『果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語ー㉞ー』にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語

ー㉞ー

 

 

 

 

 

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 リーベリは洞窟の入口に腰掛けて南へ続く一本道を何日も眺めていました。道の両側には疎らな木々が生え、徐々に木々の密度が高くなり林を形成しています。その他には殺風景な砂礫が横たわっているばかりです。
 リューシーはそのうちミミに愛想を尽かして、自分の元に戻ってくる筈……いいえ、そうは思わないまでも、一度くらいは此処へ戻ってくる筈……そうリーベリは考えていましたけれど、何日経っても誰ひとりこの洞窟へやって来る人間はいないのでした。
 リューシーが戻りたがっているのに、ミミがそれを妨害しているのではないか。
 リューシーはあたしのものなのに。
 何処までもあたしから大切な人を奪わないと、気が済まないようね。
 こうなったら力ずくでもリューシーを取り戻さないといけない。
 空からストレイ・シープとその背中に乗ったジョーニーが舞い降りました。ジョーニーはリーベリに近付いて来ました。ジョーニーは両手に駕籠を提げています。
「ご下命のものを採取して来ました」
「……ご苦労様」
 駕籠の中に入っているのは、二十センチ以上は優にあろうかと思われる岩のように頑丈そうな体つき、大きな口、太い手足を持った、黄色い体色の三匹のオオヒキガエルでした。
「全部で九匹摑まえて来ました。こんなもんで良ろしかったでしょうか?」
 ストレイ・シープも首から駕籠を提げていて、みっつの駕籠に三匹ずつ捕獲して来たようでした。
「ありがと」
 オオヒキガエルが雌を呼んでいる時に出す、トリルのかかった欲求不満そうな声で鳴きました。

 

 リーベリはオオヒキガエルの入った駕籠を持って洞窟の奥の部屋に戻ると、壺の中に三種類の薬草を入れて火をかけてぐつぐつ煮込みました。そうしてそれがドロドロに溶けて何とも云えない臭いを放ちはじめた頃、自分の指をナイフで傷つけて壺の中に血を数滴垂らし、入念に混ぜ合わせました。
 一方、薬草を煮込む間にオオヒキガエルを台の上で仰向けにして両手両足を木片で打ち込み、固定しておきました。リーベリはナイフでオオヒキガエルの足の指を一本切り落とし、小箱の中から取り出してきた、ストレイ・シープよりも小さいサイズのカエルのぬいぐるみの足先に、べとべとする液体でくっつけました。オオヒキガエルの足から緑色の体液がこぼれ落ちています。
 リーベリは杓子で薬草をどろどろに混ぜ合わせた物を掬って、オオヒキガエルにまんべんなく塗りつけると、呪文を唱えながら右掌をオオヒキガエルに向けていました。十分ほどもそのまま呪文を唱え続けていると、蝋燭の焔に照らされた、オオヒキガエルの影が大きく揺らぎ、カエルのぬいぐるみが何倍もの大きさに膨れあがり、それと同時に、仰向けに打ち付けられていたオオヒキガエルが己を固定化していた木片を吹き飛ばして、ぬいぐるみと同じく何倍もの大きさに巨大化しました。
 オオヒキガエルは二足歩行でリーベリに近付くと、迫力のある、トリルがかった声で鳴きました。
 額に汗を浮かべたリーベリが、「あとで餌をあげるから、外で待っていなさい」と云うと、人間のおとなほどの背丈に巨大化したオオヒキガエルは、「ゲロゲロ」と答えて、扉の外へ出て気をつけをして待っています。
 そのように、リーベリは九匹のカエルたちに次々と魔法をかけていったのです。

 

 

 

 

ー㉟ーにつづく

 

 

 

 

 

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