夜の入浴時、初めて洗髪に使った。
本当に石けん使うだけで毛髪が生えてくるかどうか半信半疑であるが、これからの1週間、毎日使ってみようと思う。
【2日目】
何かが頭皮を突き破って出て来る。そんな感触を頭皮に感じる。気のせいだと言えば確かにその程度の感触ではあるが、むずむずとかゆいような。
そう言えば、我が家のラブラドールの「かえで」が乳歯から永久歯に生え変わるころ、やたらと家具をかじっていたっけ。歯がむずむずとかゆかったらしい。
すっかりとおばあさんになってリビングで眠ってばかりいる「かえで」に、「お前、こんな感じだったのか?」と聞いてみる。
【3日目】
昨日「何かが突き破って出て来るかゆみ」そう表現したが、本当に何かが出て来るのだろうか。いや……何かというのは毛髪のことを期待しているのだが。
単に新しい石けんの成分にかぶれてしまって頭皮がかゆいだけだと言うことはないだろうか。
ポリポリと頭をかいていると娘に「やだ、パパ。ちゃんとシャンプーしてるの?」と顔をしかめられる。シャンプーしてるもなにも、生まれて初めてと言うくらい丁寧に、毎日しかも朝晩、髪の毛を洗っていると言うのに。
【4日目】
嵐の前の静けさと言うのは、こういうことを言うのだろうか。
石けんの劇的な効果でバリバリと毛が生え始めても良い頃のはずなのに、今日はなにも感じない。
静かだと言うことは、なにも変化していないということではなく、これから変化が起こるということなのだ、と自分に言い聞かせてみる。
友人の中でただ一人頭髪を偽装しているT氏から「帰国したんだって?」と電話がかかって来る。
石けんのことを話すと、
「80年代に流行した中国の毛生え薬「101」も試したけどね、有効成分「ミノキシジル」が配合されている育毛剤も使ってるけどね、なつむぎ、かぶっちゃうのが一番てっとり早いよ」
と言われ、その後ハゲ談議に長時間つきあわされる。
【5日目】
自分は何かを期待しているのだろうか。
もしかすると、ガンを治すのに祈祷師のところに行くようなことをしてるのではないだろうか、そんな不安に襲われる。
石けんを使い始めた頃に感じた何かの予感の様なものは自分の期待の産物だったのであって、決して石けんの効果ではなかったのではないかと、なにかあきらめのような気分に襲われる。
いや、あきらめというにはあまりにも悲しい。この感情にはきっと「絶望」という言葉の方が似つかわしい。
【6日目】
なにか自分の身体に変化が起こっている。
そういう感覚がずっとあるものの、では具体的にどんな変化があるのかと考えてみると、思いつくところがない。そんな感覚があるだけで、もしかすると思い過ごしなのかもしれない。
でも感覚は確かにある。
それを言葉にするならば、開花宣言を出される直前のソメイヨシノのような気分だ。
一気にバッと、いやドバッと、爆発的に膨らむような、うっかりすると枝からだけではなくて幹からもなにかが生えだすような、そんな感覚だ。
【7日目】
朝目覚め起き上がろうとすると、頭が上手く持ち上がらない。
どうしたんだ? なにか悪い病気にでもかかったのか? と不安になるが、単に頭が重いだけだと気づく。
頭が重いというのは、頭に鈍痛を感じるということではなく、なにか解決しがたい悩み事があるということでもなく、本当に頭が重いのだ。まるで鉛の帽子をかぶったかのようだ。
やっとの事で起き上がって鏡を見てみると、ザ・グレート・カブキがそこに居た。
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毛の生える石けんと言うのは、ギリシャで作られている「アマルシア」という名前の石けんでね。ヨーロッパ絵探しの旅の最後の街アテネで、義弟と自分用への土産に買って来たものなんだよ。
オリーブオイルの石けんに、なんか特別なハーブが配合されているものらしいんだけど、値段が半端無く高い。普通の石けんの5~6倍もするんだ。125グラムで19.9ユーロもした。
で、実際に使って見たってワケ。
頭皮の脂を全て取り去ってしまうような、そんな強烈な使い心地だったけど、全然、毛なんて増えないよ。
ま、ボクはもともとフッサフサだからさ。気になんないけどさ。

石けんの効果に激しく興味を持ったT氏のために記事にしちゃった。それと義弟に対する効果は未確認だよ。でも、キューティクルを美しく整える効果なんかはあるらしくてね。女性にもお勧めらしい。