僕は、いろんな学校に行きます。
そこで、体育館の屋根の構造を見るのが好きです。
なぜなら、古い体育館の屋根は、ものすごく美しい構造が多いからです。
無数のパイプやアングルが、複雑に組み合わせられた構造です。
そこに僕は、設計者の、美しさと、軽量化の努力を感じます。
しかし、最近の体育館はつまらないです。
屋根を支えるのは、高さ1mを超えるような大きな鋼の一体物。
端から端まで、同じ形。
こりゃ、重いわ。
ということで、その構造物を支えるための柱もごんぶと。
この世のたいていの物の値段は、材質が同じならば、重さに比例しています。
ということは、こういう新しい建物は、ものすごく重くて、ものすごく高価なはず。
それは、事実です。
で、なんでこんなことになってんの?と思ったら、
どうやら、複雑な構造物を設計すると、確認申請が通るのがいつになるのかわからないのだそうです。
要するに、計算が面倒な物は出してくれるな。だそうです。
建築偽装の一件から、その傾向は一気に強まったそうです。
コンピューターの性能が向上し、機械加工の精度も向上し、
複雑な構造物の設計製作が容易になったはずが、
行政の手間を減らしたいから、構造を簡単にしなさい。
だとしたら、これは、時代に完全に逆行しているとしか思えないです。
似たようなケースとして、
以前、大学生が人工衛星の機体の設計をしていました。
キューブサットですから、1辺が20センチほどの立方体です。
それを、30センチの角材から、削り出してつくると言われました。
おそらく、全体の90%を削って捨てることになります。
「なんで?アングル組み合わせたらだめなの?」と尋ねたら、
「アングル接合部の熱伝達の計算ができないので、ムクじゃないといけません。」だそうです。
いやいや、小さい物なんだから、実際につくって、
実際に熱伝達測定したらいいんじゃない?
でも、その意見は通用しませんでした。
数値解析を優先して、ものすごく加工費がかかる設計になってしまいました。
しかし、本当は、数値解析よりも、実物測定の方がリアルです。
実際、航空機開発では数値解析を沢山使いますが、
基本的には、必ず実物を使った試験結果と付き合わせて、
実物試験の回数を減らすための補完として使われています。
本末転倒。という言葉が頭に浮かびます。
手段と目的が間違ってる気がします。
座学オンリーの教育のたまもののような気がします。
これでは、科学の発達のしようがないです。
そういう状況を打破するためにも、
ものづくりと研究開発をセットにした教育システムが必要な気がします。
そこには、技術や科学は、社会や人の為にあるのだ、という理念教育も必須です。
幸い、いま、それに取り組もうとしている学校との御縁もできました。
よいカリキュラムがつくれたらいいなと思います。