自分の幸せを他人に押しつけないで。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

 

「幸せ」は、人それぞれです。
誰かが「幸せだ」と感じることが、自分の幸せとは限りません。

たとえば僕は、名古屋の「ラーメン福」のラーメンを食べると「幸せ」になります。
なぜなら、その味には、名古屋で暮らしていた頃の様々な思い出がリンクしてるからです。
だから、僕が僕以外の人にラーメン福のラーメンを勧めても、

それは、その人にとっては「ラーメン」にすぎません。


ですから、自分が幸せだと感じることを、他人に押しつけても、

それはその人の幸せにはならないことが多いです。

でも、自分の幸せを、子どもに押しつける大人が多いです。

 

その幸せを追う子ども達は幸せになれません。

なぜなら、それは自分の幸せではないからです。

だから、いつまでたっても幸せになれなくて、

そして、幸せになれない自分は、親の期待にこたえられないダメな人間だ、と

思い込んで、自分を責めてしまったり、

ものすごく苦しいのに、「自分は幸せだよ」とごまかしてしまい、
ストレスをどんどんためて、生きていられなくなる人もいます。

幸せになりなさい。は、つらすぎる要求です。


もっとひどいのは、自分が経験したこともない幸せを、勝手に想像して、妄想して、
それを子どもに押しつけるケースです。

たとえば、「いい会社に入りなさい」や、「安定した職業に就きなさい」などです。
だって、「いい会社」や「安定した」の基準が曖昧すぎます。
だから、そんなものを追いかけた子ども達は、どんな仕事に就いたとしても、

そこには必ず不安もあり、嫌なこともあります。

そのたびに、自分は親の期待にこたえられなかったダメな人間なのだ・・・と
思ってしまいます。

幸せになりなさい。

いい会社に入りなさい。

は、危険です。

そうじゃなくて、

自分は、こうやったから、いま幸せだと感じられている。

自分は、こうやったから、いい会社になった。

という情報を教える方がよいです。
それだと、子ども達はそれを参考に行動できるからです。

でも、悲しいのは、どうやったら幸せになれるのかを、

知らない大人が多すぎるということです。

平成の真ん中あたりまで、日本は人口が増え続けていました。
お客さんが増え続けるという状態です。
だから、大抵の仕事が、たいした努力をしなくても成長できました。
成績さえよければ、比較的大きめの会社に入れました。
大きめの会社は、中小企業よりは安定しているように見えました。
なぜなら、大きめの会社が成り立っているのは、中小企業に格安の仕事をさせているからです。
なんたって、つくったらつくった分売れるのです。
人が増えていたからです。
ですから、その時代を生きてしまった大人は、

どうやって、安定や、いい会社、をつくったのかがわからないのです。
どうやって幸せを得たのかがわからないのです。
なんとなく、いわれたことを、いわれたとおりにやったら、何とかなってしまいました。
その中で、睡眠時間や自由時間を削って、他人よりも多くの仕事をした人は、
他人よりも所得が増えて、少しはいい暮らしができました。
でも、それは、沢山働いた結果にすぎません。
人口増加期は、仕事がなんぼでもあったので、労働時間を長くすれば、
それに見合った対価が得られたのです。
(もちろん、この時代にも消えていく仕事がありました。科学の発達によって、別な方法で問題が解決できるようになったりすると、古い方法は消えてしまいます。)

しかし、平成の真ん中あたりから、人口が減り始めました。
人口が減るということは、お客さんが減るのです。

沢山仕事をしたら、余ってしまうのです。
しかも、ロボットやAIの発達によって、いわれたことをいわれたとおりにやる仕事は、

どんどん消えていくのです。
もう、人口増加期の成功の秘訣は、ほぼ全て、敗北の秘訣になりました。
これからは、新しい仕事や価値を生み出す仕事をしないと、かなり厳しいです。

いま、少子化の影響で、高校の統廃合が進んでいます。
高校は生き残るために、進学率を上げようとしています。
その結果、子ども達の感想文からは、悲痛な叫びが聞こえてきます。
「行きたくもない大学に進学させられた。」
「私立大学に行きたいのに、国立しか受験させてもらえなかった。」

「文系を希望していたのに、成績がよかったからスーパーサイエンスにいれられた。」

「理系に行きたかったのに、成績が悪いからと文系にさせられた。」
いったい、誰のための進路指導なのか。

何のための進路指導なのか。


大人は、20年前、30年前の進路指導を、子ども達に教えるべきではありません。
自分でさえ得ることができなかった「安定」を子どもに要求すべきではありません。
ましてや、自分の仕事の安定のために、子ども達を利用してはいけません。
大人は、子ども達を、自分たち以上に押し上げるのです。
そうしないと、社会は衰退しかしないからです。
そのために教育があるのに、その教育のアップデートが遅すぎます。

この状況を打開するには、

子ども達に、本当の幸せについて考えてもらう。
子ども達に、最新の科学技術や学問を提供する。(教える、ではなく、提供です。)

子ども達の、社会の問題を見捨てないための優しさを伸ばす。
が必須です。

それに気がついた人達が、力をあわせていくしかないです。
まじで日本やばいです。