株式がプラスサムで推移してきた実績と、r>gの証左 | グデーリアンの投資ブログ

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トレードではなく資産運用の観点での投資ブログ。
銘柄選びや運用成績だけでなく投資に対する考え方や自分の失敗、成功談なども踏まえてお話しできればいいなと思っています。

 

 

 

 

 

少し前のブログで

 

「例えば明治初期、国立大卒の新社会人の初任給が10円。

現在が20万円だとすれば、百数十年のスパンでは、人件費は2万倍に膨れ上がっています。」

 

と書きました。

 

前回はこの点に関しては特に具体的な数値を調べず書いたものなので、ちょっとちゃんと調べたうえで、トマ・ピケティのr>gが本当に実証されているのかも今回見てみました。

 

■トマ・ピケティのr>g(あーる・だいなり・じー)とは?

 

そもそもですが、r > g というのが何なのか?

 

これは「資本収益率 (r) が経済成長率 (g) を上回る」という不等式で、資本主義社会における格差拡大の根本原因を説明する理論です。

 

もっとざっくり言えば資本主義社会では、資本家>労働者の関係で富の格差が広がると言っています。

 

ではなぜr>gが成立するのか?

 

 

 

 

ざっくりとまとめて・・・もらいましたcopilot君に

 

📊 なぜ格差が拡大するのか

  • 複利効果:資産収益は再投資されることで加速度的に増える。

  • 労働所得の限界:賃金は経済成長率に縛られ、資本収益ほど急速には増えない。

  • 世襲効果:資産は相続され、次世代も r > g の恩恵を受け続ける

📊 インフレと企業利益の関係

  • 販管費(SG&A)に人件費が含まれる → インフレで人件費や原材料費が上昇。通常なら利益を圧迫する要因。

  • 価格転嫁(値上げ) → 企業はコスト上昇分を販売価格に上乗せ。さらに「インフレ以上の値上げ」を行うことで、単位当たりの利益率を維持・拡大できる。

  • 利益構造 → 値上げによる売上増加分が人件費上昇分を上回れば、利益は人件費以上に押し上げられる

 

 

 

 

 

💡 具体的なメカニズム

  1. インフレ率 3% → 人件費も3%上昇。

  2. 価格転嫁率 5% → 商品価格をインフレ率以上に引き上げ。

  3. 結果

    • 売上高は +5%

    • 人件費は +3%

    • 差分の +2% が利益押し上げ要因となる。

🔍 重要なポイント

  • 価格決定力(プライシング・パワー)がある企業ほど、この効果を享受できる。

  • インフレ環境は必ずしも企業に不利ではない。むしろ「値上げ余地のある企業」には利益拡大のチャンス。

  • 労働者側は賃金上昇が物価上昇に追いつかない場合、実質所得が減少する。ここでも r > g の構造が見える。

 

 

 

 

 

近年の実感としても、物価上昇に賃金の上昇が伴っていない。
企業業績ほど賃金は上がっていない。
 
という方が多いのではないかと思います。
これらは国の政策や企業の過剰な利益剰余金の積み上げなどを理由に出来るかもしれませんが、それも含めてr>gの構造の中に収まっているとも言えます。
 
さてピケティの理論上ではこうなるそうですが、実際の日本社会では理論通りになっているのでしょうか?
 
明治期の労働賃金と株価。
現代の労働賃金と株価。
 
これの伸びを調べれば、理論通りになっているかどうかがわかります。

 

 

 

 

 

まず明治初期(明治元年〜明治10年代)の東大卒初任給。

これは「約10円前後」とされる記録があります。

ただし当時の1円は現代の2万円前後に相当し、実質的には月給20万円程度の価値でした。

 

詳しく見てみると

 

📜 歴史的背景

  • 通貨制度の刷新:明治4年(1871年)の新貨条例で「円」が導入され、1両=1円と換算されました。

  • 初任給水準:明治初期の高等教育を受けた人材(東大卒など)の俸給は 月額10円前後 とされます。

  • 比較対象:同時期の小学校教員や警察官の初任給は8〜9円、大工など熟練職人は20円程度でした。

💰 当時の貨幣価値

  • 1円の価値:明治時代の1円は現代の 約2万〜2万5千円 に相当すると推定されています。

  • 10円の価値:したがって東大卒初任給10円は、現代換算で 20万〜25万円程度

  • 生活水準:米2升(約3kg)が1円で買えた時代なので、10円は庶民の生活費を大きく上回る高給でした。

 

 

🕰️ 歴史比較の視点

  • 明治元年の東大卒初任給:10円(現代換算で約20万円)

  • 2025年の大卒初任給:約24万円 → 名目では 2万4千倍 に増加していますが、物価や生活水準の変化を考慮すると「実質的な購買力」は大きく異なります。

とのことです。

 

前回のブログでは適当に10円の初任給が20万円になったので2万倍の人件費の伸びと書きましたが、2万4000倍というのがより正確なようですね。

 

それでは労働者の賃金が2万4000倍になる中、株価は2万4000倍以上になったのか?

 

 

 

 

 

答えは

 

日本株は明治11年(1878年)から2022年までの約144年間で、配当再投資を含めると約584万倍に成長しました。

 

仮に配当を生活費などで使い切って再投資しなかった場合の単純な指数の比較でも60万倍になっています。

 

 

📈 背景と詳細

  • 起点:1878年(明治11年)、東京株式取引所が創設された年。

  • 指数の整備:明治大学の「三和・岡本日本株価指数」によって、戦前期(1878~1951年)の株価データが体系的に整備されました。

  • 成長率:この指数を戦後のTOPIXなどと接続し、配当込みで計算すると 584万倍 の上昇が確認されています。

🕰️ 時系列のポイント

  • 戦前期(1878~1920年):株価は約297倍に上昇。

  • 戦後期(1949~1989年):日経平均は約225倍に上昇。

  • 累積効果:戦前・戦後の上昇を掛け合わせ、さらに配当再投資を含めると 584万倍 という驚異的な数字になります。

 

 

 

 

 

💡 意味すること

  • 長期投資の力:戦争、恐慌、バブル崩壊など数々の危機を経ても、長期的には株式市場は大きく成長してきた。

  • 配当再投資の重要性:単純な価格指数では約60万倍ですが、配当を再投資すると584万倍に跳ね上がる。これは長期投資で配当を活用することの威力を示しています。

 

結論として

「r > g」仮説(資本収益率 r が経済成長率 g を上回る)」の証左の一つと解釈できます。

  • ピケティの「r > g」命題:資本収益率が経済成長率を上回ると、資本を持つ者と持たない者の格差が拡大する。

  • 日本の歴史的データ:株式市場の長期リターンと賃金の伸びを比較すると、確かに「r > g」が成立している。

  • 政策的含意:資産形成(株式投資、配当再投資)をしないと、賃金だけでは資本所得に追いつけない。

 

    

トマ・ピケティの著書、21世紀の資本を約100分のドキュメンタリー動画で纏めています

 

 

 

 

 

 

 

で、これによって何が言えるのか?というと、ひとつはブログの主題「株式投資はゼロサムゲームではない」という事。
 
140年で580万倍になるのは、宝くじに当たった一人だけではなく市場のアベレージが580万倍。
 
市場のお金を置いて140年待てばおのずと580万倍になったということで、同じことをした全ての人が同じ恩恵を受けたことになるので、自分が勝つために誰かを負かす必要があるゼロサムゲームではないのです。
 
前回のブログに書いたFXとの違いはこの辺りなのですね。
 

また、確かに株式はFXとは違うのですが、株式もFXと同じようなゼロサムになるような運用もできるのも事実です。

 

株式で勝てない人は、自分がプラスサムになる運用をしているかどうか?この辺を見直すと勝率が劇的に変わるかもしれませんよ。

 

そしてもう一つ、現金の価値というのは確実に棄損し続け、今日の労働力の対価として得た賃金を、現金のままで持ち続けるということは、時間とともに限りなく無価値に近づいていくという事。

 

元本保証ではないという理由で投資を未だためらっている人は、インフレによって物価が上がるのではなく、現金の価値が下がるという意識を持つと、いいことがあるかもしれませんね。