おびクリニュース2023年12月号を転載いたします。
Q. 将来、認知症になるのが心配です。 長生きしない方がいいでしょうか?
A.昭和生まれの90歳は珍しくなくなりました。
いずれ、平成生まれの100歳、令和生まれの110歳が普通になる時代がやってくると思います。
世の多くの女性がいつまでも可愛くありたいと願うのと同じく
生物が自らの命をできるだけ永らえたいと願う事は本能ですから
誰も逆らうことができません。
好むと好まざるにかかわらず平均寿命の高齢化は全人類が適応しなくてはならない共通の課題であると同時に、人類はどこまで寿命を伸ばす事ができるのかという限界への挑戦です。
当然、予想もしなかった問題が発生しますが、知恵と工夫でひとつひとつ解決することができると思います。
なぜなら、これまでも人類はそうやって進歩してきましたから。
高齢化を悲観的に捉える風潮が強いのですが、逆に考えれば高齢化が進んだ日本こそが、国際社会の中で平均寿命110歳の社会問題を真っ先に解決することが可能なポジションにいるのです。
さすがに平均寿命120歳は人間という有機的な生物の物質的限界がありますから、そこまでの対応は必要ありません。
逆に言えば平均寿命110歳を想定した社会システムを構築できれば、高齢化社会を克服したと言えるでしょう。
これまでの日本は経済力、技術力で国際社会における立ち位置を確保してきましたが、その二つの力に陰りが見えています。
そのような中で諸外国にないもの、諸外国が憧れるものがなければ、経済は低迷し、友好国は減り、国際社会で孤立してしまいます。
ピンチはチャンスといいますが、もしも高齢化を逆手にとり、その問題を日本がいち早く解決した暁には、国際社会をリードする分野を確保することになり、国力に厚みをもたらします。
しかし、そこで問題になるのが認知症です。
高齢化と認知症は切っても切れない関係です。
そのため、長生きが不安という方もいらっしゃいますが、ちょっと私が想像する未来のお話しを聞いてください。
かつて日本は胃癌大国でした。
なんとかして胃癌で亡くなる人を減らそうと、日本の医師や技術者が必死に努力を重ねた結果、日本は世界トップの胃癌診断・治療法を開発しました。
現在、世界中で使用されている胃の内視鏡検査機器の9割がオリンパスと富士フィルムという国産メーカーで作られています。
治療技術も世界一なので日本の医師が海外の病院へ指導に出向いています。
このような華々しい成果を得ることができたのはなぜでしょうか?
答えは胃癌患者さんが世界一多かったからです。
皮肉にも診断治療法が進歩した理由は病気で苦しむ患者さんが非常に多かったためでした。
この考え方を当てはめると、高齢化が進み認知症患者さんが増える日本が、認知症の診断治療法で世界をリードする日が来るであろうという結論になります。
そこには患者さんやご家族のご苦労があるわけですが、その方たちのおかげで診断治療法が進歩したなら、その存在は未来の世代に貢献したことになります。
したがって、高齢者が長生きすることは若者世代にも価値があり 平均寿命が伸びることを嘆く必要は全くないのです。
私には世界に先駆けて、いち早く認知症診断治療法を開発し、110歳まで長生きをしても豊かに暮らせる社会を実現した未来の日本が目に浮かびます。
そして、諸外国がそのシステムや技術を学びに日本を訪れ、高齢化に対応した日本製品が海外に輸出されていくのです。
日本国民全体が長生きが喜ばれる国にしようと努力した結果、日本は軍事力ではなく、長寿力で世界に尊敬され、必要とされる国になっているのです。
なんて素晴らしい事でしょう。
そのためには日本で長寿の方が増えなければなりません。
皆さんとりあえず100歳を目指しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。