光と影。
1軍人から皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。その後ロシア遠征で
失敗し、追放されて…という教科書的な知識はあった。
でもそんな男も、実は奥さんに振り回され、孤独で、いろんな悩みがあって…
という物語。それは最初新鮮だったけど、3時間近い尺の中で灰色の時間帯が
多すぎて、うんざりした。あとうんざりと言えばスケール感ばかり強調された
戦いのシーン。もうちょっとナポレオンの出世した理由、天才的な戦略などを
見せて欲しかった。光の輝きが強いほど、影の暗さが際立つのに。
それかリアルなんかもしらんけど…
リアリティはアメリカで機密情報を流出させたと疑われた女性の本名。
ある日自宅にFBIの捜査官がやってきて、緩やかに始まる尋問。
裁判記録として提出された、FBIによる録音からセリフを書き起こした
という「気合の入った再現ドラマ」みたいな作品だ。
たしかに緊張感もあるし、こうやって追い詰めるんだという心理戦なと
見どころはある。ただいかんせん地味すぎる。
穏やかだけど、真綿で首を締めるような取り調べに、リアリティは
追い詰められていき、心理的に不安定になっていくんだけど
それにずっと付き合わされる俺が、夕方だったのに夢の世界にあっさり
引きずり込まれた。事実は小説より地味なんだな、たいがい。
どうして川崎ばかり?羨ましい
川崎にある風の谷幼稚園の1年を追ったドキュメント。というか天野園長が
築きあげてきた幼児への教育観を体現している幼稚園と、イキイキした園児たちの
表情のシンプルなスケッチだ。
冒頭がいきなり子どもラグビー。しかもタグとかでなく、体をぶつけての肉弾戦。
体をぶつけて、仲間と協力してやるからいいんです。心を鷲掴みされた。
子どもたちに、自分で考えて、工夫して、どんどんやらせる。
うまくいかなくても、やり直しをじっと見守る。「うちの園に失敗はないんです」
失敗する前に先回りし、何かあったら…と禁止ずくめにする今の大人たちに
あの活き活きした表情を見てほしい。
子どもを信じ、任せ、見守る。うまくいかない経験こそ、子どもを大きく伸ばす。
やっていることは実は昭和の親的なダメなところだけ厳しくしつけ、
あとは放ったらかし(風)。でもそれが今の最先端だし、最適解だと実感した
どうしてなんだろう?
18年前に公開されたジョニー・デップ主演の映画「チャーリーとチョコレート工場」の前日譚として公開された物語。チョコレート工場を作ったウォンカの少年時代を描いたミュージカルだけど、理屈とか現実性は気にしちゃいけない。その空気感に乗れたら、待っているのはひたすら幸せな世界。ドラッグのような中毒性すら感じるチョコレートの魅力に引き付けられる。音楽もよかったし、チョコレートに興味ないおっさんだけど幸せな気持ちになれた。
である証明、でない証明。
地球人そっくりな宇宙人が紛れこみ、大騒ぎの中
疑惑をかけられた女性と、その真偽を取材しようとする記者の
物語。コロナの時もあったけど、わからないものに対しての恐怖心と
排除しようとする心、それを煽るマスコミの醜さを浮かび上がらせていた。
ただ、いろんなことを盛り込みすぎて全体的に散漫だったし
メリハリがないなぁと。まあ、宇宙要素は星の王子様くらいやし。
お約束の!
雷に打たれ、フィリピンの島になんとか不時着した旅客機。
10人ちょいの乗客はほぼ無事だったが、その中に1人護送中の殺人犯が。
ただその島は武装ゲリラが支配するエリアだった。という物語。
殺人犯をどう扱うかがキーポイントなのに、結構早めの段階で心強い味方になる(笑)
そこからはまあありきたりな展開で、ハラハラはしたけど普通。
だいたい不時着して、さらにあれだけ銃撃された飛行機がちゃんと飛ぶんかいな。
もうちょい、裏切るかどうかのところにポイントを置いたほうがよかっただろうな。
実現に敬意!
マンガならではのぶっ飛んだ原作を力技で実写化した「翔んで埼玉」
その予想以上の大ヒットで、続編を作ろうと言う流れは想像できる。
とは言っても原作はないし、というところからだから見事だろう。
お約束のケンミンネタを濃すぎる役者でアレンジ。
さらに大阪を代表する?アレの発射を見せてもらえたら満足だ。
なんでやねん!などとツッコまず、素直に笑って愉しめば世の中平和な1本だ。
殿!ご乱心?
世界のキタノが撮った大型時代劇!というから最初は構えてしまった。加瀬亮演じるエキセントリック信長に対して、たけしさんが演じるのが羽柴秀吉。年齢的にも演技的な面でもキツいやろ、やっばり年取ったかなぁと思った。
勘違いだった。よく見たら壮大なスケールと北野組の役者を贅沢に使った戦国コントだった。大森南朋と浅野忠信は、そのまんま東と石倉三郎なんだ。そりゃ、自分で笑いは取りたくなるわな。脇をお気に入りの後輩たちが固め、最後のオチまで殿の芸人魂に溢れた作品になっていた。でも、これカンヌとか持っていって大丈夫?
人生はゲームじゃないよね。
キンプリの永瀬くん、杉咲花ちゃんによる法廷ミステリー?
ロースクールの学生たちが法廷ごっこをゲームみたいにしてやるという設定も
?だったし、そのあとの展開も「観客を騙す、裏切る」ことだけが目的の物語で
全然ピンと来なかった。キンプリファンの若者でも理解できるように、飽きないように
かなり原作を刈り込んで作ったようだけど、そのぶんサブキャラがなんのためにいるのか
さっぱりわからない。世の中はそんなに簡単じゃないし、気軽に楽しめるゲームでもない。
こんなこというと老害だっていわれそうだけどな。
funでなく、interestingだった邦画。
水フェチという世間的に正しくない、理解されない性欲があり、生きづらさを抱えたまま生きてきた人たちの物語。
「普通」と言われる人たちの世界に間借りしているよう、でも自分ではどうしようもない。
そんな人たちが数少ない理解者と出会って幸せを見つけ出す一方で、「普通」「世間的に正しい」の権化である検事は
そこにこだわるばかりに家庭が崩壊していく。どっちが幸せなんだろう?普通ってなんだろう?考えずにいられない。
みんな違って本当にそれでいいの?生きづらい時代を演じた時のガッキーの死んだ魚のような目、理解してくれる人と一緒に暮らす幸せ、「いなくならないから」という最後のセリフが印象的だった