ヴェネツィアの、とあるギャラリー | /// H A I H A I S M ///

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あわてない、あわてない。赤ちゃんが「はいはい」するように、のんびりゆっくり進みましょう。

ボクも26年前は今よりも26歳若くて、そりゃ今と比べたらピッチピチだったワケだ。ボクはそのピッチピチの頃に、当時好きだった女性と一緒にヴェネツィアを旅行したことがある。
今回のヴェネツィア滞在は、その時以来ってことなんだ。だからついつい、街を歩いていて懐かしい一郭に入り込んだりすると、ちょっとセンチメンタルな気分になっちゃう。
あの時は、26年後の自分なんて想像もしていなかった。

散策の途中にあるギャラリーを見つけ、そこでボクらは1枚の絵を買った。ゴンドラが描かれた切手くらいの大きさのエッチングで、帰国してからマット紙まで吟味して額装した。

ボクは学生の時に建築を勉強していて、それも実務的じゃない建築史の研究室なんかに所属していたものから、まわりにはヴェネツィア建築について知識豊富な連中がたくさん居たんだな。だから自然と聞きかじりの知識をたくわえていてね。きっと26年前、この建物はこれこれ世紀のなになに様式でとか、この街の成立はそもそも…… とか、そんな風に格好つけてたんだと思う。
いや、若いと言うのはなんとも気恥ずかしいことだな。そこがうらやましいんだけどね。

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今日、ヴェネツィアの街を1日中歩いた。
昨日より一段と陽射しが強くなって、しばらく歩く内に自然と日陰を選んでいるのに気付く。運河を越える橋の全てが階段だから、運河を越えるたびに「どっこいしょ」気分だよ。

そんな時に一件の店が気になって、なんだろう…… その佇まいや、扉のガラスを通して見える中の様子に見覚えがあって、あれ? 26年間改装されてないワケではないだろうにと思って入ってみると、まさにゴンドラの絵のギャラリーだった。
扱ってる作家は当時と同じ。ただ、店をまかされている青年だけは、当時はまだ小学生だったんだろうって思えるくらいの若さだった。

ボン・ジョルノの挨拶の後しばらく無口だった青年も、あれやこれや興味深そうに見ているボクに声をかけて来た。実はボク、26年前にここに来た事があって絵を1枚買ったんだよと話した。その1枚の絵はモノクロームでしたかそれとも彩色されていましたかと青年は尋ね、ボクが色がついていると答えると、この作家はモノクロームの絵から始めたのだと教えてくれた。そうですか…… 26年前にはもうカラーの作品を作っていたんですね。

今回の絵探しの旅では、ギャラリーに展示されているような十分高価な作品を買うのは趣旨ではないのだけれど、今回はセンチメンタル購入と言うことで買ってしまったよ。

では、少し値引きしておきます。1杯のコーヒー分くらい。そう青年は言いながら、スーツケースの中で折れないように丈夫な厚手の紙に梱包してくれた。
それで、26年前の絵はどうされたんですか?

*****

その絵は、今でもボクの家の寝室前の廊下に飾ってある。
日々の暮らしの中では、ヴェネツィアを思い出しながら眺めることなんて無くなっていたけれど、でも確かに今もある。その時一緒に旅した女性はボクの妻で、そう言えば今回ヴェネツィアに行くんだって言った時、少し何か言いたそうだったな。

今思い出せば、想い出として語れば、その旅は十分にロマンチックだった気もする。だって新婚旅行だったんだもの。

でも実のところ、当時の旅はロマンチックじゃなかった。
ボクらはそれぞれの荷物をバックパックに詰めて、訪ねる街々で安宿を探しながら旅行していた。夜行列車に乗るとたまたま一緒になった日本人学生から、よかったら次の街で宿をシェアしませんか、なんて誘われた。いや、一応ボクら新婚旅行なんだよね。あ、すみません。全然そんな感じしなかったもんで。みたいな。

*****

ロマンチックは若者には無理なんだ。

そんなこと言ったら、無理じゃない人には怒られるかもしれない。
でも、少なくとも26年前のボクには無理だった。


ま、そんな反省の1日だったってワケ。


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