人間の仕事 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

最近の若い人達と話をしていて感じるのは、

仕事を職業名や資格で考えている人ばかりだなあ・・・ということです。

 

僕は、自分がなんという職業をしてるのか、いまいちわかっていません。

 

(1)リサイクル用のマグネットを作っています・・・・

といっても、お客さんの使い方にあうようにマグネットを提案したり開発したりもするし、

マグネットそのものの製造もあるし、アフターサービスもあります。

(2)宇宙開発もしています・・・

といっても、ロケットだったら、ハイブリッドもあるし、固体燃料もあるし・・・
人工衛星もあるし、微小重力実験もあるし・・・。

 

(3)教育の支援もしています。

修学旅行の子達が来てくれたり、学校に出向いての講演やロケット教室もあるし、
プログラミング講座などの授業も提供しているし、来年からは専門学校であたらしい

学科も立ち上げます。そういえば、起業に関しての授業も大学でさせてもらっています。

(4)その他の開発もしています。

農業や漁業の省力化機械の開発もしていますし、医療研究用の機械の開発や、

トンネル工事などの機械や、冒険家の方が使うソリなども開発しています。

 

(5)その他のこともしています。

今年はコロナで延期になっちゃったけど、「ツクリテフェスタ」という、

手作り工芸品の展示即売会や、こちらもコロナの影響で今年はまだできていないけど、
北海道スポーツシューティングクラブという活動もしています。
 

さて。僕は何屋さんなのでしょう・・・・。

もちろん、こんなに多岐にわたることを、僕1人でできるわけがありません。

僕の仲間がいてくれるから、こんなに沢山のことを同時に進められます。
そしてそれらで関わった人達と、そこで得られた知識や経験が、また複雑に絡み合って、
さらにいろんなことができるようになっていきます。

 

僕は、石炭の町で生まれたから知っています。

「一生続く仕事はありません。どんな仕事も、生まれ、消えていきます。」

ですから、一生を保障するような就職も、職業も、資格もありません。

もちろん、人口が急激に増加していて、しかも、科学の発達が緩やかだった時代には、

たまたま、一生分(約30年〜50年間程度)続いた仕事はいくつかあったでしょう。
また、会社名は残ってるけど、業務内容はまるで違う、という企業もあります。
でも、そういう会社は、会社名を残すために、

大勢のリストラをしているケースが多いことを忘れてはいけないと思います。
(調べたらすぐにわかるよ。)

この世には、多くの職業があります。

でも僕は、人間の本当の仕事は、1つだろうと思っています。

それは「よりよくの追求」です。

もっとよくならないかな?

を追求することが、人間の唯一の仕事なんじゃないかなと思っています。

たとえば、リサイクル用のマグネットにしても、最初と同じものを作り続けていたら、

とっくに僕の会社は無くなっているでしょう。

時代も変わる、世界も変わる、それに対応して変化していくことが大事だと思います。

ですから、進路を考える時に、「どんな仕事をすればいいのかわからない・・・」で
迷っているのならば、「人間の本当の仕事はよりよくの追求だ!」と覚悟を決めて、
どんな仕事でもやってみればいいと思います。
そして、よりよくを追求するのです。

でも、注意が必要です。

まずは、思いついたアイデアは、実行前に、先輩や上司にどんどん話すべきです。

 

すると、話を聞いてくれた先輩や上司は、二通りの反応をします。
(1)あなたの思考を喜んで、いろんな情報を教えてくれる。

(2)「くだらん」「余計なこと考えるな」と、あなたの思考を否定や禁止する。

 

(1)の会社なら、あなたは輝くでしょう。人生は楽しくなります。会社も伸びます。

(2)の会社は、先は長くないです。

あなたが思いついたアイデアは、最初のうちは実現しません。

なぜなら、あなたの経験や情報が足りなくて、不正確な判断をしているからです。

でも、そんなときでも先輩や上司が、
「それはおもしろそうだね。じゃあ、この人に相談してみたら?」と教えてくれることがあります。

または、「ああ、それね。前に試したんだよ。そうしたら、これこれこういう理由でうまくいかなかったんだ。」と、教えてくれることもあります。

それは、あなたのアイデアの足りなかった部分を教えてくれただけで、

あなたの思考を否定するものではありません。
新しい情報を足して、もっと考えればいいだけです。

そして、科学は今日も発達しています。

だから、以前うまくいかなかったことも、うまくいかなかった理由が、

「当時の科学では無理だった」ならば、今ならできるかもしれません。

僕の知人で、ある素敵な飲食店を経営している人がいます。

その人曰く、「毎日、もうちょっとよくならないかな?って、あらゆる事で考えてるよ。挨拶から、水の出し方まで。毎日ちょっと工夫する。もちろん、マイナスになることもある。そのときは、もっといい方法を考えるんだ。」だそうです。そして、それこそがお客さんに伝わるのだそうです。

そういう人は、どんな仕事をしても、「いやー。君が来てくれて本当によかったよ。」と言ってもらえます。というか、そう言ってくれる会社を探すべきです。

もちろん、世の中には、「言われたことを、言われたとおりにやる」だけでいい、どころか、そうじゃないと困る、という仕事もあります。

でも、残念ながら、そういう仕事は、自動化されます。

そして、自動化できていないのなら、その会社は、自動化した会社に負けます。
それは、世界的な規模で展開されています。

少し前。中国が改革開放戦略を始めてから、

中国の農村部の、ものすごく安価で大量の労働力が世界の製造業の仕組みを変えてしまいました。

しかし、中国の生活水準があっという間に向上し、もはや、中国は「安価な労働力」を提供できなくなりました。

ですから、いま、世界は一気に「自動化」に突き進んでいます。
しかし、日本は、そこに乗り遅れています。

なぜなら、日本独特の、孫請け、ひ孫請けシステムのおかげで、

実際の作業をしている人たちや企業が、自動化への投資をする余裕が無かったからです。
そのため、日本は、いまだに安価な労働力を探し続けています。

 

会社を選ぶときに、待遇や福利厚生を重視するのもいいけれど、
その会社が、会社で働く仲間と、お客さんと、どんな関係を目指しているのか、
を調べた方がよっぽどいいです。
 

おそらく、コロナの影響で、今年と来年の就活は、かなり厳しいでしょう。
覚悟を決めて、通り一遍の就活をするのではなく、
企業というか、経営者の資質を見極めるような取材をした方がいいかもよ。

インターンシップは断られても、「大学のゼミの研究で」とか言えば、割と取材は協力してくれるはず。面接では絶対できないような辛辣な質問もし放題です。
 
日本は、第二次世界大戦の前には、航空産業が急成長していました。
しかし、戦後、日本は航空産業を禁止されます。
多くの人が仕事を失いました。絶望した人も多かったそうです。
しかしそこで、「飛行機じゃ無ければいいんでしょ?」と、
ロケット開発をはじめた航空機技術者がいました。
また、別な人は、航空機技術を活かして、超高速鉄道の開発に乗り出します。
また、別な人は・・・。
彼らは、「自分のやりたかった仕事ができなくなった!もうダメだ!」と絶望せず、
新しい仕事で「よりよく」を追求したのです。
そういう人達が、日本の復興を支えました。
 
どんな仕事も、生まれて、消えていきます。
だから、職業名には、あまりこだわる必要はないような気がします。
大事なのは、「よりよくを追求」することだと思います。
そうすれば、どんな場所でも輝きます。
と、僕は思っています。