「Oh!FM」HGPLAY用のFM音源音色を「DX21」に移植♪ | NOZ's Stylish Sound♪

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1980年代の音楽に輝きを放っていたシンセサイザーYAMAHA「 DX7」

繊細で綺麗な音を放つスタイリッシュなシンセサウンド「FM音源」を使って曲作りをしております♪

私が10代の頃に使っていた、富士通パソコン「FM77AV」内蔵FM音源の音色データを、昨年12月に入手したYAMAHA FMシンセサイザー「DX21」に移植することが出来ました。

富士通 FM77AV YANAHA DX21

私のFM音源の出発点が、この「FM77AV」でした。

マイコンBASICマガジンの古代祐三さんや、ポプコムの強矢邦生さんの音楽プログラムを打ち込んで、FM音源を勉強しました。

今回移植した音色データは、パソコン雑誌「Oh!FM」1988年2月号に掲載されていた「HGPLAY用拡張音色77音」という、OPN系FM音源「YM2203」を搭載した富士通FM7シリーズ用の特製音色プログラムです。

Oh!FM 1988年2月号

音色は全てマシン語で作られておりましたので、音色のパラメーターを表示させる為には、同雑誌で掲載されていた「HGFMエディター」のプログラムを打ち込んだ後に起動させて、音色番号を指定することで、その音色を編集して保存することが出来ます。

Oh!FM HGFMエディター

画像は、「FM77AV」拡張HGPLAY用FM音源の1番目の音色「TRUMPET(トランペット)」です。

この「HGFMエディター」を使っていた1988年当時は、各オペレーターのエンベロープを、モニターディスプレイに表示してくれることが、画期的なことでした。

今でもそうなんですが、YAMAHAのFMシンセサイザーの場合、あの小さい液晶ディスプレイを見ながら、頭の中で各オペレーターのエンベロープを思い浮かべて、データを入力することは、とても大変です。

YAMAHA DX7 アウトプットレベル設定

それが、「HGFMエディター」の場合は、FM音源の全パラメーターを表示させて、音色の読み込みから、パラメーターに入力、音色の保存も出来る訳ですから、とても便利なものでした。

唯一の欠点は、MIDI対応ではなかった事です。

素晴らしいエディターだったのですが、富士通FM7シリーズ専用でしたので、作った音色を、他のFM音源シンセサイザーに転送して使う事が出来ませんでした。

その結果、楽器用FM音源との互換性が無い為、FM7ユーザーの中でも少数派だった、サウンドプログラマーの間でしか活用されませんでした。

私が18才の時に、「HGPLAY用拡張音色77音」+自作音色でプログラミングした、SEGA「アフターバーナー2」の音源がありますので、YouTube動画で紹介します。



http://youtu.be/l18aUyqJP2I

FM音源が3音しか使えないので、パートの配分には苦労してますが、HGPLAYに拡張したことで、フルエディットした音色を、曲中で切り替えながら演奏させております。

特に、ドラムパートは、1chでバスドラム、スネア、タムを、プログラムチェンジで頻繁に切り替えながら鳴らしております。

その秘密は、フルエディットした音色データ77音を、常時メモリーに展開させていることで、音色データを自由に引き出したり、書き換えが出来るようになっていることです。

従来は、音色を選択する時は、読み込み専用のROMから引き出すことで、ROMのままの音色を使ったり、ROMから一時的にメモリーにコピーして、間接エディットして使うことで、自作の音色として使うことになります。

ROMの音色データは、音色を読み込むだけなので、演奏中に音色を頻繁に切り替えることが出来ますが、ありふれた音色になりがちで、曲の個性を出すのが難しくなります。

とは言え、間接エディットでは、音色データをメモリーにコピーしてからパラメーターを書き換えるのに、少し時間が掛かる為、頻繁に音色を切り替える使い方には向いてません。

まあ、SOUND文やYコマンドを使って、演奏中に直接レジスタを指定して書き換えることで、鳴り方を変える手法もあるのですが、レジスタマップを理解していないと使いこなせない玄人向けの技です(^^;

楽器のFMシンセサイザーは、音色を常時メモリーに展開させておくこと(ウェーブテーブル化)は当たり前の事なのですが、パソコンのFMシンセサイザーの場合は、そうも行かなく、ROMの音色を間接エディットする方法なので、音色の自由度が悪かったです。

ところが「拡張HGPLAY」の凄い所は、直接エディットした音色を、常にメモリーに待機させておき、いつでも切り替えて使えるレスポンスの良さが、ROMのプリセット音色では再現出来ない、独自のサウンドを作ることが出来ます。

もどかしかった自作音色の切り替え問題が改善されて、音色の自由度が良くなり、パソコンでありながら、やっと楽器らしい使い方が可能となりました。

そんな、素晴らしい「拡張HGPLAY」を使いこなす為に用意された、「Oh!FM」特製FM音源77音色。

パソコンが故障して使えなくなってしまったら、これらのFM音源の音色データも、全て消滅することになってしまいます。

そうなる前に、何とか別のFM音源に音色を移植しなくてはなりません。

これは、FMシンセサイザープログラマーの私にとって、使命を感じます(`・ω・´)ゞ


今回、YAMAHA FMシンセサイザー「DX21」を入手したのを期に、昔のまま埋もれていた「FM77AV」のHGPLAY用FM音源音色データを「DX21」に移植することにしました。

まず「FM77AV」を起動させて、OS内蔵のMML(ミュージック・マクロ・ランゲージ)を「HGPLAY(ハイグレードPLAY)」に拡張してから、専用拡張FM音源データ77音をロードします。

次に「HGFMエディター」を起動させ、音色番号を指定して、パラメーターを表示させます。

そのパラメーターを見ながら、「DX21」ボイスデータ表の下段部分に作った「YM2203/YM2151 VOICE DATA LIST」に入力します。

YAMAHA DX21 ボイスデータリスト(改)

すると、「DX21」用ボイスデータに自動変換したものが、「DX21 VOICE DATA LIST」に形成されます。

その変換された「DX21」ボイスデータ表を見ながら、実機のFMシンセサイザー「DX21」に入力します。

しかし、LFO(ローフリケンシーオシレーター)に関しては「FM77AV」と「DX21」とでは互換性が無いので、実際に「FM77AV」の音を聴きながら、「DX21」のLFOを設定していきます。

ここだけは、自分の耳が頼りです。

実は「FM77AV」には有って「DX21」には無いLFO波形もありますので、似ているLFO波形を使って、同じ感じに鳴るように、アレンジします。

ちなみに、ピッチベンドもどきの上昇・下降波形であれば、「DX21」の「ピッチエンベロープジェネレーター」でも代用可能なのですが、「ピッチエンベロープジェネレーター」が搭載されていない「TX81Z」と「EOS B200」のことを考慮して、「DX21」内蔵のハードウェアLFOで、何とか調整します。

それにしても、ベースとギターの音色以外の、ほとんどの音色にLFOが使われておりましたので、1音1音の鳴り方を確認しながら調整していきますと、とても時間の掛かる作業となりました。

でも、こうして他人の作った音色データを分析しながら、実際に鳴り方を確認出来ますので、とても勉強になります。

この音色データは、貴重な宝物ですよ♪

77個もの音色を入力すれば、最初は説明書を読みながら進めていた「DX21」の操作にも慣れてきまして、おかげで、コツを掴むと、とても使い易くなりました。

今までは、4オペレーターのFM音源で音色を作る時は、YAMAHA FMシンセサイザー「TX81Z」を使っておりました。

YAMAHA TX81Zその「TX81Z」と比較しますと、変更したいパラメーターを探すのが、「DX21」のほうがワンタッチなので、作業し易いです。

あと、「TX81Z」はラックマウントタイプなので、ディスプレイを横から覗き込む感じで操作するので、首が疲れますが、「DX21」は上から見下ろす感じなので、自然な姿勢で作業が出来ます。

なので、4オペレーターのFM音源で音色を作る時は、ケースバイケースで「TX81Z」と「DX21」を使い分けていこうと思います。


このように、1つの音色を移植するのに、単純な数値変換だけではなく、「FM77AV」と「DX21」の音を聞き比べながら、手作業でデータ入力をしていくこととなりました。

「FM77AV」から「DX21」へのデータの変換は、パソコンの表計算ソフトが担当しているので、これだけでも、かなりの時間短縮と精神負担が軽減されております。

しかし、77音色もあると、結構な作業になり、とても疲れました。

シンセサイザープログラマーの松武秀樹さんもおっしゃられておりますが、「テクノは忍耐だ」というお言葉にもあるように、ひたすら同じ作業の繰り返しにもめげない、心の強さも必要なんですね。

これが、シンセサイザープログラマーの「職人魂」なのだと思います。


移植した音色は、とりあえず「DX21」本体に保存しますが、本体には32音色までしか保存することが出来ません。

そこで、外部記憶装置に保存することとなります。

私は、YAMAHAシーケンサー「QY700」を使って、FM音源の音色を保存しております。

YAMAHA QY700


「DX21」と「QY700」とをMIDIケーブルで接続して、「QY700」のレコーディングをスタートさせてから、「DX21」からは1音だけ、バルクデータ送信します。

送信は一瞬で終わるので、すかさず「QY700」のレコーディングをストップさせます。

リストウィンドで確認してみると、「DX21」から送られてきたFM音源のデータが、2拍目の先頭に記録されております。

YAMAHA QY700 システムエクスクルーシムメッセージ

画像は、例として、「FM77AV」拡張HGPLAY用FM音源の77番目の音色「WING GONG」を、「DX21」に変換入力してから、「QY700」に取り込んだ状態のものです。

システムエクスクルーシブメッセージは「F0.43.00.03.00.5D.0C.1F.・・・」と、先頭の部分しか表示されておりませんけど、実際には・・・

F0.43.00.03.00.5D.0C.1F.04.02.0F.00.02.00.00.00.
41.10.03.06.1F.04.02.0F.00.02.00.00.00.51.13.03.
0D.08.00.02.00.00.01.00.00.00.43.2D.06.0E.03.06.
03.00.00.02.00.01.00.63.08.00.02.00.0C.00.07.00.
01.02.06.00.0C.00.04.00.00.28.01.01.00.32.00.00.
00.32.00.57.49.4E.44.20.47.4F.4E.47.20.63.63.63.
32.32.32.19.F7

が、記録されております。

この16進数の固まりが、FM音源の1音色ぶんのデータなのです。

ちなみに、システムエクスクルーシブメッセージを直接入力して送信出来るシーケンサーや、パソコンのDAWソフトであれば、この16進数をそっくり打ち込んで、「DX21」「DX27」「DX100」のOPP系FM音源や、「TX81Z」「V2」「EOS YS100」「EOS YS200」「EOS B200」「TQ5」のOPZ系FM音源、そして「V50」のOPZⅡ系FM音源に転送すれば、使うことが可能です。

このように、私の使っているFMシンセサイザーの音色保存方法は、「QY700」の1トラックの1小節だけを使って、作ったFM音源の音色データを「システムエクスクルーシブメッセージ」として、リアルタイムレコーディングするものです。

私の使っている「QY700」のように、MDR(MIDIデータレコーダー)機能の無いシーケンサーですと、このような方法で、外部機器からのバルクデータをトラックに埋め込んで、ソングデータとして保存することが出来ます。

「QY700」には、3.5インチフロッピーディスクドライブが搭載されておりますので、「DX21」の音色データを、3.5インチフロッピーディスクに保存します。

これを、SMF(スタンダードMIDIファイル)フォーマット0形式で保存します。

音色データは1音ずつになっておりますので、必要な音色だけをロードして使うことが出来ます。

更に、SMFフォーマット0形式にしておけば、「QY700」以外でもSMF形式のデータが扱えるシーケンサーや、パソコンのDAWソフトからでも送信が可能です。


無事に、「Oh!FM」の「HGPLAY専用拡張FM音源77音色」を「DX21」に移植出来て、まずは、ほっとしてます(^。^)

ずっとそばに「FM77AV」がありながらも、MIDIで統合された私の音楽制作機材に、組み込む事が出来ませんでしたので、「FM77AV」は、いつも一人ぼっちでした。

しかし、今回作ったフロッピーディスクに、「HGPLAY専用拡張FM音源77音色」が記録されておりますので、このフロッピーディスクが「FM77AV」の分身となります。

HGFMDATAディスク

これからは、MIDIの環境で「FM77AV」のサウンドを活用する事が出来ますね(o^-')b


こうして今でもFM音源が使い続けていけるのも、MIDIによる統一規格があったからこそだと思います。

それでも、FM音源の音色作りに関しては、独特なものがありますので、手軽に使える代物ではありませんが、長く使い続けていく為には、その時代に合った使い方に変えていく探究心も必要です。

そして、時代が変わっていきつつも、いつまでも「FM音源の職人」でありたいと思います。



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