7月も半分が過ぎました。今夏のニューヨークはやけに夕立が多く、地下鉄が洪水で水浸しになったりしてます。毎日のように天気予報には午後から夕方にかけて豪雨マークがついていて、まるで亜熱帯のようです。なので野外イベントも控えめに、先週末はゲイ友コリアンKとアメリカ人Tカップルの家で開催されたムービーナイトに行ってきました。ムービーナイトはアメリカでは一般的に人気の娯楽なものの私はあまり縁がありませんでしたが、KとTのおかげでその楽しさに目覚めたのは昨年の秋の話。
この日KとTが選んでくれた映画は2024年公開の「A Nice Indian Boy」というゲイムービーでした。各種映画祭で入賞するなど気になる映画でしたが、マンハッタンで上映された時には見逃していました。ネタバレしない程度にあらすじを書くと、奥手なインド系医師Naveenはある日、魅力的なカメラマンJayに出会い恋に落ちます。いつか二人は愛し合うようになり、婚約しますが、Naveenはなかなか保守的な両親に打ち明けられない、という異文化カップルのゲイドラマにはありがちなストーリー。
今年初めに紹介したリメイク版「ウェディング・バンケット」と似たような物語の展開ですが、私的には「A Nice Indian Boy」の方により共感しました。主人公はじめキャスティングの良さ、登場人物の心理描写の妙、そして、異文化コミュニケーションの描き方の丁寧さなど総合点で上回る気がしました。複数の映画祭で入賞しただけあると思います。インド系の家庭の話ですが、とても普遍的な親子愛、きょうだい愛に満ち溢れた話で、思わずうるっと来てしまうシーンもあり、見終わったあとはあたたかな気分にしてくれました。「ウェディング・バンケット」のように財閥総帥のお婆さんに育てられた天涯孤独の御曹司?みたいな無駄に派手な設定じゃなくて、主人公の両親もごく普通の移民家庭の設定で、インド人俳優さんたちもいかにも周囲にいそうな風貌です。この作品は、設定ではなく脚本と役者の実力で勝負してると思いました。
インド式結婚式のシーンも微笑ましくて、懐かしい気分になりました。というのも私も実は以前大学院時代に知り合ったインド人クラスメートの結婚式に参加したことがあるのです。インド系の民族衣装まであちらが用意してくれて、ホスピタリティ溢れる式でした。そんな若い時代を思い出し、感傷的にもなりました。
映画の話に戻ると、主演のNaveenを演じたのはインド系若手俳優のKaran Soni。この映画を見るまでは知らない俳優さんでしたが、北米中にいる北米育ちの今時のインド系若者を親近感たっぷりに演じていました。彼みたいなタイプは職場にもいるしゲイ友ネットワークにもいて、一気に話に引き込まれました。そして、Naveenの婚約者を演じたのは、今やゲイ映画界隈の大御所とも言えるJonathan Groffです。一見地味なこの映画をメジャー級に引き上げたのは、彼が配役されたからでしょう。「Glee」で登場して「Looking」で有名になったJonathan。いつも若々しいイメージでしたが、その彼も今年40歳。あまり知られていないインド系俳優の共演者ばかりの中、老舗感漂う風格すら醸し出していました。白人イケメンがカーストの最上にいるルッキズムというカリフォルニアのゲイコミュニティーを生々しく描いた「Looking」のイメージが強過ぎて、彼自身も有色人種には冷たい、という噂が一人歩きしてしまっていたので、この作品で失地挽回でしょうか。
映画祭での主演二人の様子
Gleeの頃のJonathan Groff
Lookingは彼をゲイのアイコンにのし上げた
線が細い印象でしたが、意外にもいい体してました
この「A Nice Indian Boy」の監督はインド系のRoshan Sethi氏。主演俳優Karan Soniの夫でもあります。自分の夫が、カメラの前の演技とはいえJonathan Groffみたいなイケメン俳優と絡むのに嫉妬しないのかなと余計なお世話は置いておいて、この映画は、Roshan Sethiの自伝的作品でもあるのだと思いました。完成度の高さは彼の力量が大きいと思いました。Roshan Sethi氏は「The Resident 」という医療系の人気ドラマでプロデューサーをしていましたが、なんと彼自身も医者でもあるんです。こういうキャリアの築き方は日本のエンタメ界ではあまりみられないので、とても刺激を受けました。
ということで、いろいろな意味で「A Nice Indian Boy」は今年観た映画の中では、一番心に響いた作品となりました。日本公開の予定は未定のようですが、各種ストリーミングサービスで配信されていますので、ご興味を持っていただいた方はぜひご覧になってください。
主演のKaran Soniと監督のRoshan Sethiは夫夫





























