パワハラやいじめの対処は、暴行罪や傷害罪だけでは十分ではない。 | 植松努のブログ

植松努のブログ

講演でしゃべりきれないことを書きます。

殺人事件があったとき、いつもスッキリしないのは、

「殺意」が、あったか、なかった、です。

 

たいていの犯人は、「殺意はなかった」といいます。

それだけで、なんだか罪が軽くなります。

首を絞めたけど、殺すつもりはなかった。

包丁で刺したけど、殺すつもりはなかった。

殺された方にしてみたら、たまったもんじゃありません。

 

自動車事故は、基本的に「過失」と考えられてきました。

でもそれが、「人を殺してしまう可能性を認識するような運転」の場合には、

少し罪が重くなるようになりましたが、

それでも、いつも、危険運転致死かどうかで、かなりごたごたしています。
 
神戸で、先生間のいじめが問題になっていますが、
加害側の先生の謝罪の内容が話題になっています。
そこには、「相手のためをおもって」「よかれとおもって」が表現されています。
 
パワハラをする人達も、たいていの場合、同じ事をいいます。
 
本心でそう思っているなら、危険な人です。
自分の罪を軽くするために嘘を言ってるなら、危険な人です。
どっちにしても、社会にとって危険な人ですから、
そう言う人達が、教育者や指導者という立場にいたらまずいです。
立場から外れた上で、何らかの特別な支援が必要です。
医学的な治療が必要なケースもあるでしょう。
 
基本的に、日本では、犯罪に対して、対処療法しかできません。
(予防的に拘束するようになったら超危険ですから。)
だから、罰を厳しくすることでしか、犯罪の発生を予防できません。
 
ですから、パワハラやいじめを暴行罪や傷害罪として考えた場合、対処療法しかできないから、
パワハラも、いじめも、厳罰化するしか、発生を予防できないです。
しかも、とても残念な事ですが、日本では、傷跡や後遺症が残るような怪我をしないと、
暴行や傷害と見なされないことが多いです。
言葉などで苦しめられて、心の病気になってしまった場合には、
「なんでもっと早く相談しなかったの」
「そのくらい、自分もされたけど、そんなの普通だよ」
などと言われてしまうこともあります。
おまけに、加害側が「相手のためを思って」というだけで、
罪が軽減されるようでは、パワハラもいじめも、無くなるわけがないです。
悲しすぎます。
パワハラやいじめを、暴行罪や傷害罪として考えるだけでは、
現在の状況を大きく変えることは難しいでしょう。
 
 
僕は、危険な人には、二種類あると思います。
(1)自信が無いので、自分以下をつくろうとする人
(2)他人が苦しんだり怯えたりする様子で快楽をおぼえる人
 
どちらも、そうなってしまった経緯があります。
どのような家庭環境だとそうなるのか?どういう教育を受けるとそうなるのか?
それもしっかり分析すべきです。
そうしないと、予防は不可能です。
 
残念ながら、現在は、問題行動を起こす子がいても
「あいつんちは、家庭に問題があるんだよねえ」
「どうしようもないんだよねえ」
だけで放置して、とりあえず卒業を待つ、という対処をしてる教育者も
少なくないです。
 
でも、以前に修学旅行に来ていた学校の中には、
めちゃくちゃだった学校を、1年ですっかり改善した学校もありました。
めちゃくちゃだったときは、1人の問題行動のある生徒を、
「あいつはしょうがないんだ」で放置した結果、
その子の尻馬にのって、ふざけたり反抗したりする子がどんどん増えていって
手がつけられなくなったそうです。
しかし、初期の段階で、問題行動のある子としっかり向き合って、
その子の悩みや苦しみを受け止めた結果、連鎖が起きなくなったのだそうです。
 
家庭の貧しさに原因があるなら、社会保障で改善できるかも。
父親や母親の暴力などが原因であるなら、児童相談所などが改善できるかも。
教育に原因があるなら、教育で改善できるかも。
心の働きに原因があるなら、医学的な治療ができるかも。
 
罰を与える対処療法も重要だけど、
治療と教育による予防療法も重要だと思います。
それって、健康も一緒か。
 
病気の予防は、1人1人の意識を高めることで改善されていきます。
そして、意識を高めるというのは、情報を伝える、ということです。
すなわち、教育です。
病気の予防が、教育によって改善されるならば、
犯罪の予防も、教育によって改善されるのでは?
 
神戸の学校では、子どものいじめも急増したとか。
前任の校長が隠蔽していたのが、今の校長になって明らかになっただけかな、
という気もしますが、
先生間の異常な関係が、子ども達の成長に悪影響を与えた可能性もあります。
教育には、人間の一生を変えてしまうほどの重さがあります。
犯罪者もつくれるのが教育です。
人を助ける人をつくれるのも教育です。
その重さを、教育で生活する人達には、もっと真剣に考えて欲しいです。
ていうか、文科省が考えるべきか?
いえいえ、いじめやパワハラなどは、厚生労働省の・・・てかんじ?
縦割り行政・・・・。