先週の平日のある日、旦那Dが珍しくマンハッタンに出てきたので、久々に映画デートしました。普段は私が映画をチョイスするのですが、今回はDが興味がある映画があるからと選んでくれました。
彼が選んだ映画とは、アイスランド映画「Touch(原題Snerting)」。渋いチョイスだなと思ったら、舞台はロンドンと日本で、特に興味を持ったのが以前訪問したことのある瀬戸内の街が舞台になっているからだということでした。映画好きな私はマンハッタンで上映される日本関係の作品は常に最新情報にアップデートしているのですが、この作品はノーマークでDが見つけなければ見逃していたところでした。
まず、ネタバレにならない程度で簡単なストーリー紹介。アイスランドでレストランを営むクリストファーは、妻に先だたれ、さらに自分の記憶が減退しています。医者に、記憶がしっかりしているうちに人生で整理することがあれば整理することを提案されます。そして、50年前にロンドンで密かに通じ合い、そして突然彼の前から姿を消した日本人女性ミコを探し出すことを誓います。そして、彼女が広島県にいることを探し当て、コロナの波が世界を襲い始める最中に日本に向かいます。物語は現在のアイスランドと日本、そして50年前のロンドンのシーンを行き来します。日本公開が決まったようなので、あとは皆さんのお楽しみのためこれ以上は書きませんが、結論から言って、観て良かったです。久々に涙腺が緩くなる映画でした。小説を元にしただけあり物語がしっかりしていて安定感があるストーリー、そして、クリストファーとミコが50年の時を超えて再会するシーンも、淡々と描かれていて現実感があり惹き込まれます。
主演でクリストファーを演じているのはアイスランドの国民的人気者Egill Ólafssonです。本業はシンガーソングライターだそうですが、控えめの演技が物語の情緒をより引き立たせます。老人がギャーギャー喚き立てたり、阿鼻叫喚とばかりに号泣したりするシーンが多いこういう路線のアメリカ映画とは対照的です。そして、監督はアイスランド人のBaltasar Kormákur氏。そして、若い頃のクリストファーを演じるのは、監督の息子であるPalmi Kormakurです。アイスランド映画を見るのは初めてですが、感覚が日本映画に似ていると思いました。ただ一方、日本映画だったらこういうふうには描かないだろうなというようなシーンもありそんな描写の違いも面白かったです。在アイスランド日本大使館では、この映画の上映を記念して俳優さんや監督を囲んだレセプションが開かれたようです。荒涼としたアイスランドの風景と切ない物語がうまく絡み合い、アイスランドに行ってみたいと思うようになりました。
Egill Ólafsson氏。映画とは別人のような歌手としての姿
監督のBaltasar Kormákur氏。イケオジじゃん。
とてもいい映画だと思いましたが、一方で日本人俳優のキャスティングになんとも言えない違和感?を感じました。(ここから先は私の主観が入るので、旧ジャニーズ好きな方や工藤静香が好きな方は、読まれないほうがいいと思います。)
50年前、若かりし頃のクリストファーがミコと出会うロンドンのシーン。ミコが出てきた時は瑞々しい感じのバイリンガルの若い女優さんかなと思って見ていたのですが、誰かに似てる。誰だろう?とストーリー自体に入っていけない時間が続きました。そう、なんとヒロインを演じているのは木村拓哉と工藤静香の娘、Koki.でした。演技自体はまあまあちゃんとやってる印象でしたが、やはりどうしても親の顔が浮かんできてしまうのが非常に残念。特に、所々でKoki.が「あすなろ白書」の頃のキムタクみたいに見えてしまいました。親の七光りどころか、その倍の十四光り、ゴリ押しなどと叩かれてるKoki.。英語ができるのは武器だし、泣くところもちゃんと泣いて、ベッドシーンにも挑戦してるのですが、やはり、女優としてのオーラみたいなものは全く感じられませんでした。戦後の混乱期に生きた日本女性の凛とした感じは全く出てないし、そもそも表情や視線だけで雰囲気を醸し出せるような女優ではない事は断言できます。
少なくとも私には、アメリカにあるマッサージパーラーやネイルサロンにいる若いアジア人みたいに見えてしまうシーンがありました。アメリカのネット映画レビュー見てたら、以前このブログでも取り上げた「Past Lives」と作品的に同格に扱うような批評がありましたが、ヒロインの女優の佇まいには残念ながら大きな差がありました。アメリカの映画やTVドラマでは日系日本人含め日本のバックグラウンドを持った女優の活躍の場が広がってはいますが、例えば「SHOGUN(将軍)」で真田広之相手にヒロイン・戸田まりこを演じたニュージーランド生まれの日系人アンナ・サワイみたいな芯の強さとか秘めた目力も、Koki.には全く期待できないない気がしました。
Kikiともっくん、苦労してる海外日本人という設定だが、、。
Koki.の父親でロンドンで日本料理店を営む高橋は本木雅弘(もっくん)が演じています。ただ、もっくんはカッコ良すぎて所々違和感。私も海外在住人生の半分くらいになりますが、NYでも今まで住んだ場所でも、自分で商売立ち上げて現地人相手になんとか成功してきた日本人男性を何人も見てきました。みなさん苦労して精魂枯れ果ててる燻し銀のような雰囲気の方が多いです。もっくんは体格がいいからなのか、そういう裏ぶれた感じが出てなくて、戦後を生き抜いた苦労人というよりも、クリエイティブな料理人というようなモダンな雰囲気、そして何より男としての現役感も出ちゃってる気がしました。
そしてさらにキャスティングでダメ出しをしてしまうと、ロンドンでの突然の別れから50年後、クリストファーが広島に住むみこを訪問するシーン。おばあちゃんになったKoki.を誰が演じるんだろう、というのが気になりました。もしかして工藤静香が出てくるのか(老け顔だからそのままでも70歳を演じられそう)、もしくはキムタクが女装でもして出てくるのか(キムタクの方がKoki.にもっと似てる)、なんてくだらない夢想しながら観ていましたが、なんとなんと、Koki.の50年後の姿を演じたのは、映画のキャスティングを本業とする奈良橋陽子さんでした。映画好きな方ならご存知かもしれませんが、ハリウッド映画で日本人俳優が必要な時にキャスティングを提案されたりしている映画界の重鎮で、トムクルーズとかキアヌリーブスの映画などで日本人の配役に参画しています。綺麗な方ですし、たまにご自身でも映画に女優として出演してましたが、Koki.とは似てもにつかない顔つきや骨格なので、この映画で奈良橋さん自身が出てくることにすごい違和感を感じました。もしや、工藤がKoki.のイメージを壊さないため老人になったミコの役を演じる女優さん選びにもしゃしゃり出てきて、誰も演じたがらないので、結局奈良橋さん自身で演じたのかな、なんて非常に穿った見方をしてしまいます。
Kokiの映画祭受賞の行方はいかに。ところでこの映画ハリウッド制作ではありません。
ということで、後半はちょっとネガティブな批評をしてしまいましたが、正直、ヒロインはKoki.じゃない女優さん使った方が、もっと味わい深い映画になったのではないかなと惜しい気がします。特に日本人の視聴者にとっては、私のようにキムタクや工藤の顔がチラついてしまうと思う方が多いと思います。
映画雑誌のインタビューで、Kormákur監督はKoki.について、オーディションで選んだので、両親が日本の芸能界の重鎮という華やかな出自は出演オファーするまで知らなかった、と言っていました。歯の浮くような、と思ってしまいます。自分の息子を出演させている時点で、縁故主義的なキャスティングをしている監督であることは明らか。世間で言われてるような工藤のKoki.ゴリ押し作戦の成果なのか、何らかの忖度か日本公開に向けた利害関係が絡んでKoki.に白羽の矢がたったのでは、とどうしても勘繰ってしまいます。
Koki.とPalmi(監督の息子)。縁故主義的なキャスティング
日本人キャスト配役の違和感を差し引いても、物語的にはやはりお勧めしたい映画であることは変わりないです。日本をはじめ、皆さんのお住まいの近くの映画館で上映していたらぜひご覧になってみてください。



































