ファンダメンタルズの中でも重要な指標にEPSがあります。
EPSを知るというのは、株式投資をするうえでは必須ですので、EPSの意味と活用方法を書いていきます。
まずEPSとは、その企業の1株当たりの利益です。
EPSがわかることで、その企業のスペックがわかると言っても過言ではありません。
商品のスペックがわかれば、商品の妥当な価格がわかります。
つまり株でいえば、妥当な株価がわかってきますので、とても重要な指標なんです。

EPSの算出方
まず最初に、EPSはどうやって出すか?
これは簡単です。
決算時に企業から発表される純利益。
これを、企業が発行している株数で割ります(純利益÷発行株数)
仮に三菱商事で試算してみます。
当期純利益:964,034,000,000円(約9600億)
EPS:230円(9600億÷42億)

株主の権利
さて、三菱商事の株を保有していた場合、三菱商事の上げた利益のうちのいくらかは、株主として得る権利があります。
ただし、株式会社は、所持する株数によって共同オーナーとして所有する仕組みです。
つまり、9600億の利益があって、42億株すべてを所有していれば、9600億全て総取りする権利がありますが、たったの100株保有なら?
この計算を容易にするのが、先ほどのEPSです。
1株当たりの利益が230円だったわけですから、100株保有なら、23,000円の権利がある。
というのがわかるのです。

健全な配当
権利は1株当たり230円というのがわかりましたが、企業としては利益巣のすべてを株主に還元してしまうのは問題があります。
企業は将来に向けて研究開発を行って新商品を開発したり、新しく工場を作り商品の増産体制を作ったり、店舗を増やして販売力を上げて、来期以降の利益を増やさなくてはなりません。
ですから、一株当たりの利益が230円あっても、その全てを配当金として株主に渡してしまうというのは企業の成長が止まるということになるんです。
そこで企業はこの230円のうち、いくらかは企業の成長に使い、残りは配当として株主に配ることになるのですが、その割合を表す指標を配当性向と言います。
こちらも三菱商事で見てみます。
三菱商事の今期予想配当金は1株当たり100円です。
予想配当金:100円
EPS:230円
配当性向:43%(100円÷230円)
となりますので、利益のうち57%は企業の成長に充てて、43%は配当に回しているというのがわかります。
尚、この配当性向が何パーセントが健全かというのは業種によりますが、概ね50%以内が妥当で、それを超えると払い過ぎ。
払い過ぎの場合は来期以降減配される懸念があると思っておくのがいいでしょう。
三菱商事の配当性向は43%ですから、その意味では及第点ということがわかりますね。
ただし、ちょっと高性能なパソコンとプログラマーがいれば事足りるソフトウェア開発とか、仲介コンサルタントがいればよい人材派遣業のような業種は設備投資が少なくても問題ないでしょうし、日本国中に通信基地局を配備しなくてはならない通信業は設備投資がかさむでしょうから、妥当な配当性向というのはあくまでも目安です。
有名なのはたばこ業界で、日本のJTに限らず、アメリカのアルトリアやフィリップモリス、イギリスのブリティッシュアメリカンタバコなど、軒並み高い配当と配当性向(70%以上も当たり前)です。
これは、タバコの葉が他の農作物のような手入れがいらないことや、たばこの販売は各国、特定の事業者に限定している寡占事業であり、価格競争が全く起こらないという特殊な業態が関係しているようです。

四季報の見方
最初にも書きましたが、EPSは自分で計算しなくても、色々なところに掲載されています。
ここでは、SBI証券のサイトで確認できるオンライン版の四季報とそこに書いてあるEPS、それを利用した将来の予測の仕方を書いてみます。
↓がオンライン版の四季報です。
24年度の純利益が9600億円、一株益(EPS)230.1円となっています。
四季報の予想では、25年度の予測は、純利益が1兆円、一株益(EPS)は271.9円に伸びるとしています。
もし四季報通りの増益なら、配当性向を43%に維持するとすると、配当は四季報記載の100~105円より増額されて、120円程度になる計算が出来ます。
一方、26年度は減益予想ですが、三菱商事は累進配当を宣言しているので、業績に悪影響がない限り減配はしません。
そして、今の株価2850円程度で3.5%の配当利回りで株を購入しても、翌年120円の増配があるのなら配当利回りは4.2%に上がります。
逆に、配当利回り3.5%程度まで株価が買い進められるのなら、株価は3400円程度にまで上がる計算が出来ます。
(配当120円÷株価3400円=0.35)
もちろん、今後起こるである円高によって、為替差損が想定以上にでて利益を押し下げるならこの四季報の予測も崩れますし、予測が崩れるとそれ以降の計算もすべて変わりますので、経済情勢には気を払う必要がありますので完全ではありません。
でも、EPSがわかるだけでこれだけのことがわかってくるんですね。

まとめ
いかがでしょうか?
EPSがわかると、その企業の株を買うことで、自身が得られる利益が幾らになるのか?また、企業が現在出している配当が妥当か?企業の成長余力があるのかなど、様々なことがわかってきます。
株価が幾らをつけているから安いとか高いというのは、株価だけを見てもわかりません。
仮に以下の2社があった場合、どちらが割安でしょう?
企業A社
株価:100円
EPS:1円
企業B社
株価:1000円
EPS:100円
10万円の資金があった場合
A社の株なら1株100円ですから、1000株買えます。
株価が安くていっぱい買えるように思えますが、これで得られる利益はEPS1円×1000株で1,000円です。
配当性向50%なら、貰える配当は500円です。
B社の株なら1株1,000円なので、100株しか買えません。
しかし、得られる利益はEPS100円×100株で10,000円です。
配当性向50%なら、貰える配当は5,000円です。
同じ10万の支出でも、A社が支出した分を配当金で回収するには200年かかります。
(年間配当500円×200年=10万円)
B社なら、20年で回収できます。
(年間配当5,000円×20年=10万円)
こう考えると、割安なのは、株価の高いB社ですよね?
こういった計算をより分かりやすくするのに別の指標であり、最もポピュラーな指標、PERがあります。
次回はこのPERについて解説しようと思います。
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