Roll Over Corona(2)Hold On | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

今、日本は、妙な空気に支配されているような気がします。ほぼ無人の街と化した新宿や渋谷の大型ビジョンで感染拡大防止を呼び掛けるあの人こそ、東京中に感染を広げてしまったA級戦犯のように思えてしょうがないのですが、世間での受け止められ方はどうも違うようで、むしろぐんぐんと株を上げているというのは、忘れやすい国民性ゆえなのか、強そうなリーダーを無条件で支持してしまう農耕民族気質ゆえなのか、今ひとつわからないところなのです。


ジョン・レノンがビートルズ解散後に発表したソロアルバム「ジョンの魂」は、非常に重たいアルバムです。このアルバムでジョンは、「キリストもブッダも ヒトラーもケネディも エルヴィス、ディラン、そしてビートルズも信じない」と言い切り、これからは自分自身とヨーコさんだけを拠り所に生きていくことを世界中のビートルズファンに宣言しています。どこまでも自分自身であり続けること、空気やムードに流されずに生きていくことは、年を重ねるほどしんどく、なかなかに大変なことではあるのですが、特に今のような時代にあっては、そのような生き方こそが唯一無二のプロテストであり、プロテクトでもあることを、このアルバムは教えてくれるようです。

「Hold On」はアルバム2曲目に収録されたシンプルながらも大変美しいメロディを持った小曲で、「しっかりジョン」という絶妙なセンスの邦題でも知られています。ジョンは、この曲の1番で、自らとヨーコを鼓舞し、2番で、世界中の孤立した人たちに向けてメッセージを送ります。それは次のような――。

 がんばれ世界 もう一息持ちこたえて・・・
 やがて風向きは変わり
 光も射してくる

 ひとりぼっちは
 かけがえのないあなたであること
 だれも辿り着けなかった場所に
 あなたの旗を立てること

 だから もう一息持ちこたえて・・・

ぼくは、この曲を聴くといつも、ジョンに「しっかりしろよ」と背中を押された気分になるのです。このひどい時代にあっても、空気に流されず、とにかく生き抜きましょう。