再び離陸 | 珈琲にハチミツ

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その一撃が勝敗を決めた。

伝説の名をいただいたUFOドーム大会。全戦ガチンコ、格闘技世界一決定戦、プロレス復興といった壮大なフレーズな並ぶなかイマイチ実態の見えないまま過ぎ去っていった8.8のこの日、筆者は旅先の温泉旅館のテレビでたまたま生中継を目にすることができた。

そう、この日は日本テレビでゴールデン生中継。メインに立つ小川は勝敗のほかに視聴率、観客動員数、そして試合内容といった様々なハードルを課せられていた。ましてや相手は正体不明の極致、未知の強豪マット・ガファリである。
ドームに鳴り響くシスの暗黒卿のテーマ。先に入場するガファリは初の日本にもかかわらず割とリラックスしているように見える。
スペシャルリングアナの高橋克典のコールに導かれ小川の入場。久しぶりにギャラクシーエキスプレスが流れる。この曲は一連の橋本戦やPRIDE参戦時にも使用されて小川にとってゲンのいい曲なのかもしれない。しかしなにやら緊張した面持ち…数々の重圧がそうさせているのか。
カメラがセコンド陣を捉える。すると橋本の姿が映し出される。ウォー!と歓声が一段と大きくなるドーム。もちろんテレビ観戦の筆者も同様だ。まさにOH砲ここにあり。
試合に先立ち両選手の国歌が流れる。なにを思うか、ガファリのこの堂々たる表情。君が代の斉唱は何故か中島美嘉、リングアナの高橋克典といいその起用とチョイスに決戦ムードが若干削がれる。
ともあれ試合開始は刻々と近づく。ついに向かい合う両者、絞り込んでいる小川と比較するとガファリの腹はコンディションとしては疑問視されるとこらだがこの体格差、50㎏差にはいささか恐怖を感じる。さて、レフリーのチェックを終えて格闘技世界一を決める闘いのゴングが鳴る。
案の定その体格差を利用して圧力をかけるガファリ。小川はプレッシャーからかメンタルどころか体全体が固く簡単にロープ際に詰められてしまう。この展開が再三続く、時折小川も腕を取りにいくなど反撃を試みるがガファリに押し込まれロープ側、ロープ側である。
とにかく同じ状況に見える。いち視聴者としてはまったく退屈極まりないが…確実に体力を消耗している小川、スルッと足をとられテイクダウンを許してしまう。だがその後の攻め手を持たないガファリはみすみすチャンスを逃してまう。
再びスタンド。小川はひざ蹴りをガファリの大きなお腹にお見舞いする。するとこれを嫌ったガファリ、何かの一つ覚えのように前進して圧力をかけようとしたその時、小川の左がカウンター気味にガファリの顔面にヒット!ついに反撃の糸口を掴んだ小川は一気呵成に攻めたいところだが
あらら?

小川はパンチを数発お見舞いする。グローブで顔面を庇いながらへたり込んで起き上がろうとしないガファリ、完全に戦意を喪失している。ただの屍同然だ。

これを見兼ねたレフリーがゴングを要請、試合終了!
嘘だろ?

勝負タイムは1R1分56秒TKO。時間だけみれば小川の完勝なのだろうがここにいたるまでのプロセスはそうじゃない。むしろ8割は押されていたし最後の左カウンターがガファリの戦意を一気に削いで勝負を降りた格好だった。

なにか…釈然としない空気が漂うドーム。しかし巨像退治を終えてホッと胸を撫で下ろした小川。勝利のパフォーマンスもそこそこにマイクでは実はテンパってましたと正直な心境を吐露する。
リングサイドの猪木に勝利の報告。ともにマスコミの絵作りのため並び立つ。
橋本と猪木。あのマーク・ケアー騒動以来初の公の場で対面した両者。この時の橋本の笑顔の裏には去来するものは一体。
一方で小川に向けた笑顔は本物だろう。肩を組み盟友を労う心優しい破壊王。そして小川を肩車。
こうして真夏の蜃気楼は過ぎていった。

その後この一戦は週刊ゴングを筆頭にプロレス村内で非難の的となり、OH砲はますます孤立していくことになる。しかし結果は残した。

観客動員数はドーム興行最低(当時)の2万8648人、平均視聴率10.8%、瞬間最高視聴率21.2%

とこの振り幅から思うに、マット界における求心力は低いが一般の関心度は高い。というなんとも微妙な立場が小川なんだという再認識させられることになる。 

しかし一つの山は越えた。はず

OH砲が政治力に勝ったか負けたからわからないが、次なる試練が二人を待ち受けている。。


続く