『介護入門』モブ・ノリオ・・・81点
空想だけでこんなに書けないと思う。作者は実際に介護の経験があるのでしょう。
私たちが見慣れない介護の現場に光を当てた文学です。その生々しい現実を私たちの前に再現してくれます。
語り口調は若者の軽い感じでふざけているようにも見えますが、祖母を介護するその姿勢は真摯で重いものがあります。
介護する「俺」と被介護者の祖母とは血がつながっていませんが、介護を放棄する肉親以上に彼らの介護の形は機械的でなく温かさに満ちています。それが感動的といえます。
語り口調はすこし変わっています。地の文は読みづらくもあります。しかし、作者のオリジナリティが溢れる文体となっています。
ただ、島田雅彦さんの選評にもあったように、私も読んでみて思ったのですが、物語の起伏が少ない。感動の渦を巻き起こすドラマがない。そこを工夫すれば、もっとよかったと思う。
<要約>
玄関先で転び頭蓋骨を割った祖母は要介護者。「俺」はマリファナを吸いながら祖母の介護をする日々。