ファンダメンタルズ分析の上でポピュラーな、PERについて算出方法と応用的な使い方を書きたいと思います。
前回のブログ、EPSを活用しようを見たあ後で見ていただけると理解が深まると思います。
EPSを活用しよう | グデーリアンの投資ブログ (ameblo.jp)
まず、前回のブログの最後で比較した、二つの企業のどちらが割安か?についておさらいです↓
仮に以下の2社があった場合、どちらが割安でしょう?
企業A社
株価:100円
EPS:1円
企業B社
株価:1000円
EPS:100円
10万円の資金があった場合
A社の株なら1株100円ですから、1000株買えます。
株価が安くていっぱい買えるように思えますが、これで得られる利益はEPS1円×1000株で1,000円です。
配当性向50%なら、貰える配当は500円です。
B社の株なら1株1,000円なので、100株しか買えません。
しかし、得られる利益はEPS100円×100株で10,000円です。
配当性向50%なら、貰える配当は5,000円です。
同じ10万の支出でも、A社が支出した分を配当金で回収するには200年かかります。
(年間配当500円×200年=10万円)
B社なら、20年で回収できます。
(年間配当5,000円×20年=10万円)
こう考えると、割安なのは、株価の高いB社ですよね?
この例では「いくらの配当金のある企業の株を、いくらで買うと投資額を回収するのに何年かかるか」を計算しました。
これに似た計算で、配当ではなく、企業の上げた純利益全体(配当に回す分+設備投資に回す分)を見て「いくらの純利益のある企業の株を、いくらで買うと投資額を回収するのに何年かかるか」を表すのがPERと覚えてください。
上記のような意味を含むPERは日本語では「株価収益率」と呼びます。

PERの算出方法
例に出しているB社は
EPS(一株益)100円
株価1000円
です。
利益を何年で回収できるかを計算しようとすると
EPS(一株益)100円×n=株価1000円
のような計算式が出来ます。
1000円出資した企業が、1年で100円の利益を出してくれるのなら、n年後には出資した1000円をまるっと稼いでくれる。
という意味ですね。
計算すると、
100×n=1000
n=10
となりますので、B社は10年で出資した分を稼いでくれる企業となります。
この10こそがPERで、PER10倍という単位で呼ばれます。

実際の企業で計算
では、前回から例に出している実際の企業、三菱商事を例に挙げて、PERを算出してみます。
株価は9/13日の終値は2834.5円ですが、切りよく2850円で計算することとします。
株価:2,850円
EPS:271円(25年度予想値)
EPS271×n(PER)=株価2850円
n(PER)=10.4倍
となり、三菱商事のPER10.4倍ということがわかりました。
PERの平均は13倍~16倍程度とされていますから、三菱商事はこれに照らし合わせればやや割安ということが出来ます。
ただし、EPSの時にも解説したように、業種によって平均値のレンジは違います。
例えばこれから急成長が望める新興事業なら、PERは高いところまで買い進められますし、成熟して伸びしろの少ない事業ならPERは低くなる傾向があります。

バリューとグロースのPER見比べ
■三菱商事(バリュー)のPER10.42倍
総合商社は成熟した産業で、既に世界中で事業を展開済みなことから新たな設備投資は限定的。
設備投資に回す必要がない分配当を多く出しています。
しかしここから短期間で業績が何十倍にも伸びる産業ではない為、株価は極端に高く買い進められることもないです。
PERの計算式でいう所の分子が株価なわけですから、ここが大きくならないとすると、PERは高くなりにくいわけです。
このような事情でPER的に低く据え置かれる企業のことをバリュー(割安)株と言います。
■レーザーテック(グロース)のPER27.78倍
半導体などのテクノロジー系の企業はこの先の成長のバッファが大きく、その分配当を少なくして設備投資に多くの資金を割いていることが多いです。
ただ、伸びしろが大きく、企業の成長余力があれば株価は買い進められます。
株価はPERの計算式の分子ですから、ここが大きくなると計算結果のPERは大きな数字が出ます。
このような事情でPERが高くなる銘柄をグロース(成長)株と言います。
バリューとグロースのどちらが良いかについては一長一短があります。
バリューは安定した業績と安定した配当が見込まれる反面、企業自体はすでに成熟してしまっているので、この先の大きな伸びはありません。
インカムゲイン(配当金)を狙った長期投資家がコアに据えるには合っていますが、反面キャピタルゲイン(売却益)を出してトレードをしたい投資家にとっては魅力は薄いでしょう。
グロースは企業業績の急成長も見込める半面、安定した事業展開はこれからの企業です。
そのため、配当に回す余力は少なく、事業失敗によって株価を大きく下げる可能性もバリューよりも高くなります。
インカムゲイン(配当金)を狙った長期投資家にとっては魅力が薄く、反面キャピタルゲイン(売却益)を出してトレードをしたい投資家にとっては魅力的に映るでしょう。

PERを使った応用
今まで個別企業のPERだけを見てきました。
しかし、インデックス指数についてもPERを出すことも可能です。
例えば日経平均は日本の主力225銘柄を合わせた指数です。
この225銘柄のEPSを調べることが出来れば、その日の日経平均株価を日経平均EPSで割ることで、日経平均のPERを出すことが出来ます。
日経平均株価÷日経平均EPS=日経平均PER
日経平均のEPSはネットで調べることが出来ます。
例えば↓では当日の夜に、日経平均のEPSが公開されます。
日経平均 PER PBR EPS BPS 利回り |【日経平均ファンダメンタル分析】 (nikkei225fut.jp)
このような感じで、EPS加重平均をチェックすると、当日(9/13)の日経平均のEPSは2,458円だったことがわかります。
9月13日の日経平均の終値は36,581円ですから、そこから計算すると当日終値ベースのPERは
36581÷2458=14.9倍
ということがわかります。
先述のように日本株のPERの平均は13倍~16倍ということからすると、レンジの範囲内に収まっているのがわかるのですが、これだけではだから何?で終わってしまいますよね。
ここからちょっとしたテクニックを解説します。

暴落の目途を測る
実は、通常PER13~16倍程度をレンジで行き来している日本株ですが、暴落時にはPER11倍か瞬間的に10.5倍程度までオーバーシュートするのが、経験則上わかっています。
例えばコロナショック時、ショック前の日経EPSは1500円程度でした。
コロナショック時の日経安値は16500円程度ですから
株価16500÷EPS1500=PER11
リーマンショック前夜の日経EPSは650円程度。
リーマンショック後の日経安値は7000円ですから
株価7000円÷EPS650=PER10.7
このように、暴落時の安値の株価は全然違いますが指数的には同じ水準で下げ止まっています。
こういったファンダメンタルを活用していくと、1990年台のバブルと同じ日経平均38,000円を付けたとしても、当時と同じ水準までバブル崩壊することは無いのがわかってきます。
なぜなら、1990年当時、日経平均のEPSは600円程度。
現在はの日経EPSは2450円なのですから、企業の稼ぐ力は4倍なのです。
もしリーマンショック級の暴落が起きたとして、当時と同じPER11倍まで株価が暴落するとしたら
EPS2450×PER11=26,950円
となります。
暴落と言えば暴落ですが、バブル崩壊やリーマンショックの安値のような水準、1万円を切るようなところまで下がるというのは考えにくいわけです。
ただしこれも、今後の日本経済の推移によって、日本企業の利益が縮小しEPSが下がれば、PER11倍の水準の株価も下がりますので、ここは定期的に注意して見ておく必要がありますので、ご留意。
また、基準となるEPSは暴落前の水準のEPSを採用するというのも留意です。
暴落後のEPSはマイナスになることもあり、計算不可能になります。

買い時を探る
個別銘柄のPERの水準だけで買い時を探るというのは難しいですが、指数の上限下限から、買いの水準を下がるというのはある程度可能かと思います。
例えば上記の日経PERが11倍の水準になるのであれば、そこは買い場になることが想像できます。
恐らくはそのタイミングは、チャートもニュースも真っ赤な数字が並ぶことになるので、見ると怖くて買えないと思いますから、
そういうのを見ずに、この水準なら、とロジカルに買い注文を淡々と入れる信念を身に着けておくのが重要です。
ただし、下落時に必ずPER11倍まで下げるとは限りません。
むしろ11倍まで下げるのはかなり稀です。
それでも、この水準まで下がるのに、今の株価から後何パーセントあるか?
その水準に達した時の自身のポートフォリオの評価額がどの程度になるか?
その水準に達した時の買付余力がどの程度あるか?
等を事前に知っておくだけで、暴落時の不安の多くを解消できるでしょう。
またPER11倍まで下げない場合でも、その手前の金額で底打ちの水準を想定しておくことも可能です。
例えば先8月5日の4000円の暴落は、31500円で止まりましたが、そこは日経平均PER13倍のラインでしたから「平均は13倍~16倍程度」の丁度下限で止まったということですね。
下落時の買い時を探るには、どこかで一発勝負をするのではなく
1、○○日移動平均線のあるラインで止まるかも?
そこを抜けたら
2、PER〇倍のラインで止まるかも?
そこを抜けたら
3、きりの良い日経株価30000円丁度で止まるかも?
どれもサポートされずに阿鼻叫喚の大暴落が起こるなら、
4、日経PER11倍では覚悟を決めて全力買い!
のように買いの水準を分けておいて、そこに到達したら一部購入、次の水準まで下がったら、さらに追加購入。
のように、こちらも株価やニュースやネットの掲示板などは水にロジカルに購入することが重要です。
周りを見ると、きっと怖くて買えないので。

まとめ
前回のEPSの算出から、今回はPERの使い方まで進めてみましたが、いかがでしょうか?
これらファンダメンタル指標の意味と使い方がわかると、今の株の値付けが高いのか安いのか、買ってもいいのか悪いのかが少しずつ分かってくると思います。
買い時が難しくてわからないと困っている方は、まずはこの観点で株を見てみると、不安が無くなり長く買い持ちできる長期投資が可能になり、「稲妻の輝く瞬間」に相場に居合わせることができれば、そこで初めて利益を享受できるようになると思います。
