『大人になるということ』ショートショート にゃんく | 『にゃんころがり新聞』

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大人になるということ

 

 

にゃんく

 

 

 

 子供のころ、近所の子供たちが集まって、賭けのゲームをした。
 ちょうどお正月で、みんな退屈していたし、賭けとなれば、かなり盛り上がった。
 何回か賭けをした。
 子供たちは8人くらいはいただろうか。
 その結果、いちばん勝ったのは、ぼくだった。
 ひとりの負けの額はたいした額ではなかったかもしれないけれど、8人分が集まれば、そのころ集めていたプラモデル10体くらいは買える額になった。

 

 でも、そのときは「子供」だった。だから、「そのお金は払われへんな、大人になったらみんな必ずにゃんくに払おうな」という話になった。
「絶対ぜったいやで。」とぼくは言った。「忘れたら、あかんで。」
「絶対忘れへん」
「忘れへんって誓う」
「忘れたら、針千本飲むわ」
 などとみんな約束して、その場は解散となった。
 そして大人になった今、その額を払ったやつは誰もいない。

 

 みんな忘れた顔をして生きている。
 でもこれだけは確実に言える。あんなに何度も約束したのだから、みんな絶対覚えているのだ。
 覚えているのに、忘れた顔をして、生きている。
  大人になるということは、こういうことなのかもしれない。

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

執筆者紹介

 

にゃんく

うれしい時。悲しい時。食事をしている時。

いつだって、口がちょんがっている、にゃんころがり新聞の編集長です。

 

 

 

 

 

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