おびクリニュース2024年1月号を転載いたします。
Q.血圧の薬は飲み始めると止められないと聞いたので怖いです。血圧が高くても自覚症状がなければ、薬を飲まずに様子を見てもいいでしょうか？。
A．「血圧の薬は飲み始めると一生止められない」という話しを聞いて「血圧の薬に縛られるのは嫌」、「止めたら恐ろしいことが起こる薬は怖い」という印象から、血圧の薬を忌避する人にたくさん出会ってきました。
「飲み始めると止められない」の意味するところは
高血圧は自然に治るものではないので、服薬をやめれば高血圧に戻ってしまう。
従って、血圧を正常に維持するためには薬を飲み続けなければならない、という解釈が正解です。
1回でも飲み忘れたらダメという事ではありません。
白髪を染める事に例えて説明しましょう。
齢をとれば誰もが白髪になります。
一度染めても、また白髪が生えるので、黒髪を維持するには白髪染めを継続して使用しますね。
白髪染めも血圧の薬も中断すると元に戻ってしまうので使い続けましょう
ということなのです。
ただし 艶のある黒髪を望まなければ白髪染めはいらないように、健康を望まないなら薬は不要という話しになります。
ここまでご理解頂けたら、次はどちらを選択をしますかという質問になります。
①毎日、血圧を正常に保ち脳卒中などの大病を患うことなく健康長寿を望むのか
②高血圧を治療せず、脳卒中で突然亡くなったり、半身麻痺になって要介護の生活も仕方がないと考えるか
どうされますかという話になります。
ほとんどの方が脳卒中から要介護となることを避けるべく、血圧の薬を飲む選択をされます（実は私も血圧の薬を飲んでいます）。
しかし、「自覚症状がないから大丈夫」、「少しぐらい高くてもいいという医者がいる（国際的には極めて少数派） 」、「長生きに興味がない」などの御高説を披露される方がいらっしゃいます。
そういう方に現実味のある話しをします。
2024年元旦に発生した能登半島地震で多くの方が避難所生活を送っておられます（輪島で開業している後輩医師が避難所で活動中です）。
関東でもいずれ地震は発生します。
その時、私たちの身に何が起こるでしょう・・・。
寒い体育館の床に段ボールを敷いて毛布にくるまって雑魚寝。
ひどい寒さで眠れず。
水も食料も乏しい。
ストレスで一気に血圧が200に上がるも運悪く医薬品がない。
そして・・・悪い予感が的中。
脳卒中を発症。
交通網が遮断され病院へ搬送不能。
助かる可能性のある人を優先的に治療する規則（トリアージ）により治療の順番は若い人の後とされる。
麻痺で動かない体を冷たい段ボールの上に横たえたまま水すら飲めない。
排泄は着衣のまませざるを得ず。
結果、満足な手当ても受けられないまま息絶える。
水不足のため体は洗ってもらえず、避難所の衛生状態を保つため遺体は毛布にくるんで屋外に安置。
遺体が荼毘に付されたのは２週間後。
唯一の慰めは遺体に積もった雪が白装束となって体を綺麗に包んでくれた事だけであった・・・。
という事態が起こる可能性があるのです。
あえて辛辣な言い方をしますが、普段の血圧治療を怠ったために、周りの人に疎まれながら不本意な最後を迎えるだけでなく、あなたを見殺しにしてしまったという罪悪感を、生き延びた人々の心に一生残してしまうかもしれないのです。
もし、普段から治療をしていれば、脳卒中の一歩手前で助かり、残された人々が自責の念にかられるようなことも避けられるかもしれません。
白髪を染めなくても誰にも迷惑はかかりませんが、高血圧を治療しないと自分だけでなく、人様にも苦労をかけるという現実があるのです。
いまからでも遅くありません。
年齢や持病によって異なりますが、血圧は最悪でも130/80前後より下を目指して治療なさってください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
おまけ
冬の必需品、加湿器の掃除はされていますか？
超音波式の加湿器は週に1回は掃除をしないと、水溜りに菌が繁殖します。
ですが、水受け部の複雑な形状に適したブラシがなく、掃除のたびにいらいらしていました。
偶然にもペンキ塗装用のハケが細長い形をしていてい、毛足も長く、細かいところに届くので
とても有用でした。
掃除用のブラシに悩んでいた方は、100円ショップでも売っていますので
使ってみていただくとよいかもしれません。
付着したカルキはクエン酸で溶かすのが定番ですが、時間がかかりますよね。
速攻で除去したいときはナイロンタワシが便利です。
番号が小さいほど目が粗いので傷がつきますが、細かい傷がつくことが気にならなければこっちの方が早いですよ
