人間が磨くべきは思考でしょう。 | 植松努のブログ

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講演でしゃべりきれないことを書きます。

かつての世界は、リーダーによる独裁体制が多かったです。世襲制も多かったです。

それは、人間1人1人の、知識や情報や経験の格差が大きかったからではないかなと、

僕は思っています。

本がなかった時代、知識や情報は、口述で伝えるしかありません。

知識や情報を持つ人から、いかにして教えてもらうかが重要です。

そしてそれは、血縁者だと、やりやすいです。

 

しかし、やがて、民主主義が生まれます。

それは、知識や情報の量が、個人のストレージに収まらないほど多くなったことに

理由があるのではないかと思っています。

そのため、複数の人間のストレージを使うことと、

知識や情報を、自分の外部に保存することが重要になります。

複数の人間の知恵と情報を融合させるためには、会議が重要になります。

また、決議の仕方も重要になります。

複数の人間を選出する方法も必要になります。

また、知識や情報を保存する方法として、

文字と粘土板も、かなりよかったと思いますが、なんたって場所をとります。

紙の発明は、おそらく、知識と情報のストレージとして、すごい意味があったと思います。

 

人類は、現在まで、

(1)複数の思考を混ぜ合わせて新しい思考を作る。

(2)知識や情報を保存する。

の二つを改善し続けてきたのではないかと思います。

 

で、おそらく、この流れは、現在も変わっていないと思います。

現代では、以前よりもさらに、生きていくために必要な知識と情報の量が増えています。

 

知識や情報の保存については、それこそ、記憶装置の改善はすさまじく、

フロッピー、MD、ZIP、HD、SSDと、記録量もアクセススピードも、

日々猛烈に改善されています。

また、データーの検索技術も改善されています。

この分野は、放っておいても、だれかがどんどん改善してくれます。

 

複数の思考を混ぜ合わせて新しい思考を作る、に関しては、

インターネットの普及によって、以前ならば、会議を開くだけでも大変だったのが、

容易に世界のどこの人とでもつながれるようになりました。

また、自動翻訳技術の発達によって、言語の壁もどんどんなくなってきています。

 

となると、技術で改善できない部分を磨くことが、これからの人類の進化のために、

ものすごく重要になる気がします。

 

それは「思考」です。
思考とは、「様々な知識や情報や経験を元にした未来の予測」がメインになってる気がします。
これが、「予測」だけであれば、AIの勝ちです。
AIは、莫大な過去情報を元に、過去情報の範囲内を内挿して結果を出すことができます。
その精度は、人間をはるかに超えています。これからもっとすごくなるでしょう。
しかし、AIは、過去情報を元に、まだ来ていない未来を予測するのは、とても苦手です。
その場合の精度は、人間とそんなに変わらないといわれています。
 
もうひとつ、思考に必要なものがあります。
それは、思考しようという意志です。
思考は疲れます。しかも、思考の結果が正しいとも限りません。
思考は、徒労に終わる可能性を持っています。
ですから、投資対効果のみを考えたら、思考はしない方がいいです。
過去情報の範囲内で、「確実にわかること=前例のあること」をやっている方が、
効率はよい、と言えます。
 
しかし、世界は変化しています。
その変化に気がついてから対応して間に合ううちは、思考しなくてもいいのですが、
変化が急な場合、変化の先を予測し、準備しておく必要があります。
その場合には、「思考」はとても重要になります。
 
思考は、未来を予測する行為です。変化に対応する際に必要になるものです。
ということは、思考の正反対は、前例踏襲です。
思考に「前例踏襲」を入れたとたんに、思考は無意味になるのかもしれません。
 
また、思考を前例踏襲から遠ざけるために重要なのが、
自己否定と既得権益の放棄です。
すなわち、過去の自分の思考や、現在の自分の利益を維持保護しようとする行為は、
変化に対応することとは、逆方向です。
(結果的に守れちゃった、はいいけど、守ることが目的になると危険です。)
 
そう考えると、現在の多くの会議は、思考の逆を行っているように見えます。
その原因は、「思考しない教育」を受けてきたからだと思います。
 
日本に蔓延しているピラミッド組織は、有史以前の独裁体制と同じです。
それは、民主主義の真逆です。
ピラミッド組織は、思考させずに命令に従わせることが目的の場合は、とても有効です。
だから、ピラミッド組織は、思考しない人間をつくり続けます。
このシステムが改善されない限り、日本は世界の変化に対応出来ないと思います。
 
植松電機は、ピラミッドから遠ざかる努力をしています。
しかし、新しく入ってくる若い人達の中でも、
部活経験でピラミッドをたたき込まれた人達は、
先輩に対して、しなくていい遠慮や忖度をしがちです。
教育の影響力は強いです。
ということは、改善の効果も強く表れるということですから、
やっぱり、教育の責任は重いと思います。
どうか、学校という仕組みの中で、独裁体制のピラミッドを教育しないで欲しいです。
民主主義を教えてあげてください。
(生徒の自由とか権利とか、異常に嫌がる先生も少なくないけどね。だからピラミッドになっちゃうんだけどね。)