『LA心中』羽根田康美・・・70点 | 『にゃんころがり新聞』

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『LA心中』羽根田康美・・・70点


<あらすじ>


 アメリカ在住のボクはベーグル屋で若い女がおしゃべりしているのを聞いて、イチコさんが死んだのではないかと推測する。イチコさんとは数ヶ月の交際しかなかったが、関係者から話を聞いていくうちに、イチコさんはゴルフを運転中に交通事故で死んでいたことが分かる。間もなくアメリカ人の彼女にプロポーズする状況の中、ボクはイチコさんのことの思い出を回想する。



言葉の使い方に時折鋭さが垣間見えます。見慣れない言葉の組み合わせもあり、それはそれでセンスがあると思います。


 イチコさんが心中したのではないか。イチコさんが好きだった男にお金を貸していたり、イチコさんの知り合いが放火で死んでいるかもしれなかったり、背後に物語がありそうだけど、それら物語が絡み合ってカタルシスがあったりということはありません。

 一人の日本人の中年女が死んでいった、その女についてボクはいろいろ回想しているのですが、その女の死が現実のボクの生活に何らかの変化を与えるわけではない。もう少し、物語の展開なりがあれば良かったかもしれない。

 中年女とボクとの触れあいみたいなものはけっこう描かれていたのだが、読後の印象は物足りなかったです。


(第88回文学界新人賞受賞作。1999年)