
幼稚園の頃の記憶は、「幼稚園の頃の記憶」って引き出しの中に入っているので、
その中のどれが人生の一番最初の記憶かは、はっきりしない。
それに、そのほとんどが断片的な記憶で、思い出して文章にしてみても、
それが面白いのやら、どうやら...
いや、はっきり言って、つまらんな。
そんな記憶の引き出しの中に、
かろうじて1つだけ、ストーリー性のある記憶があります。
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時代背景は、そう「ALWAYS 三丁目の夕日」の頃です。
映画で見た様な街並みをイメージして下さいね。
ボクが幼稚園の頃、近くに父の一番下の弟が住んでいました。
彼はまだ学生で、駅前の木造2階建てのアパートに一人暮らしをしていて、
いつも、夕方になると我が家に夕食を食べに来ていたのね。
そうそう、彼の住んでいるアパートの階段ときたら、絶壁かと思えるほど急な階段だったけど、
それは本題には関係ない。
叔父は小腹が空いていたんだろうね、我が家にくるとすぐ軽くなにかを食べる。
ほとんどの場合が「甘食パン」と「牛乳」で、
幼稚園児だったボクは、その「甘食パン」が食べたくてしかがたなくて、
いつも叔父のまわりをちょろちょろしてた。
母には、その度に、
「なぁくん。おじちゃんのパンを取っちゃだめよ~」
って言われてたっけ。
そんなことから、ボクはいつも親に「甘食パン」を買って貰いたくてしかたがなかった、
その頃...
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ボクは父といっしょに市場に行った。
市場の中の菓子屋で、父は陳列されている木箱のガラスの蓋を開けて、
中の甘食パンを勝手に取り出して食べ始めた。
もちろん、ボクも食べたい。
ところが、ボクも食べたい、とうったえると、
「なつむぎ。おまえはダメだ。」
と父に拒否されてしまう。
理不尽だ。
ボクはくやしくて、悲しくて、声を上げて泣いた。
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泣いて、泣いて、そして気づいてみると、
ボクは、布団の上で泣いている。
母が、心配して見に来てくれた頃には、夢であったと気づいたんだけど、
父だけが勝手に「甘食パン」を食べて、
ボクには食べさせなかった悔しさは、
どうしても消えない。
泣き止む理由が見つからなかった。
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その後の記憶は、残念ながらない。
父も母も、その時のことを覚えてるみたいだから、きっと夢を見たことを話したんだろうね。
これが、人生初の記憶かは定かではないけれど、
少なくとも自分の見た「夢」の記憶に関して言えば、これが確かに人生最初の記憶です。
そして今でも、甘食パンが好きなボク。
父母は、悔し泣きするボクをなだめるために、甘食パンを買ってくれたのだろうか...
こんど、聞いてみなくっちゃ。
