『オアシス』生田沙代・・・84点 | 『にゃんころがり新聞』

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『オアシス』生田沙代(河出書房新社)・・・84点



<あらすじ>


 メイコは亡くなった友人の家から自転車をかっぱらって乗っていたが、ある日、その自転車が盗まれる。

 メイコの母は、夫が単身赴任した日から「発病」する。何も家事をしなくなるという「病気」にかかったのだ。

 メイコと姉のサキは「病気」の母を重荷に感じながらも二人で家事をしながら生活している。

 メイコは母親から発散される負のパワーに負けないように、盗まれた自転車を探しつつ、家を出るためのお金をためているが、なかなか貯まらない。

 ある日、三年間単身赴任していた父が東京に戻ってくることになった。

 しかし、母は「トンずら」をして家からいなくなる。

 メイコが姉たちに新しい自転車を買ってもらう。


   *


 こんな感じのお話です。


 最初は、また、スケールのちいちゃい小説やなあ、と思ってました。


 けど、今、最後まで読んでみた感想はまた違っていました。


 この小説の作者は女性ですが、女性の書く小説は、また男性とは違った趣があります。


 男性の書く小説は、主張がどこかはっきりしているというか、起承転結とか、テーマがかっちりしているような気がします。


 それに対して、女性の書く小説は、ふんわりしているというか、特に主張とか、物語の起承転結がはっきりしていない。小説を包む雰囲気がもやっとしてます。それでいて、読後感は、独特のものがあります。


 単身赴任で夫がいなくなった母親は、急に病気にでもなったかのように家事はしなくなる。

 それでいて、娘たちにはいちいち口やかましく注文してきます。


 単身赴任するのは、父親からすれば会社から命令されているのだから仕方ないのに、母はそれを自分から逃げたみたいに解釈をしている。

 こういう心理なんかも、女性にありがちで、男性にはちょっと描けないかもしれない、と思わせます。

 男性側からすれば、こんな妻、怖いでしょうね。


(2003年第40回文藝賞受賞作。)