たぶん、有難う | 珈琲にハチミツ

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戦前の予想に反して終始距離を詰めながら決して引かない小笠原。圧倒的な体格差を誇る破壊王には攻撃こそが最大の防御なり。そんな感じなのか。とにかく攻めの姿勢を崩さない。
自ら道着を脱ぎ捨てオラァ!と気合を入れて正拳から中段、下段蹴りとラッシュの連携。しかし途中バランスを崩してしまう。ついに攻め疲れが見えてきたのか?今度は後ろ回し蹴りを仕掛けるが難なくキャッチされ、体が宙に浮くほど強烈なヒザ蹴りを浴びてしまう。

一瞬歓声が悲鳴に変わる。それほどの一撃である。嗚呼、ついに捕らえれてしまった…と誰もがそう思ったに違いない。

だがここから小笠原は驚異的なタフネスぶりをみせる。並みのレスラーなら悶絶級の橋本のヒザ蹴りを食いながらも即座に立ち上がる。しかしそこへ待っていたのは再びヒザ蹴りからコーナーに詰めて側頭部への重爆。ダウン必至の無情な攻撃にもスクッと立ち上がり反撃を試みる。

歓声が、悲鳴からどよめきに変わっていく。

まるでゾンビのような小笠原に対して橋本はこれでもかと鉈を振り下ろす袈裟斬りで動きを止めておいて、再び重爆!がこれも後ろへ吹き飛ばされた反動のまま起き上がり向かってくる小笠原。どうやら打撃では倒れないようだ。ならばと伝家の宝刀DDTが炸裂。ついに小笠原の動きが止まった?

いや、足元がおぼつかないながらも立ち上がり「来い!」と挑発さえしてくる。もはや天晴れと言うしかないだろう…
橋本は手を緩めない。抵抗を続ける小笠原をヘッドロックで十二分に絞り上げて
体重差を利用してタメをつくらずDDT。二発目!小笠原は万事休すか?まだ。起き上がり様の表情…眼が死んでいない。なかなかどうしてねじ伏せることができない橋本、対角線へ走りロープの反動を利用したドロップキック一閃!中腰状態の小笠原にドスンと叩き込む。
もはやこれまで。再びフィニッシュホールドの体勢に入る橋本、だが小笠原は最後まで勝負を捨てていない…この心意気に橋本も一瞬躊躇するような表情を浮かべるも
情けは無用の三度目のDDT!小笠原は頭部からマットに突き刺さる。
トドメはリング中央で駄目押しの三角絞めである。完全に動きの止まった小笠原を見兼ねてレフリーがゴングを要請し、橋本のレフリーストップ勝ち!決着がついた。観衆へ向かって会心のガッツポーズをみせる橋本だがその表情は厳しいまま…
小笠原は最後まで参ったを口にしなかった。失神しリング上で大の字の小笠原を囲む息子や弟子達、場外から担架が運び込まれるが橋本がちょっと待ってくれと、それを下げるよう指示を出す。
リングドクターを押しのけ自ら気つけを買って出る橋本、ここでようやく小笠原が起き上がる。
再び対峙した両者、とこの瞬間、橋本の顔に笑みがこぼれだす。ここからは二人にしか分からない時間が流れる。したがって余計な詮索は入れないことにする…
向かい合い互いに礼。
固い握手を交わしリングを後にする両者。
眼に涙を浮かべてリングを後にする橋本。一方で小笠原も全て出し切ったかのようか清々しい表情で退場。


あえて言わせてもらうと、まぁずるい言葉かもしれないがこの試合に勝者も敗者もいなかったような気がしてならない。かつて異種格闘技戦の名の下にここまで清々しい試合は過去になかった。橋本と小笠原は混じり気のない決闘をやってのけたし、決着は衆目の元つけられたが、勝ち負けを超えた心のやりとりは、二人だけのものとなって持ち帰えられたに違いない。



こんなキレイな試合もたまにはいいですよね…


続く