夏をあきらめて | 珈琲にハチミツ

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プロレスの話などをつらつら綴るブログです。

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今ではすっかりコンビニになってしまった近所の本屋。かつてその店の二階はレンタルビデオコーナーだった。トントンと階段を上がり、奥のプロレスコーナーに目をやると、アントニオ猪木の姿がやたら飛び込んでくる。それらは今でも名勝負として語り継がれる素晴らしいカタログ達。

アントニオ猪木対

アンドレ・ザ・ジャイアント

ブルーザーブロディ

ウィリー・ウィリアムス

ジョニー・パワーズ

‥??

聞きなれない相手のこのテープ、帯にはこう書かれていた。NWF世界ヘビー級タイトルマッチ。

だがしかし、この中身を見ることなくこの店のビデオコーナーはあっという間に姿を消してしまったので結局試合を見ることができなかった‥

ところが2002年、新日本プロレスに突如このベルトが復活することになる。
話を少し戻すと、この年の夏、8.8UFOレジェンドを皮切りにマット界は近年稀にみるビッグマッチラッシュを迎えていた。

真夏の風物詩といえば新日本のG1クライマックスだが、マット界の話題はそこじゃなかった。G1が霞んでしまうほどのビッグイベントとは?それが8.28国立競技場で開催されるdynamite!である。石井館長の仕掛けのもとにK-1とPRIDEが総力を挙げてこれでもかというほどの黄金カードを実現させたのだ。

桜庭和志対ミルコ・クロコップ
吉田秀彦対ホイス・グレイシー

さらにはノゲイラ対ボブサップと、今思い返しても凄まじいカードが並ぶ。プロレスも負けてはいない。新日本のG1、全日本の日本武道館2連戦。さらに全日本にはアメリカマット界の大物ビルゴールドバーグが参戦とこちらもやる気十分。ところが‥
このゴールドバーグがまた問題だった。いくら武藤がアメリカマットに顔がきくとはいえ、ここまでの大物を招聘するのは至難の業(当時の全日本プロレスにそこまでの余裕はなかった)。蓋を開けてみればゴールドバーグ参戦を手引きしていたのはK-1石井館長だということが発覚。何故石井館長が‥彼は単なるブローカーではなかった。ゴールドバーグを足がかりにプロレス界と接点を持つことが目的だったのだ。水面下で石井館長は武藤にあるコラボレーション興行を持ちかけていた。プロレスでもない格闘技でもない新しい何かを生み出しませんか?と‥

2002年G1優勝は予想を裏切り期待に応えた蝶野正洋。高山の猛襲を十八番死んだふりで凌ぎきりカウンターのニールキックからSTFで逆転、最後はケンカキックの連打を叩き込み逆転勝利を飾った。試合後は藤田和之、魔界倶楽部(!)を向こうに永田、蝶野、天山らが共闘を宣言。長年続いたユニット抗争が一旦解体となって新しい動きが見え始めていた。と同時に試合後の乱闘劇は橋本ゼロワンの二番煎じにも見えてどこか冷めた気持ちも味わうこととなった。それだけゼロワンの乱闘が定着していたというのも不思議な話だが‥

さて、G1を終えた新日本も実は8月の終わりに武道館興行を控えていたことを忘れてはいけない。8.30、31の全日本武道館2連戦に8.28のdynamiteに挟まれて一体何をみせるのか?


藤田和之プロデュース
NWF世界王座復活トーナメント
藤田和之、高山善廣、安田忠夫、そして元リングス高坂剛と錚々たるメンバーが揃う。が、早速結果を綴るとこの仕掛けは思いっきりコケるとこになる。(話題性、集客性、試合内容全ての面で)

なにより皮肉だったのが、このベルトの創始者であり新日本プロレスの象徴であるはずのアントニオ猪木本人が、dynamite!の国立競技場でスカイダイビングをしているのだから本当に始末に悪い。

一体何のために復活したのか誰もわからないまま、NWF王座復活の記念大会はひっそりとその幕を閉じた。(ちなみに筆者は猪木対ジョニーパワーズ同様にこのトーナメントを見ていない‥)

結果的に8月の興行ラッシュはdynamite!の一人勝ちだった。※よりによって桜庭和志がミルコにドクターストップ負けを喫するというありがたくないオマケまでついてしまう。嗚呼、桜庭まで負けて誰がミルコを倒せるのかと絶望感すら感じた。


押し寄せる格闘技の波に飲まれ続けるプロレス界。ところが8.29のこの日、ひとつの光明が生まれた。

中邑真輔プロデビュー!


続く