2022.11.09 ナタリー・デセイ&フィリップ・カサール デュオ・リサイタル | たっぴーのムジカしくない日記 "Incominciate!!"

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主にオペラの感想等を亡備録として書き連ねていこうかなと思ってます。
その時感じたことをそのまま書くようにしてますので、文筆がおかしいことは多々ありますが、良ければご覧下さい。

ふ今日はなんとあの偉大なるソプラノのリサイタルへ行ってきました!!

そのソプラノとは、フランスを代表し、歌う女優と評されるあのお方、そう、デセイだぜい!!

…大きく振っといて大した笑いもない感じでのスタートとなりましたが、今回のリサイタル、ナタリー・デセイとフィリップ・カサールのデュオ・リサイタルということで、楽しみにされていた方も多いのではないでしょうか。更に、デセイは2013年に(もうそんなに前なのか)オペラから引退をして、歌曲やシャンソン、演劇等を中心に活動をしているそうなのですが、今回のリサイタルではオペラアリアを中心にプログラ厶されており、僕としては嬉しすぎる内容でした。


ちなみにこちらがチラシです。

素敵なお二人がどどん。


曲目はこちら。どどんがどん。

僕の大注目はモーツアルト。デセイが、スザンナとか伯爵夫人とかパミーナとかバルバリーナまでやるってやばない!!!?(バルバリーナは実際に舞台で若い頃やってますが)
そもそもそれらのオペラが個人的に好きなので、それは行くしかないでしょ。どんな感じになるんだろうってもうそれは興味津々よ。
あとは、宝石の歌以外知ってるものは少なくて、『ペレアスとメリザンド』、『ル・シッド』は1回くらいオペラを観たかな。それから「モンテカルロの女」の名前くらい聞いたことある程度でした。なので、デセイが歌うことで好きになりたいなという思いも持ちつつ聴きました。

閑話休題。リサイタルってある種の見本市みたいなとこがあると思ってて、聴いたことないとか詳しくない例えばオペラがあったとして、その中のアリアがリサイタルにプログラムされていると、その曲を聴いたあとに素晴らしければ、全曲聴いてみようとなるので、自分の知識や経験値を上げるのにとても良いなと思います。

話を戻そう。そんなわけで、まずは大好きモーツアルトを聴いたのですが、カサールのピアノ伴奏最高。超優しい。とにかく優しい。鍵盤の上をなぞってるみたいりしかも品がある。貴族の邸宅で聴いてるような感覚になりましたね。スザンナ4幕アリアでは少し精彩を欠く歌唱だったように思いましたが、バルバリーナのアリア以降デセイの本領発揮。イメージ通りのデセイが現れました。これまで聴いてきた彼女がそこにいました。いやー、衰えないね。そら90年代と比べたらとかそんなん言ったら、また感想変わっちゃうけども、少なくともベルカントオペラを主に活動してたオペラ歌手としてのキャリアの頃と比べたら遜色なし。実に素晴らしかった。

バルバリーナのアリアや伯爵夫人の2幕アリアは本当に悲しそうに聴こえたし、3幕アリアは前半ゆったりと過去の良かった頃を想像しながら苦悩する様を描き、後半はそれを否定し希望を見出していく様が実に見事に表現されており、感動しました。極めつけはパミーナのアリア。声としてはこれが一番合っていたように思ったのと、ピアニッシッシッシッシッシッモが、もう一度言いますが、ピアニッシッシッシッシッシッシッモが、あ、1回シッが多くなっちゃった(どうでもいいわ)、それが素晴らしいのなんの。会場中が固唾を呑むとはこのことかと思うくらいで、シーンと静まり返ってその一音を余韻も含めて聞き漏らしてたまるかという張り詰めた雰囲気で聴いてました。ちなみに僕は息を止めてたら酸欠になりましたよ(笑)
ちなみにそんな中ピアニッシッシッシッシッシッモの最中にまさかのパンフレットを落とした人がいて、内心「そりゃねぇぜえええええええええ」ってなりました。僕がエガちゃんだったら、「ぅおおおおおおい、お前に一言ものもーす!!」ってやってましたね。布袋のスリル流して。ま、それやるのもまたスリルですが(うまくねーよ)

今回聴いて思ったのは、デセイの声は決してステレオタイプなというか、いわゆるモーツアルト歌いの声ではないと感じたのですが、モーツアルトらしい様式美的なものとは違うところで、登場人物の気持ちを伝え、表現できてることが驚きであり、凄みだなと思いました。彼女の一挙一動からその情景が周りに浮かび、登場人物のオーラを纏うんです。

後半は、プーランクの「モンテカルロの女」が超絶良くて、またもややってきました。ピアニッシッシッシッシッシッモ。モンテカルロという言葉を何度も口にするのですが、最後に言うモンテカルロがもうね、思い出しただけでも身震いする美しさでした。これも息止めて酸欠状態(笑)幸せな瞬間だったなぁ。もうなんか全ての時が止まった感じというのでしょうか。モンテカルロというのが、何かの呪文なのか?エクスペクトパトローナムみたいなことなのか?とにかく感動しました。これ帰ってから音源色々漁ってみよう。

それと、『ル・シッド』のシメーヌのアリアも良かった。これってもっと重い声の人が歌う曲ですが、違和感なく聴けたし、説得力すらあった。“pleurez mes yeux”(泣きなさい、私の目よ)という言葉が繰り返し出てくるのですが、最後のこの言葉ではそんなに全体の意味が分かってもないのに、心を揺さぶられる感動を得ました。それと、やっぱフランス人だからフランス語が綺麗ですね。流麗というか。フランス語独特の響きが全てはまってて良い。

最後の宝石の歌も良かったですなー。少女のウキウキ感がそれこそ宝石を散りばめたように、シャボンの泡が弾けるようにキラキラと煌めいて、躍動感に満ち溢れていました。CD等で聴くデセイそのものでしたよ。少女の幼さと可愛らしさを最後に感じることが出来て、もうあっぱれという感じ。何の衰えもない。

今回のリサイタルの成功はフィリップ・カサールが伴奏を弾いてたというのも大きいと思います。曲ごとに全く違う音を出して、オーケストラを表現してましたし、彼のピアノはデセイの声とピタッと一体化して、悲しい所はより悲しくなっていたでしょうし、嬉しいところはより嬉しく感じされてくれたと思います。なんだろ、こう、デセイが言葉で歌い表現してるところに、ピアノの音で登場人物の内面を分かりやすく、言葉に厚みを出してくれていたような感じ。それだけ歌心が分かってるってことなんでしょうね。ほんとに一体化してました。しかもデセイへの気配がやばし。めちゃめちゃ素晴らしかった。

アンコールは、こちらの2曲。
(ジャパン・アーツのTwitterより)
当日帰りに、アンコールの曲を探しても探しても張り出されてませんでした。で、どこかのおじいさんが係の人に問い合わせてたのでそれをしめしめと盗み聞きしてたら、「ジャパン・アーツのTwitterで確認してください」と言ってたので確認したわけですが、確かに載ってました。でも、そのおじいさん「ついったーって何だ」って言ってたので、この業界でネット一本はまだきついんじゃないのかねと思いましたね。まぁ僕は全然良いんですけど。もしかすると、アンコールのとこに群がるのを阻止するために、感染症対策として出してないだけかもですしね。

で、アンコールで『ラクメ』が聴けるとは思ってなかったです。嬉しかった!!!これは嬉しい選曲だったと思いますよ。うむうむ。CDでも多分このオペラを聴く場合、そんなに流通してもないし、一度はデセイのを手に取るでしょうしね。あと、エヴァ・デラクワのヴィラネルという曲はジェシカ・プラットのCDに入ったけど全く覚えてなくて、こちら帰ってからチェックチェックチェックや!!素晴らしい曲だった。デセイの伸びやかで繊細で清らかな声と技巧的な部分の職人技、いやーとても良かったです。

今回これはね、行くべきやつでしたね。色んなデセイが聴けて、カサールのピアノも良くて、最高でした。お前たち、さいこーだぜー。とクラッシュがいたらヒレあげてますね。それと同時に、まだまだオペラできるやんかぁという思いもふつふつと。全然歌えるものね。ただ、安室奈美恵もそうだったのかなと推測しますが、本人としては昔のようには歌えなくなってきて、段々絶頂期と乖離していくのが嫌だったのかななんて思ったりね。何度も歌えなくなって手術もしてるし、思うところも多いのだろうなぁ。でも、しがみつかないってもカッコいいね。

追伸。会場には学生服を着た男女がある一定数いたのですが、若い頃にこういう素晴らしいリサイタルに出会えたことは彼ら彼女らにとってとても素晴らしい経験になったことでしょう。で、席が結構余ってたのがもったいない!!
なんなら若者にあげちゃうキャンペーンでもやったら良かったのになんて。クラッシックの未来を憂慮する男より。

さ、そんなわけで、某後輩からは誰も読まないですよこんなのと言われ続けても書いてるわけですが…あいつ1回体育館裏呼ぶしかないな。多分どうせ、こんなの読むの、カッタリーナ・ドウセって思ってそうだし。ナタリー・デセイだけに。

最後に大爆笑をいただきましたので失礼させていただきます。
では、また。