果てしなく暗い闇と黄金にかがやく満月の物語
ー⑲ー
にゃんく
屋根の上に、鳥が羽音をさせて止まる音が聞こえて来ました。ややあって、明り取りからストレイ・シープが這入って来ました。ストレイ・シープはスキップを踏むように大きな体を二、三度ぴょんぴょん飛び跳ねさせながら云いました。「まだ目を醒ましませんか?」
「でも、以前に比べると、だいぶ顔色も良くなってきたわ」
「じゃあ、目が醒めるのも、もうじきですかね」
「そうね。でも、焦らなくても大丈夫よ。元気になるまで、ゆっくり寝ていていいんだからね」リーベリはそう云って愛おしそうに男の子の顔を指で触れました。男の子のお腹が、上がったり下がったりしています。痩せ細っていた顔も、ちょっぴりふっくらしたように見えます。
リーベリは立ち上がってカサカサと何かが這い回る籠の蓋を開けて、明り取りの下の床に置きました。「ごめんね。ご飯をあげるのを忘れていたわね」
籠の中には、何匹もの昆虫が動き回っていました。
「わはっ。ご馳走だ!」と云いながらストレイ・シープは夢中になって逃げ惑う昆虫たちを啄んでいました。
リーベリは男の子の傍に戻って来て、寝顔を飽きずに眺めていました。
ジョーニーはガラクタに背をもたせかけて、寝たふりをしながら、薄目を明けてその様子をしばらく見ていましたが、リーベリと視線が合いそうになると慌てて目を閉じました。
分厚い入道雲が西の空に居座っていました。地面に乾燥した亀裂が幾つも走っています。干涸らびた蚯蚓が水を求めるように何匹も地表に這い出した姿のまま死んでいます。ここ最近、雨の降らない日が何日か続いていました。