自分の考えたことを実現するには、必要なプロセスがある。 | 植松努のブログ

植松努のブログ

講演でしゃべりきれないことを書きます。

僕は、政治家にはなりたいと思いません。

なぜなら、代表選挙制度における政治家とは、みんなの意見を代弁する存在です。

そして、みんなの意見を平均化すると、ゼロになります。

それでは、アクションを起こせません。

 

だから、一般的には、強い意見を持つ人を、その意見に賛同する人が押し立てる、

という形になります。

でも、選んだ代表者の意見が、選ばれたあとで変わってしまうことがあります。

そうなったら、代表選挙制の意味が失われます。

 
時々、「政治家になって、地域に仕事を引っ張ってくる」なんて言う人もいますが、
それって、権力の私的流用じゃないの。
僕が高校生の頃に、ある地元の政治家が、
「この町は、星の故郷なのだから、天文台を誘致します。」と言いました。
僕は地学部の部長をしていましたから、僕の故郷は晴天率が低く、天体観測には
不向きなことを知っていましたから、「この政治家は、何を言い出すのだ?」と思いました。
もしも、僕の故郷に天文台なんて作ったら、それは国費をムダにすることになります。
でも、その政治家の発言を喜んでいる人達も沢山いました。主に土建屋さん。
結果的には、僕の故郷には天文台はできませんでした。よかった。
 
僕は、自分の考えたことを実現するためには、
自分の力と、自分の責任でやるのが一番だと思っています。
だから僕は、僕のやりたいことに関して、出資をお願いしないです。
株式も上場しないです。
クラウドファゥンディングもしません。
時々、まだ、影も形もないアイデアだけでお金を集めて起業する人がいますが、
僕はそういうことはできません。
それは、ラーメンを作ったこともなく、ラーメンを売ったこともない人が、
みんなからお金を集めてラーメン屋を出店するようなものです。
そんな無責任なこと、できないです。
(たとえにラーメンを使ったのは、ものすごく起業数が多く、廃業数も多いからです。僕はラーメンは大好きです。名古屋のラーメン「福」と、北海道の「味の時計台」が大好き。)
 
以前、僕らのロケットに、搭載物が乗ったことがありました。
北海道の大学の作った摸擬衛星です。
でもその日はものすごく寒くて、制御装置の一部が低温によって昨日しなくなり、
ロケットはパラシュートの展開も、模擬衛星の放出もできず、搭載した模擬衛星ごと
落下してしまい、模擬衛星も粉々になりました。
それは、本当に申し訳ないことでしたが、そのあとで僕は知りました。
なんと、その模擬衛星の搭載は、ビジネスとして、対価を受け取っていたのです。
もちろん、植松電機がお金を受け取ったのではないです。
当時、勝手にその商談を進めた人がいたのです。そして、民間初の商業打ちあげ、などとコマーシャルしていたのです。僕はそれを全く知りませんでした。
僕が知っていたら、絶対にそんなことできません。
なぜなら、その頃の僕らのロケットは、まだ生まれたばかりで、開発途中だったからです。
100%確実に機能が保障できないもので、商売なんてできません。
 
自分の力でやると、できることには限りがあります。
でも、それは実力です。
それを積み重ねていくと、やがて仕事になります。
でも最近、そのプロセスをすっ飛ばそうとする人が多すぎる気がします。
そういう人は「金で買う」人達です。
施設も、設備も、人も、技術も、お金で買えると思ってる人達です。
でもお金で買えるのは、誰かがすでに提供してくれるサービスに過ぎません。
そこには、奇跡は起きないです。
それは、自分より金持ちに、必ず負けます。
負けがわかってる勝負をするのは、ビジネスマンではありません。
 
小さいことしか出来ないけど、やれば、仲間が見つかります。
その仲間は、自分とは同じ意見ではありません。自分の意志を持っています。
でも、なんとなく、向いてる方向は似てるかな、という仲間です。
そういう仲間が、それぞれの努力をして、それが合わさって、大きな力になっていきます。
そういう社会がいいなあ、と僕は思っています。