
日経平均はちょっと過熱気味に上昇を続けています。
上昇の幅は大きく、期間は短く、上げている銘柄も限定的。
こんなのいつまで続くのと心配になる相場ですよね。
で、そうすると急落や暴落の文字が頭に浮かびますから、それに対してのヘッジを掛けたくなります。
こういう時に都合がいいように思える商品が、ベア型の投資信託やETF。
特にレバレッジのかかった2倍ベアとか、ダブルベア、ダブルインバース、と名前の付いた商品群があって食指が伸びてしまいがち。
これがどんな商品かというと
日経平均ダブルベアETFと名前(ベアでなくインバースでも、ETFでなく投信でも一緒です)がついていればどれも、日経平均の指数に2倍のレバレッジを掛けて、日経が1下落すると、その反対に2上昇するように設計されたETFという事になります。

これだけ聞くと、買いで持っている現物株100に対して、ダブルベア50を持てば、売りと買いの両建てで損益をロックできそうに思いますよね。
雲行きが怪しいからと言って、NISAで持っている現物株をいちいち売ってしまっては、枠があっという間になくなりますから、売り買い両建てで嵐が過ぎるまで、損益をロックして待つというのは有効な戦略のように見えます。
しかしここには落とし穴があるんです。
実はこれらのレバレッジ商品は
「指数の価格が上下している間に価格が段々減価していき、もしベンチマークの指数が±ゼロでも、レバレッジ商品の価格はマイナスになる」
でおなじみの商品なんですよね。

理由をcopilot君に解説してもらうと
以下になります
🔍 なぜ価格が戻らないのか?主な理由
1. 日々の値動きに対する複利効果
レバレッジETFは「日々の変動率」に対して倍率をかけて運用されます(例:2倍、−2倍)。
例えば、指数が1日+1%、翌日−1%だと、元指数はほぼ元に戻りますが、レバレッジETFは:
1日目:+2% → ×1.02
2日目:−2% → ×0.98
合計:1.02 × 0.98 = 0.9996 → 0.04%減価
このように、上下を繰り返すだけで徐々に減価していきます。

2. ボラティリティ・ドラッグ(Volatility Drag)
上下の変動が激しいほど、複利効果による減価が大きくなります。
特に「レンジ相場」や「乱高下」では、指数が横ばいでもETFは減価します。
3. 指数の戻りとETFの乖離
指数が元の価格に戻っても、ETFは「日々の積み重ね」で乖離しているため、元の価格に戻らない。
これは「逓減(decay)」と呼ばれ、長期保有リスクの一因です

では具体的に、シミュレーションしてみるとこうなります。
copilot君に与えたプロンプト
・購入するのはダブルベア型 日経平均ETF
・ベンチマークの日経平均が40000円で購入
・1日1%の上昇を10日繰り返して10%の上昇、その後11日目に2%の下落。
・これを繰り返しながら52000円へ到達。
・最後に52000円から40000円まで3日間かけて一気に下落
この時の価格は買値の何パーセントまで戻る?
copilot君の計算結果
📈 ステップ1:1セットの指数変動とETF変動
日経平均の1セット(11日間)
上昇:40000 × (1.01)^10 ≈ 40000 × 1.1046 ≈ 44184円
下落:44184 × 0.98 ≈ 43300円
1セットでの変動率:43300 ÷ 40000 ≈ 1.0825 → +8.25%
ダブルベア型ETFの1セットの変動
10日間:毎日 −2% → (0.98)^10 ≈ 0.8171
11日目:+4% → ×1.04
合計:0.8171 × 1.04 ≈ 0.8508 → −14.92%
📊 ステップ2:何セットで52000円に到達?
40000 × (1.0825)^n = 52000
(1.0825)^n = 1.3 → n ≈ log(1.3) / log(1.0825) ≈ 3.2セット

📉 ステップ3:ダブルベア型ETFの価格推移
初期価格:100
3.2セット後:100 × (0.8508)^3.2 ≈ 100 × 0.585 ≈ 58.5
📉 ステップ4:52000 → 40000への下落(−23.08%)
3日間で −23.08% → 毎日 −8.1%(複利)
ダブルベア型ETFは毎日 +16.2% → (1.162)^3 ≈ 1.574
ETF価格:58.5 × 1.574 ≈ 92.0
✅ 結果:買値(100)に対して何%戻ったか?
92.0 ÷ 100 = 92.0%
つまり、もし日経の高値が4万円と思って逆張りしていた場合、現在の52000円が明日急落して4万円まで一気に戻っても、ダブルベアはマイナス8%の損失になるという事です。

ならば、いくらまで下げれば、損失回避できるか?
現在価格:92.0 → 100へ
必要上昇率:100 ÷ 92.0 ≈ 1.087 → +8.7%
🔁 ETFが+8.7%上昇するには、日経平均は何%下落すればよいか?
ETFは「−2倍」で動くため、日経平均が −4.35% 下落すれば、ETFは +8.7% 上昇します。
📉 日経平均が52000円 → 40000円まで下落した時点で −23.08%
さらに −4.35% 下落するには:
40000 × (1 − 0.0435) ≈ 40000 × 0.9565 ≈ 38260円
✅ 結論
日経平均が52000円から「38260円」まで下落すれば、ダブルベア型ETFは買値(100)を超えてプラス圏に入ります。
ということで、指数の買値の40000円ではなく、38260円までプラスアルファの下落があって損益分岐点に到達します。

ただこれは、52000円から一気にナイアガラのシミュレーションだったのですが、中間反騰を繰り返しながら下落する場合、さらに減価が発生するため、損益分岐点はもっと下がると想定できます。
例えば
1日で10%下落した後、翌日5%の反騰を繰り返しながら下落する場合では
途中の計算はもう端折りますが
✅ 結論
日経平均が「52000円 → 約35600円」まで下落すれば、ダブルベア型ETFは買値(100)を回復します。
こんな感じ。

これがブル型ならまだ、長期で指数が右肩上がりになる前提なら、助かるケースは多いと思いますが、ベア型だと調整や暴落の範疇を超えた大暴落が来ないと助からないケースの方が多くなりそうです。
もし捕まっている場合、日経の下落のレンジを予想しておいて、そこが近づいたらETFがプラスになっていなくてもやれやれ売りをするのがいいように思えますね。
ちなみに、上の35600円まで下げるとしたら日経のPERは13.5倍。
少し前なら、日経平均のレンジ下限(大暴落時除く)ですが、これは上限16倍だった時の話です。
19.5倍から13.5倍まで下げるというのは、16倍から10倍まで下げるのと同じ倍率なので、中々ハードルが、いや相当にハードルが高いように思います。
現実的には、よっぽどの下げ材料がなければ、短期では下げてもPER15.5倍の41321円~PER15倍の39988円位ではないでしょうか?
節目の4万円でもありますし、今回の上昇の初期、PER15 ~15.5倍をサポートに上げてきた感がありますからね。

勿論ね、この先長期にわたる弱気相場とかになれば、その間に徐々に切り下げて最終的に、ということはあると思いますよ。
でも忘れないで欲しいのは、そのだらだらの下げの間も、レバレッジ型の商品価格は減価し続けるという事。
つまり長期での上昇や下落を当てれたとしても、レバレッジ商品で儲けることは出来ない可能性が高いんですよね。
では、こういった商品、どうやって使うのがいいのか?
使えるケースは例に挙げれば、先月自公連立解消の報道で金曜の夜に先物が3000円弱下げた時がありましたが、ああいうタイミングで先述のように保険として買って売り買い両建ての状態にして置おいて、利益が出ようが損失が出ようが、数日で決済する。
今回なら、月曜に下げ渋ってその後も大きな下げにはつながりませんでしたから、月曜寄りで買えば損失で終わりますが、初めから掛け捨て保険の意味で買っているので、もうそこは保険料として割り切って決済してしまう。
そんなとこでしょうね。

最後に参考までに以下のETF
16年に組成されていて当時は1万円から始まっていますが、現在200円ですから9年間で1/50に価格が下がっています。
この期間、16年当初日経は2万円ほどでしたから、今の5万円は約2.5倍。
2倍レバレッジのベア投信なので、単純計算で1/5になればいいところを1/50まで下げているということすから、長期で持つリスクがリターンと合わないのがよくわかりますよね。
で、確か楽天はこれより下げると、証券コードだけ変えた同じ商品をまた1万円で売り出すんじゃなかったかな?
野村なんかは、株式統合してしまって価格を上げるんじゃなかったかな?(これやられるともう、高いのか安いのかよくわからなくなる)
そうそう、あとねcopilot君は言ってなかったけど、レバレッジ型の商品って大抵信託報酬高いです。
これもまた、長期での保有がよろしくない一因ですね。



