『アリアとカレン』~nekonooo56作のショートストーリー | 『にゃんころがり新聞』

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アリアとカレン

 

文/nekonooo56

イラスト/よりすぐり

 

 

 


私はアリア、田舎の小さな村に産まれました。辺りは畑と森林、そして、小さな村には似合わないほどの美しく大きな教会がありました。日曜日になると礼拝をしに他の村からも遠い村からも人が集まってきます。私たち家族も必ずその礼拝に行っていました。
私は一人っ子で父は農夫、母はその手伝いをしていました。父も母も私を宝物だと言って大切に優しく育ててくれていました。
しかし、私が7歳の時に父と母は嵐の夜、私を家に残し、畑を見に出たところ水害による事故で亡くなりました・・・
そして、私は教会にある修道院の中の孤児院にひきとられました。私はそれがとても嫌でした。なぜなら神を信じられなかったからです。父と母は献身的なクリスチャンだったのに・・・毎日の祈りも礼拝もかかさなかったのに・・・どうして神は父と母を奪ったのか・・・という気持ちでいっぱいだったからです。しかし、抵抗するも幼かった私は大人達のいいなりになるしかありませんでした・・・
孤児院での私は酷く悪い子でした。お世話をしてくれるシスターたちの言う事も聞かず、与えられた部屋に独り閉じこもったままでした。そんなおり、私と同じ歳のカレンと出会ったのです。
「今日から、この部屋で一緒に暮らしてもらうカレンよ」
と、シスターが部屋に連れてきたのです。私がここに来て5日目のことでした。
「2人とも挨拶くらいしなさい」
と、シスターが言うものの私達は無言で頭を下げました。そして、シスターはその子を私の部屋に残して行ってしまいました。
すると、シスターが行ってしまうと同時にその子は床に伏せ泣き出したのです。
「・・・・・・」
私は何も言えず、その子は泣き続けました。
1時間経ち、2時間経ち・・・私はいつまでも泣き止まない、その子に困り、強く言いました。
「私だって、私だって悲しいわよ!パパもママも死んじゃったんだから!」
するとその子は泣きながら顔をあげ言いました。
〈私だって、同じよ!〉
と・・・
「えっ・・・どうして?」
〈この前の嵐で・・・交通事故で・・・〉
驚いたことに、その子も私と同じ境遇だったのです。
「・・・私もあの嵐で・・・」
私は自然にその子に近づいていました。そして、自然に私達は抱き合い、一緒になって泣きました。同じ境遇だと、私だけじゃないんだと、お互い悲しみの中で安堵したのです。
それから私達はお互いの事を話しました。
その子、彼女の名前はカレン。私と同じ歳、私と同じ一人っ子、隣の村で、カレンはあの嵐の夜から、ここに来るまで1人で両親が亡くなったことを知らず家に居たそうです。そして、同じく両親は献身的なクリスチャンで、日曜日にはこの教会に通っていたそうです。
私達が仲良くなるのに時間はかかりませんでした。まるで双子の姉妹のように仲良くなったのです。そして、時は経ち私達はシスター達の言う事も守り、シスター達の手伝いもし、良い子であるようにつとめました。
お互いの夢のために・・・
その夢とは16歳になったらここから一緒に出ようという夢でした。そんな話を夜、消灯後、窓辺で星を見ながら話しました。
「ねぇカレン、ここを出たら、どうしたい?」
〈私は1度、村に戻って、それから1番好きな思い出の旅行で行った海のある街に住みたいの、アリアは?何も無かったら一緒に暮らさない?〉
「海が見える街かぁ・・・いいね。でも、私はうーんと都会に住みたいの」
〈そっか、じゃあ一緒に出ても別々かぁ・・・〉
「住むところが違っても、私達はずーっと姉妹よ、それにいつでも会えるわよ」
〈うん、そうだね〉
「後少し、後3年・・・」
〈うん、もう少しだね・・・〉


そうして私達の時間は早くあっという間に過ぎ16歳になりました。
「カレン!誕生日おめでとう!やっとだね」〈うん、うアリア、待っててくれて、ありがとう〉
私は5月生まれ、カレンは9月生まれでした。
「一緒にって、ずっと言ってきたじゃない、明日、言いに行って一緒に出ようね」
〈うん・・・〉
そうして私達は一緒に教会を出ました。
「みんな、びっくりしてたね」
〈良いシスターになると思ってたって言われたね・・・〉
「この夢の為に頑張ってたのにね」
〈うん〉
「カレン、隣の村まで一緒に行こうか?」
〈ううん、予定通りここで・・・〉
「わかった、じゃあここで・・・」
隣の村までのバス停と私が目指す街のバス停は、違う道にあったのです。
〈アリア・・・〉
カレンは泣きながら私に抱きつきました。
「カレン・・・泣かないって約束したのに・・・」
私も涙がこぼれました。
〈うん・・・ごめん・・・〉
「こうしてると、初めて会った時を思い出すね・・・」
〈うん・・・アリアに出会えて良かった〉
「私もよ、カレン・・・そろそろ行かなくっちゃ、私が乗るバスは1日3回しか来ないんだから」
〈うん・・・〉
「じゃぁ行くわよ、手紙忘れないでね」
手紙はお互い、教会に送るように約束をしていました。どこにいてもシスターがお互いの住所に送りなおしてくれるように頼んだのです。
〈うん、じゃあね〉
「うん元気でねカレン」
そうして私達は別々の道を歩みました。お互いの幸せを祈りながら・・・

 

それから時は経ち、カレンは海のある街のパン屋で働いていて元気に過ごしていました。
しかし・・・
私は都会でレストランで働くも都会の物価の高さで、それだけでは暮らして行けず、夜に酒場で働くことになり3年が経ち、カレンからの手紙の返事も出さなくなっていました。


そして、カレンからの手紙も途絶えました。5年ほど経った頃、私は悪い男にだまされ、さらに落ちぶれていました。そして、色んなことがあり、私は7年が経った頃、自らの命を断とうと思うほどに・・・
その時、やっと封も開けていないカレンの手紙の山に手を伸ばし、今更ながら順に読んだのです。そこには私を心配する内容から、カレンが住む街で一緒にまた暮らそと・・・
そして、最後に来た手紙には
「私はあの教会に戻り、アリアの無事を祈りながら、いつまでも待っています」
と、あったのです。それが4年前の手紙でした。私は何もかも投げ出して、身ひとつであの生まれ育った教会へと最終のバスで向かいました。
村は何もかも、あの頃と変わっていませんでした。そして、あの教会も・・・
教会は夕日で美しく輝いていました。私は立ちすくみ
「今更・・・私なんかが来ていい所じゃない・・・」
と泣きながら、背を向けて、もう朝まで来ないバス停に向かおうとした、その時・・・
〈アリアー!〉
と、後ろの教会からカレンの声が聞こえたのです。私は立ち止まり、ゆっくり振り向きました。
「カレン・・・」
シスターの格好をしたカレンが走って来るのが見えました。そして、息を切らしながら私の前に立ちました。
「カレン・・・私・・・」
すると、カレンは優しく私に抱きつきました。私は何も言えず泣き崩れました。初めて会ったあの時のように・・・
〈おかえりアリア・・・もう離さないからね・・・〉
私は初めて心から神に感謝しました。

 

 

(おしまい)

 

 

 

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