闘魂対王道の行方 | 珈琲にハチミツ

珈琲にハチミツ

プロレスの話などをつらつら綴るブログです。

感想やご意見気軽にどうぞ★

闘魂三銃士と四天王の邂逅。

意外にも、先に接触をはかってきたのは三沢光晴からであった。

1998年5月1日、全日本プロレス初の東京ドーム大会。メインイベントの三冠ヘビー級選手権試合で川田利明に敗れた三沢は、その後怪我の治療のため2シリーズを全休しリングを離れる。この間三沢は普段のトップレスラーという立場から一歩引いた形で、全日本プロレスという団体の現状を目の当たりにする。
団体運営の実務側から伝えられる実状、所属選手らの想いなどを丁寧に聞いて周った。そして、三沢は多団体時代といわれた90年代のマット界も過渡期に差し掛かった今、このまま現状維持を続けていてはいつか業界そのものも地盤沈下していくのではといった不安感にもかられていった。

8月の戦線復帰後、三沢はまず全日本プロレスの意識改革を訴え団体内の活性化とマッチメイクの再編に着手する。Jr.ヘビー級の実力者である小川良成とのユニット結成、さらに団体の鎖国方針を緩め高山善廣ら他団体レスラーの積極的な起用。これらは三沢による仕掛けであった。

そして同年秋、三沢は1996年より新日本プロレスから移籍していた馳浩に仲介を頼み、闘魂三銃士との極秘会談を申し出る。
馳「三沢と会ってみないか?」
橋本「いいですよ。」

三沢は信頼の置けるスタッフを1名帯同し、三銃士側からは橋本真也と蝶野正洋が参加、こうして都内某ホテルのスイートームにて両団体のトップによる極秘会談が実現した。そこではプロレス会の現状や今後についての意見交換、さらに馬場猪木時代から根強く残る両団体の確執に終止符を打つべく、自分たちの手で垣根を取り払い交流戦を行えないかといった積極的な話がもたれた。この会談はその後、武藤敬司、小橋健太も加わり数度に渡って続けられた。

年が明けて1999年、まず三沢が動いた。

新日本プロレスで1.4事変が勃発し、橋本が長期戦線離脱を余儀なくされていた頃である。橋本の身を案じた三沢から一報が入る。「よかったら、うちのリングで試合をしてみませんか。」

橋本の復帰戦の舞台を5月全日本プロレスのドーム大会で、しかも相手は四天王の一角である川田。実のところ川田も1月の三冠戦以来負傷欠場中であり、W復帰戦が描かれていた。しかしこのサプライズプランは両者合意に至るも結果的に立ち消えとなってしまい、馳が川田の復帰戦の相手となり、橋本は6月に天龍源一郎を相手に復帰を果たすこととなる。だがここまでのやり取りの中で、三銃士と四天王の距離が急速に近づいたことは紛れも無い事実であった。

5月3日、武藤は天龍を相手にIWGPヘビー級のタイトルマッチに臨み、激闘の末タイトル防衛に成功。その試合後インタビューでポロっと漏らした一言がそれを物語る。「天龍の向こうに、三沢なり、川田の姿が見えたよ。」


5月7日、全日本プロレスにて記者会見が開かれた。同年1月、ジャイアント馬場が死去し、馬場亡き後の新体制の発表である。この会見で三沢の代表取締役社長就任が正式発表された。それから2日後、週刊プレイボーイ誌の特集により、三沢新社長と蝶野の対談が実現。ついに公の場で両団体のエースが対面。
「プロレスをもっとメジャーなスポーツにしたい。プロレスは一番頭を使う格闘技だと思うんだよ。組み合ってるだけじゃない。距離が近づいたり離れたり、間をおくことも勝つためには必要。この面白さをたくさんの人に知ってほしいんだ。」

続く5月13日、プロレス写真展において今度は三沢と武藤が対面する。さらにこの様子は日本テレビで放送され、三銃士と四天王の交流は両団体をバックアップするテレビ局の垣根すら越えようかといった雰囲気であった。※新日本プロレスはテレビ朝日

このまま友好ムードで交流戦の機会が高まるかに見えたが…その後新日本プロレスはオーナー猪木の介入により現場は大混乱をきたし、一方の全日本プロレスもフロントの内部抗争に明け暮れる事になり、ひとまずこの流れは堰き止められてしまったかにみえた。


しかし約1年半の時を経て、橋本は解雇、独立といったかたちで新日本プロレスを飛び出し、三沢はプロレスリング・ノアを旗揚げ。再び互いが交わる時が訪れた!
2001年1月25日、橋本は会見を開き、ついにプロレスリングZERO-ONEの旗揚げ戦が発表された。

3月2日両国国技館
真世紀創造。

この席にて、橋本はこれまで三沢とのやり取りに何かと口を出していた秋山準について言及し「格好の場所だと思いますので、俺のことが気に入らないのなら出て来いよ。」と挑発。

旗揚げ戦までおよそ1ヶ月、橋本の周囲が慌ただしくなってきた。新日本プロレス内部からもゼロワンに賛同する選手が続々と名乗りを上げる。
1月29日、元IWGPJr.ヘビー級のチャンピオン高岩竜一が契約更新を保留、ゼロワン入りを表明した。続いて、半年間カナダ〜ヨーロッパを転戦し肉体改造を経てヘビー級に転向していた大谷晋二郎もゼロワンに合流。いよいよ旗揚げに向けて一直線!と思われたが、ここで暗雲が立ち込める。

橋本のコメントを受けた秋山が声明をだす。
「…売った喧嘩をやっと買ってくれたなと。でもしょぼいカードだと自分の価値が下がるんでいかないですよ。シングルが一番いい方法。」

ここへきてまさかのシングル戦要求。三沢戦に拘る橋本の心境を逆手に取るかのような秋山の一手に、橋本はどう応えるのか。。


続く