これは、天使ママさんにお勧めの本 とかでは全然なく、鬼やら妖怪と人間との かかわり合いを描いた小説なのですが・・・
この本の中に、 『むじな和尚』 と 『天つ姫』 という話が収録されています。
『むじな和尚』 は、むじなという妖力を持った動物が、
「人間の目から落ちる水」(涙のことです)が何なのか知りたくて、人間と関わるうち、
一人の人間を深く愛してしまい、そのために命を落とすことになる・・・
という、ちょっと切ないお話です。
『天つ姫』は、変わり者の幼い姫と遊ぶうちに、我知らず、姫を深く愛するようになった天狗のお話。
不幸な結婚をした姫を助けるために、この天狗も、やはり命を落としてしまいます・・・
むじなも天狗も 力があって、強い存在でした。
人間など 愛さなければ、決して命を落とすことはなかったはず。
愛するということは、強さを手放し、弱さを選ぶことなのかもしれません。
ですが、人間を愛し、人間からも深く愛されて死んでいった むじなと 天狗は、幸せだっただろうなあ・・・
と、何となく読後は ほんわかとした気持ちになる お話でした。
私たち人間も、本当はこの世ではなく 光の世界の住人です。
そして、本来はすごく強くて力のある存在です。
だけど、愛を学ぶために 本来の力を手放して、何も持たずに 弱々しく 生まれてくるのです。
それって、ものすごい勇気だな、と思います。
この世で生きていると、自分のあまりの力の無さに呆然としたり、
涙を流したりすることもあるけれど。
それでも、敢えて そんな弱さを自分で選んで生まれてくる人間って、
実はすごく強いよなあ・・・と。
スピリチュアル系の本ではないけれど、読んでいて、ふと そんなことを思いました。
そして、この本の最後に 『機尋(はたひろ)』という話が収録されています。
このお話は、土蔵に閉じ込められたまま、火事の際、誰にも助け出してもらえずに亡くなった少女(綾)が妖怪となり、次々に子どもたちをさらっていくが、
最後にさらった少女(紅)に愛を教えられ、成仏していく・・・という物語です。
この話の登場人物の言葉が、とてもいいなあ・・・と思ったので、ご紹介しますね。
綾を愛していたのに、結局は助けることができず、「妖怪にしてしまった。」と、悔やみ続ける男 留蔵に、
紅の育ての親である男 柳が語った言葉です。
どんなに近くにいたって、どんなに強くて知恵も富もあったって、
人は人を守ることも 何かを丸ごと与えてやることも できねえんだ。
人間は人形じゃねえからな。
ただ見届けてやることしか できねえ。
責は自分で負わなきゃならねえから、代わってはやれねえ。
それにな、そうじゃなきゃ、生きたことにもならない。
どうして、助けられなかったんだろう・・・
もっと、自分に何かできたんじゃないのか?
そんなふうに、思うこともあるかもしれません。
だけど人間にできることは、ただ、誰かに(あるいは 何かに)愛を注ぐことだけ。
その愛が、うまく相手に伝わらなかったり、自分の思った通りの結果にならなかったりすることもあるけれど。
それでも、やっぱり 人間を救うのは愛だけなのだな・・・と思います。
そして、人間だけではなく・・・
不思議の世界の住人達にも、やっぱり 愛が必要なのですよね
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