイクにもハッスルへの伏線が折り込まれていた。

小川直也、ザ ・プレデター組対ジャイアント・シルバ、ダスティ・ローデスJr.組
ハッスル査定試合と銘打たれたタッグマッチに勝利した小川の挑発をうけてリングへ上がった高田。次回ハッスル2の予告編が繰り広げされるが明らかに場違い。噛み合わないハッスルの展開と、この次に行われた低調なセミファイナル(武藤敬司対大森隆男の突然組まれたシングルマッチ)を消化した時点で両国国技館の熱は冷め切ってしまっていた。

そしてメインを迎え、これまで新日本の黄金カードだった両雄と同じ組合せとは思えないほどに痛盛り上がらない入場を経て試合が始まった。いや始まってしまったと言い変えてもいいかもしれない。

試合序盤、気迫漲るせめぎ合いは流石だった。が徐々に失速していく両雄。
特に橋本、雪崩式ブレーンバスター2連発を浴びたあたりからガクっと動きが落ちていく。
それは切ない光景だった。リキラリアットを正面から受け切ることができずに半身の状態で衝撃を受け流す橋本の姿に悲しくなってきた。もはや試合を続けることすらままならない状態なのでは?と不安がよぎったその時、唐突に前蹴りからDDTで長州をマットにめり込ませると、絞り出したような叫びをあげながら放ったミドルキックでピン。「チョオシュウゥゥーッ‼︎」
この尻切れトンボの結末に、少しばかりのどよめきと、失望が色濃く残るリング上。再び右肩をはずしてしまったのか。なかなか立ち上がれない橋本を背にスタスタと何事もなかったかのようにリングを後にする長州。もちろん次へ何のアクションもなく、である。

「旗揚げして3周年、俺たちはまだこんなことしかできてません!」

開き直った橋本はマイクで不甲斐ないメインを詫びた。そこに対して全くもって納得のいかない観客席からは温かい声援等は一切起こらず、ブーイング…ではなく橋本を罵倒する声が飛び交う。

「…どんどん言ってくれ。全部、呑みます。みなさんに叱咤されようが、嫌われようが、身体が動く限りリングに上がります。」

改めて所信表明を告げたのか。その後小川をリングへ呼び寄せた橋本は場を強引に占めるかのようにOHホー!から3.2.1.ハッスルを披露。爆勝宣言が流れるが…

「なんか、忘れてない?」

ここはゼロワンのリングなんだ。まだ終わっていないんや!橋本はまるで自身に言い聞かせるように「ゼロワンコールやらしてください!」と高らかに宣言するとたくさんの声援が飛ぶ。気をよくした橋本は「女性の声も聞きたいなァ!」

このあたりでようやくリングと観客席が一つになったような気がする。「スリー、ツー、ワン!ゼロワン‼︎」どうにかしてこの場をおさめた橋本だったが、改めてゼロワンがガタガタであることは疑いようのない事実である。ここからどう団体を立て直すのか、それともハッスルを軌道に乗せることがゼロワンの起爆剤になり得るのだろうか。

橋本は、止まれない。


続く