今月は日銀が政策金利を0.1⇒0.25へ、0.15上げただけで、為替、株価とも大混乱を引き起こしました。
実質的な数値はわずか+0.15%の金利上昇にもかかわらず、これだけ混乱を引き起こすのは、日銀とFRBの市場への根回しの差です。

FRBのパウエル議長は、過去何カ月にもわたり、市場へのメッセージを送り続けて織り込ませ、今回初めて「利下げの時期が来た」という趣旨の発言をし、サプライズによって市場が乱高下するのを極力抑えています。
これに対して日銀の植田総裁は「時期を見定める」という発言をし続けていたにもかかわらず、突然の利上げをしました。
植田総裁は「適切な時期と判断した」と言っています。
しかしそれは植田総裁の頭の中での整理であって、市場参加者からすれば「時期を見定めている途中」という所までしか説明されておらず、それ以降の植田総裁の頭の中のシナリオは織り込んでいない中での突然の利上げとしか映らないわけです。
それはまさに青天の霹靂ですから、市場が混乱するのは無理もありません。
副総裁の内田さんが「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と火消しに回ることで一旦の落ち着きは見せていますが、逆に言えばもう一度ネガティブサプライズと捉えられるような利上げはし難くなったということだと思います。
次にもう一度、利上げが原因で株式相場に暴落を起こせば、日銀の無能の表れということになってしまいますからね。
さて、今週のジャクソンホール会議で、パウエル議長の発言で、9月利下げは確定的になりました。
市場参加者の政策金利の予測を表す、最新のfed watch toolを確認してみると以下のようになっています。
少し前は9月に2段階の引き下げの予測がもう少し高かったのですが、現在は9月に0.25bpの下げが優勢です。
その代わり、11月に0.5bpの下げの確率が高くなっており、12月までの年内に4段階の利下げとなっていますから、年内の下げ幅の予想は変わっていません。

ですから、パウエル議長の9月利下げ開始発言は、市場ではすでに織り込み済みだったということです。
しかしそれでも、先週金曜日1日で約2円近くの円高が進み、材料出尽くしで逆に円安という流れは起きていないので、日米の利幅の縮小というファンダメンタルに沿った素直な動きです。
この素直な動きが続くのであれば、実際に米国で利下げ開始に対しては円高で反応するはずですから、そこに日銀の追加利上げをぶつけてしまえば、また市場をクラッシュさせてしまうかもしれません。
そう考えると、日銀は安易な利上げをし難くなったように思えます。
特に、米国の利下げがソフトランディングが可能な適切な時期なのかどうかは今後わかることです。
もしソフトランディングの失敗と、深刻な景気悪化が鮮明になれば、米国の企業業績悪化と株安、それにに連動した日本の企業業績悪化と株安。
その対策として米国の金融緩和として急速な利下げ対応とそれに伴う円高が重なってくるので、こういうシナリオにならないか?
それを見定めるまで、逆行する金利政策はとれなくなる気がします。
まあ、そういった市場の思惑を悪い意味で裏切るので、この間のクラッシュを引き起こしているのが日銀なので、今後は同じ轍を踏まないとは限らないですけどね。
