星がきれいですね。 その3 | 珈琲にハチミツ

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橋本がやってしまった。

根絶やし、全面抗争という題目のメインイベントで本来魅せなければいけない闘いは「死闘」なのだが、橋本がこの日両国に詰めかけた大観衆に披露したのは「私闘」だった。

試合序盤、ゼロワンとWJ両軍の若手と中堅どころは本当に気迫漲る熱い攻防を繰り広げてくれた。しかし彼らの生き残りを賭けたせめぎ合いは、両軍大将同士の対峙をもって一瞬でどこかへ飛んでいってしまった。

「来いチンターッ‼︎」

…橋本は長州の懐で育てられてきた。ヤングライオン時代、控え室で制裁をうけてからふたりの関係は大きく動いていった。89年東京ドームでの初対決以来、ふたりのシングルマッチは回を重ねる度に激しさを増し、いくつものドラマを生み出してきた。何よりもふたりの関係性、問題児と現場監督、互いに反目し合いながらも長州は誰よりも橋本を評価していたし、一方で橋本もいつか長州のように…と憧れに近い感情すら抱いていた。

チンタ。懐かしい名だ。確かに橋本は長州を憎んでいた。と同時に感謝もしていたはずだ。

「チンタァー‼︎」

叫び続ける長州、攻めあぐねる橋本といった図がひたすら繰り返されるリング上。
ある意味長州は相当な曲者ともいえる。橋本のエモーショナルな部分を呼び起こし、優越や勝ち負けという概念をこの試合から消し去ってしまった。プラス、それもあるが長州はすでに橋本の攻撃を正面から受け止めなおかつ跳ね返す力を持ち合わせていないのかもしれない。しかし橋本は他人からどう見られようがそんなことはどうでもよかった。
今は、散り散りになったWJを背負い、彷徨う長州を自分のリングでもってしっかりと、受け入れることができている。それだけで充分なのだ。
こうして観客不在の団体抗争はそのまま終わりを告げた。決着は14分26秒レフリーストップ、試合後あくまで強気の姿勢を崩さない長州は「それで終わりか!潰し合いだコラ‼︎」と挑発を続けるが、そのままリングを去ってしまう。この不可解な結末に唖然とする両国国技館…
試合前に明かされた右ふくらはぎ負傷が影響していたのか、やはりまともな試合をする力が残っていないのか長州?それともあえて橋本を精神的に揺さぶる展開を望んだのか。それは誰にも分からない。
今一度長州との決着戦を望む橋本。悲しいかな歓声の少なさが「私闘」をしてしまった代償か。
最後はゼロワン軍総勢で3.2.1.ゼロワーン‼︎で締め。終始伏し目がちのマイクパフォーマンスに感傷を引きずる橋本の心中を察してしまう。しかしながら橋本と所属選手の距離感が不安感?というか違和感を掻き立てる。

この感じは一体…



そして同月のクリスマス、12月24日後楽園ホール大会で橋本はゼロワン次代のエース・大谷晋二郎とのシングルマッチを迎えていた。
なぜこのタイミングで?という疑問もさることながら、こんなことは書きたくないのだが、とにかく酷い試合だった。

大谷をロープ側に追い詰めて橋本が放った数発のキックは、これが橋本のキックなのか⁉︎と疑うほどに全く破壊力のない弱々しい音を立てる。
さらに落胆を招いたのが、インパクトの瞬間よりもワンテンポ早くマットに倒れ込んだ大谷を見た時である。この二人は何をやっているんだ一体?
生々しい場面を見てしまった。と同時に受け入れがたい現実を突きつけられた感じがした。橋本は相手の協力なくしては破壊王を全うできなくなっていることに。先の長州と同じように、なのか?もしくはそれ以下の状態なのかもしれない。



その直後、落胆は救いようのない絶望に変わる。。




続く