『風化する女』木村紅美・・・72点
<要約>
43歳でれい子さんは突然死んでしまった。〈私〉とれい子さんはどちらも会社で目立たない存在だった。人が死ぬとして、いったいどれだけの人に気づかれるのだろう?
〈私〉はれい子さんが行くはずだった北海道に行き、死んでも誰からも気付かれないれい子さんが好きだった人の家に、れい子さんとその男が二人で写っている写真とれい子さんの口紅を投函してくる。まるで気づかれないことに抗議でもするかのように。
回想シーンをいれるのがうまいです。
例えば、誰かと話している最中にふっと死んだ人との会話をいれたりしてその人のことを思い出させたり。
文体はさらっとしています。読みやすい。けれど、誰でも書けるような文章でもあります。
うまく構成をしています。
起承転結のオチが最後の口紅の投函で、人は死んでもどれだけの人に気付かれるのだろうというテーマに対して主人公なりの反逆を試みる形になっており、構成はうまくまとめています。
が、こじんまりとしすぎているような気がします。
すごい作品を書いてやろうという野心が見えない。
小さくまとめて、手堅く賞をもらったという感じ。