日本と台湾「恩返しの応酬」をまとめてみました | 落人の夜話

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こないだ6月5日、台北にある日台交流協会(台湾における日本大使館に相当)が花で埋め尽くされたそうです。

 

台湾へのワクチン提供に感謝する花 日本の窓口機関を埋め尽くす | 社会 | 中央社フォーカス台湾 (cna.com.tw)

 

中国の妨害でコロナワクチン確保が困難となっていた台湾へ、日本から124万回分のワクチンが無償提供されたことへの感謝で、その多くが一般市民からのものとか。

 

台湾の方々の気持ちが単に表面的なものではないことは、たとえばこのニュースに寄せられた多数の日本語コメントを読んでもわかります。

 

台湾支援のワクチン出発へ 「友情を踏まえた提供」(2021年6月4日) - YouTube

 

「心からの感謝」「この恩は一生忘れません」「雪中送炭の恩」…

 

「雪中送炭」なんて言葉、久しぶりにみた気がします。

雪の寒さで震える人に炭を送って暖をとらせる、という意味で、実に奥ゆかしい表現です。

 

対する日本からのコメントには「東日本大震災のときの恩返し」が見えますが、私も同感です。

今回の台湾へのワクチン支援は実に有意義な税金の使い方と感じますし、政府が「友情を踏まえた提供」と公的コメントを出したのも素晴らしい判断と思います。

 

かつては日本領だった台湾。

しかし、いま日台間にこれほど清々しい友好関係が育っているのは、そればかりが理由とは言えません。

同じ条件下にあった韓国あたりと比べてもその違いは歴然で、これは両国の品格の差だけでなく、台湾が経験してきた近代史にも要因があるでしょう。

 

 

昭和20年(1945)。

第二次世界大戦に敗れた日本が去ったあと、台湾に入ってきたのは蒋介石率いる国民党でした。

国民党政権は当初から汚職にまみれ、中国大陸から渡ってきた兵士や官僚らによる強盗や強姦、殺人などが多発。彼らは罪を犯してもなかなか処罰されず、台湾は暗黒時代を迎えます。

さらに民衆の怒りに対して国民党は容赦のない弾圧を加え、これによって命を落とした台湾人は数万人に及ぶと言われます。

 

「日本統治時代は良かった」

「日本の兵隊さんは立派だった。それに比べて国民党のやつらは…」 

日本時代を知るお年寄りからそんな話を聞くのは、台湾あるあるの一つ。しかしその台詞には、単なる親日や懐古では片付けられない、長い苦難の記憶も込められているのです。

 

しかし、1996年。

のちに“台湾民主化の父”と評される第4代総統・李登輝によって、台湾初となる総統選挙が実施。

以降、急速に民主化が進んだ台湾の経済は発展をかさね、今や世界7位(2020)の外貨準備高をもつ堂々たる国家に成長しました。

 

一方、台湾を自国の「領土」だと主張する中国はこうした動きに圧力をかけ続け、台湾をめぐる情勢は今も世界の火種のひとつとなっています。

このあたり、なぜか日本の学校では教えませんよねえ。

 

あ、念のため記しておきますと、昭和46年(1972)、日本の田中角栄政権は中華人民共和国との「国交正常化」を実現するため、台湾を国家として承認しない条件をのんでいます。

なので「台湾は国じゃない」とか言う人もあるかも知れないんですが、世界には台湾を承認する国も15ヶ国ほど存在しますし、日本と現実に友好関係も存在しています。

なにより実態はまぎれもなく独立国家ですので、ここでは「国」と表記しています。

 

台湾ってどうして国じゃないの?| 国際報道2020 | NHK BS1

 

さて。 

繰り返しになりますが、多くの日本人にとって台湾からの支援で最も忘れがたいのは、あの東日本大震災時の支援です。

ただ、あのとき台湾人が示した支援の理由は、「921大地震の時に助けてもらった恩返し」でした。

 

今に至るまで連綿と続く、日台「恩返しの応酬」をまとめてみました。

 

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平成11年(1999)9月21日。

《台湾921大地震》

 

震源は台湾中部の南投県付近で、最大震度は7を計測。台湾にとって20世紀最大の地震で、死傷者およそ1万4千人という大被害となりました。 

余震が続くなか日本は真っ先に救助隊を派遣し、阪神淡路大震災の経験を活かした救助活動を展開。さらに日本から送られた義援金は各国総額の8割におよび、このことは当時の台湾で大きく報道されました。

 

台湾大地震で日本の援助受けた李登輝氏「少しは恩返せたか」|NEWSポストセブン (news-postseven.com)

 

なお、台湾を「領土」と主張する中国は救助隊も派遣せず、さらには台湾に義援金を贈ろうとした日本政府に「支援は我々を通さねばならない」などとクレームをつけ妨害。また世界各国に対し「支援に感謝する」などと表明し、政治パフォーマンスに終始しました。

 

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平成23年(2011)3月11日。

《東日本大震災》

 

日本人である私たちにとって、この時の被害は記すまでもないでしょう。

そしてよく知られているように、このとき台湾から送られた義援金は官民あわせ260億円以上におよび、これは世界最多の額です。

 

台湾からの支援はこればかりでなく、救助チームの派遣、民間団体による炊き出しや現金配布、復興住宅や病院建設への支援など、挙げればきりがありません。

そういえば震災後、被災地へ直行便をとばして最初の旅行客を送った国も台湾でした。

 

一方、中国や韓国では「熱烈慶祝日本地震」「天罰」「日本の大地震をお祝います」などなど、大喜びではしゃぐ人々が出現したのをご記憶の方もおられるでしょう。さすがにたしなめる声もあがったようですが、こうしたおぞましい光景にあふれる社会は、この両国がいまだ文明国と呼ぶに値しないことを示しています。

 

不幸なことに当時の日本は民主党政権。

総理大臣の菅直人は国民の命より中国への配慮を優先し、最も早かった台湾からの救助派遣の打診に丸2日間の待機をくわせています。また、アメリカや中国のメディアには掲載した感謝広告を台湾には行わなかったため、民間の有志が台湾メディアに感謝広告を掲載しました。

 

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平成28年(2016)2月6日。

《台湾南部地震》

 

台湾南部の中心都市・高雄を震源とし、最大震度は7。強い揺れにより高層ビルの倒壊などが相次ぎ、死者120人以上という被害が出ています。

日本は地震当日のうちに高雄に調査チームを派遣し、100万ドルの緊急支援を表明。自治体や民間からもそれぞれ義援金が届けられています。

 

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平成28年(2016)4月14日。

《熊本地震》

 

ここでもいち早く反応した外国は台湾でした。

当時の馬英九政権は当初1000万円の寄付を表明するも、台湾国内から「額が少なすぎる」と突き上げを受け6400万円に増額。ほかにも高雄、台南、台中など有力市の市長らが給与を返上し寄付に振り向けました。

 

一方、中国では「日本の大地震を祝い、バーゲンセールを実施」などと喜ぶ企業や商店が続出…

と、まるで東日本大震災後のデジャブみたいな光景が出現したようです。

 

【中国ネットウオッチ】熊本地震祝いバーゲンセール「日本沈没なら在庫一掃セールだ!」 さすがに「中国人の恥さらし」と非難の嵐…(1/3ページ) - 産経ニュース (sankei.com)

 

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平成30年(2018)2月6日。

《花蓮地震》

 

台湾東部、花蓮県を中心としたエリアに最大震度7を計測。死者17人、家屋倒壊やライフラインの切断などの被害が報告されました。

このとき日本は、外国で唯一となる救助チームを派遣し歓迎されています。

 

一方、中国は台湾の政権を通さず花蓮県へ直接電話をかけて支援を表明するも、「必要ない」と一蹴されています。

その腹いせでしょう、中国メディアは「日本の救助チームはさっさと撤退した」などと報じています。

 

<台湾地震>救助隊の拒否で中国が腹いせ? 「日本チームはさっさと撤退した」と批判 | Reuters

 

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令和2年(2020)4月21日。

《日本のマスク不足》

 

中国の武漢から世界に拡大したコロナウイルス禍のなか、マスク不足に苦しむ日本へ、台湾から「日本加油」(日本がんばれ)とプリントされた200万枚のマスクが贈られました。

その後さらに防護服5万着などが追加寄贈されています。

 

一方、中国はコロナウイルス発生源でありながら、感染拡大に苦しむ国々に「マスク外交」を展開。自国の影響力拡大に利用しています。

 

中国がマスク外交を展開:日本はどう応じるか | 2020年 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)

 

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令和3年(2021)3月1日。

《中国による台湾パイナップル禁輸》

 

従来ほとんど中国へ輸出されてたいた台湾パイナップル。まさに収穫期を迎えたこの3月、中国が突然「台湾パイナップルの禁輸」を通告しました。もちろん政治的な圧力です。

 

台湾は対応策として日本へのパイナップル輸出に力を入れ、また日本でも台湾を応援しようとキャンペーンが張られたため、対日輸出量を含む販売量はすでに昨年度の対中国輸出量を超えています。

中国の目論見ははずれ、かえってそのやり口が世界に報道されることとなりました。

 

日本各地に拡がる台湾産パイナップル拡販支援の輪 | nippon.com

 

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そして今年6月4日。

《日本から台湾へのコロナワクチン支援》

 

またしても中国の妨害により、台湾は予定されていたドイツ企業からのワクチン調達が困難となっていました。

一方で中国は台湾に対し、中国製ワクチンを購入するよう迫っています。これまた気色悪いやり口ですねえ。

 

今回、日本から台湾へのワクチン支援はかなりスピード感のあるものでしたが、その準備は水面下で静かに進められていたようです。

 

日本のワクチン提供「10日間の静かな作戦」 台湾の安全保障高官が明かす | 人気記事 | 中央社フォーカス台湾 (cna.com.tw)

 

日本社会には中国共産党の下っ端みたいなのがいることも周知の事実で、そちら方面に妨害されないよう、事は慎重に運ばれたようです。

で、その答え合わせみたいな声明がこちら。

 

新型コロナ: 日米が台湾にワクチン提供、中国は「政治利用」と反発: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

「政治利用」の家元みたいな中国が、ワクチン支援を「政治利用だ」と反発してます(笑)

だいぶ悔しいご様子ですが、振り返ってみればこうした厚顔無恥は中国のお家芸でもあります。

いやあ、歴史を正しく学ぶって本当に大切なんだなとつくづく思います。

 

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ということで。

こないだ近所のスーパーに台湾パイナップルが入荷してたので、さっそく買ってきてました。

私は今までに6個ほど購入してましてね。以前にも記事でご紹介したことがありますが、これほんと美味しいんですよ。

 

台湾産パイナップルを食べてみました | 落人の夜話 (ameblo.jp)


 

 

台湾パイナップルは沖縄のスナックパインの原種。よく見たら形も似てますね。

切ってみたらよく熟れていて、やっぱり芯までおいしく食べられました(^^)

 

思えば日台の絆は、中国の悪だくみを退ける現実的効果を示しています。

まったく、「絆」とはこういう時に使う言葉なんだろうと思います。

その象徴ともなった台湾パイナップルを、ニューズウィークは「自由パイナップル」と呼んでいます。

 

台湾産「自由パイナップル」が中国の圧力に勝利、日本も支援|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

 

台湾産「自由パイナップル」は、5月から6月にかけてが収穫のピーク。

まだの方はぜひお手にとってみられることをお勧めしますよ(^^)