2023.01.22 ベルカントオペラフェスティバル イン ジャパン2022 『オテッロ』 | たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

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主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

今日は私の大好きな作曲家であるロッシーニのオペラ作品を聴きに、新百合ヶ丘へ行ってきました。新百合ヶ丘でオペラということは当然テアトロ・ジーリオ・ショウワでの公演ということになるのですが、今回聴いたのはシェイクスピアの戯曲を元に作られたオペラ作品のひとつ『オテッロ』です。え?それってヴェルディが作曲したんじゃないの?と思う方もある一定数いるかと想像しますが、実はロッシーニもこちらの作品をオペラ化しているんです。作品の解説等は専門家の書いたものを読んでくださいということで言及しませんが、音楽的にぜんっぜん違って興味深いので、ヴェルディ版を知ってる方はロッシーニ版もぜひ聴いてみて比較すると面白いと思います。

ロッシーニの『オテッロ』はなかなか日本で聴く機会のない作品だと思うのですが、今回藤原歌劇団とヴァッレ・ディトリア(マルティーナ・フランカ)音楽祭が提携して2019年から始まった、ベルカントオペラフェスティバル(BOF) イン ジャパンのオペラのプログラムとして開催されました。




このBOFに関しては毎回非常に意欲的なプログラムを組んでいて、東京に住んでいたらシンポジウムも含め可能な限り行きたい内容ばかり。例えば今年はシンポジウムにはミケーレ・ペルトゥージがゲストとして参加していたり、スペシャル・ガラ・コンサートは下の画像の内容。

 更に、日本の宝というべきソプラノの光岡暁恵さんとカウンターテナーのレイ・シェネーによるバロック・コンサートも開催されていて、それが以下のプログラム。
このように、非常に魅力的なフェスティバルなので毎年どういうことをやるのか楽しみにしています。しかも日本じゃ聴けないような作品を上演するのでそこがまた良い。

そんなBOF2022のメインディッシュであろう『オテッロ』。いやぁ素晴らしかったね。めちゃめちゃイタリアの風吹いてた。序曲が始まった瞬間から海外で収録された上質なロッシーニの感じがびしばしきました。仰々しくないどちらかといえばあっさりしたとでも言えば良いのかな。サクサク進む音楽の心地よさ。無駄がなくて、音がまとまっていた。名前も実演も初めてでしたが、マエストロのイバン・ロペス=レイノーソ恐るべし。途中もう少しテンポアップで煽って欲しかった所もありましたが、それはないものねだりでしょう。素晴らしかった。


ソリストは、タイトルロールのオテッロ役のジョン・オズボーンが白眉。頭何個分だろう、飛び抜けてめちゃめちゃ良かった。声の音色にまとまりがあって、安定感抜群で声量も十分。高音は余裕で全てのアクートがしっかり決まってたし、輝かしく鳴っていた。まさにプロの歌唱でした。危なっかしいところがなくて、このあと多分上げるんだろうなと思うとしっかり期待に応えてくれる。会場も序盤からかなり盛り上がったと思います。これから彼はクンデのようなキャリアを積んでいくのでしょうか。何れにせよ、まだまだロッシーニを聴いてみたい。


他のソリストもかなり良くて、公演の水準をグッと押し上げていたように思います。

まず、イヤーゴ役のアントニーオ・マンドゥリッロはイヤーゴにしては綺麗すぎるくらいの美しい声のテノール。全く無理のない発声で上もめちゃめちゃ鳴る。アジリタも美しい。ヴェルディの『オテロ』と違って、ロッシーニ版はイヤーゴよりロドリーゴに注目してしまうのですが、こんなに良いイヤーゴに出会えるとはと驚きました。今回かなり良い印象を聴衆にもってとらえたのではないでしょうか。


デズデーモナ役のレオノール・ボニッジャはBOF2019のメルカダンテ作曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』で来日しており、個人的にはお久しぶりですといった感じでしたが、声質の割にはアジリタもバリバリでロッシーニでいうとブッファより今回のようなセリアの諸役で聴きたい。魅力的なデズデーモナを好演していました。


ロドリーゴ役のミケーレ・アンジェリーニは、近年映像や録音も多いテノールで楽しみにしてました。彼は特に2幕からは喉に違和感が出て若干の精彩を欠いたシーンもありましたが、ポテンシャルの高さとアジリタの妙技でカバー。アジリタは非常に上手い。超気持ちいい。立て直し方も上手かった。これくらい歌えてくれるとアリアなんかを聴いてても楽しいんですよね。ただ、これは完全に脱線ですが、僕は小堀さんがこの役やればもっと良かった気はしてます。アンジェリーニがどうこうじゃなくて、小堀さんだったとしても公演は同じ様に大成功していたと思います。それくらい彼の歌唱技術と声の持つ魅力は世界レベルだと確信したからです。話を戻そう。そんなわけで、アンジェリーニ来期新国立劇場デビューだそうなので今から再開が楽しみです。


日本人歌手の方々も大健闘されてました。エミーリア役の藤井 泰子さんや、ドージェ/ゴンドラ乗り役の渡辺 康さんは海外勢の中で様式的に違和感なくそれそれのロールを堅実に表現されていたと思います。日本人歌手と言えば会場に様々な方がいらっしゃいましたが、脇園 彩さんもお見かけしました。お話し中だったのめお声かけるのは遠慮しましたが。


ロッシーニの『オテッロ』の凄いのは、目をつぶって音楽だけ聴いてると、楽しそうにも聴こえるし、悲しそうにも聴こえる。でも、歌い手の表現で心に訴えかけてくる。ある種の音楽の普遍的性みたいなものを感じるということ。ヴェルディの場合そんなことは全く無くて、感情が分かりやすい。正直話の展開や一つ一つのシーンに合う音楽を与えているということでいうとヴェルディ版が優ると個人的には思いますが、そういうとこで勝負してない感じのロッシーニ…かっこいいぜ。


そういえば、今年の11月に藤沢市民オペラでこのロッシーニの『オテッロ』やるんでした。日本人歌手の超豪華な面々での上演。指揮は園田隆一郎さん。いやー、これも楽しみです。ちなみにこちらのロドリーゴは小堀勇介です。くぅー。気合の入った『オテッロ』を2回も違うプロダクションで聴けるなんて贅沢かつレアな体験になるなぁ。


素敵なロッシーニが聴けて大満足の今日。幸福感の中眠れます。ということでもう寝よう。寝てる間に誰か入ってきて首絞めて殺されないことを祈ります。

来年はどんなBOFが聴けるのか、今から楽しみです。

では、おやすみなさい。私はここから、さーるちぇ。


ジョン・オズボーン

ミケーレ・アンジェリーニ

レオノール・ボニッジャ

BOFのパンフレット

オテッロのパンフレット